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党員用討論欄

日本共産党中央委員会への意見書…3

2013/6/8 鵜崎義永

 ところで、八回大会九中総、十回大会六中総、「手引き」などによって、党中央がくりかえし、党の労働組合運動へのとりくみの強化を強調してきたにもかかわらず、党の立ちおくれが依然解消される方向にむかっていないことについて、私が重要な根拠の一つとして考えることを次にのべ、さらに私の見解全体を明らかにしていきたいと思います。

 私が重要な根拠の一つとして考えることは、現在の地区機関常任の活動の実態であります。いま、全党の地区機関の常任の多くは、その実際指導にあたって、支部に対する労働組合運動についての具体的な指導をほとんどやっていないか、あまりやっていないであろうということです。もちろん、労働組合運動の指導ばかりでなく、大衆運動全体についても支部が直面する問題に具体的指導や援助をほとんどやっていないであろうということです。
 私個人について申し上げますと、六十年代に約十年ほど地区機関の常任としての活動をしましたが、その間、支部に対して労働組合運動をはじめ大衆運動の具体的な指導をあまりやりませんでしたし、ほとんどやらなくてもすぎていくという状態でした。私ばかりではなく、私の所属する愛知県党全体についても、多くの地区常任が支部にたいする実際指導にあたって労働組合運動や大衆運動の具体的指導をあまりやっていないか、ほとんどやっていないという現状です。どれほどやっていないかといえば、個々の常任によってさまざまの相違があっていちがいにいえませんが、支部の方からみると、経営支部をはじめ、地区に所属する大半の支部は、拡大や選挙などの具体的指導や点検は毎日のようにうけているが、その支部の直面している大衆闘争についての具体的指導や援助は、この数年ほとんど受けたことがないのです。
 愛知県で十一回大会以前に、「党勢拡大運動などにおいての行政的な官僚的な指導の欠陥が一時期あらわれた」(十一回大会中央委員会報告)と指摘されるような拡大の一面的追及が行われその時点で、地区機関常任の指導に弱点や欠陥があらわれただけではありません。この指導の欠陥を克服する過程で一時期機関の大衆運動への指導は大いに強められましたが、十一回大会で「逆の清算主義的傾向におちいった」と指摘され、中央幹部会員である県委員長をつうじて中央の直接指導が強められるなかで、愛知県の地区機関常任は再び十一回大会前と同様、支部の直面する労働組合運動や大衆運動についての具体的指導をあまりやらないか、ほとんどやらなくなっています。このように申し上げると「そのようなことは二本足の活動を強調する党中央の方針に反するものであって、万一事実であれば直ちにあらためねばならない」といわれるでありましょう。しかしこの問題は、決して愛知県委員会だけの特殊な問題ではないのです。私は一地方に居住する一党員ですから、全国都道府県における各地区・機関の活動の実態についてつぶさに知ることはできませんが、こうした地区機関常任の活動の欠陥は愛知県だけではなくかなり多くの都道府県に共通したことがらであると、確信を持って申し上げます。
 その確信の根拠は次第に明らかにしたいと思いますが、まず第一点として、一地方党員でも長い年月の間に、何らかの機会をつうじて他の都道府県の地区機関常任の具体的活動について知ることもあり、その活動方法、指導方法が愛知県と共通する事例をいくつかみてきたことであります。たとえば十一回大会十中総において、岐阜県委員長は、地区機関は「党建設の場合は徹底して支部まで方針を持たせてどうなったか、たえず点検していくわけ」だが、「こと経営支部の大衆闘争となるとまず最初にその支部が独自にたたかう方針すら明確に指導としてあたえていない」(赤旗四月二〇日号)とのべていますが、このことは岐阜県でも愛知県と根底において同様のことがおこっていることを示しています。こうした事例はしかし、私の知ることをいくつかあげるよりも中央の方がはるかに多くをつかんでいることでしょう。
 すると「そのような事例も多くあるが、中央の方針どおり二本足の指導を貫徹している実践も多く生まれている。問題はあれこれの県や地区で中央の方針を貫徹していないことや、正しい活動が定着していないことにある」といわれるでしょう。どのようなことがらについても、それに反する例証を数多くあげられることは、この世の常であります。したがって問題の核心は、ことがらが普遍的な傾向であるかどうかということであり、又、歴史的に解決される方向にあるのか、逆に矛盾が激化する方向にあるのかということにあります。私が申し上げたいことは、地区機関常任の多くが、その実際活動にあたって、支部にたいする大衆運動や労働組合運動の具体的指導をほとんどやっていないか、あまりやっていず、この欠陥は長期にわたっており、いまや定着化しつつあるということです。こう申し上げると「党中央で地区機関の方針や活動を点検してもそのような傾向が普遍的なものとみられないし、また報告もあがっていない」といわれるでしょう。地区機関の方針を点検したり、県機関の報告をみるかぎりでは、そのとおりであると思います。しかし私の申しあげているのは、地区機関の方針ではなく、地区機関常任の実際活動のなかみをいっているのであり、その個別指導や具体的指導のなかみをいっているのです。全国の地区機関がすべて中央の指示どおり二本足の方針を立てていることは、私も信じて疑いませんし、その方針のなかで党中央の強調どおり忠実に二本足を堅持することを強調していると思います。地区常任委員会の討議においても、「月間」や選挙の時期をのぞいてたいていの場合、大衆闘争も議題に上っています。それにもかかわらず、実際にあたって多くの地区機関常任の支部指導の具体的内容をみると、支部が直面している大衆闘争に対する具体的指導が欠けており、このことが長期にわたっているということなのです。
 私の申し上げることが事実であるのかどうかを明確にするために、私は党中央において、地区機関の常任の実際の活動がどうなっているのか調査されることを提案いたします。そのさい、たとえば愛知県委員長から、「愛知県の地区機関常任の活動はこれこれだという意見書がきているがどうなのか」などと事情を聞く調査はまったく役に立ちません。そうした調査で実態が明らかになるとすれば、私がこのような意見書をかく必要は毛頭なかったでしょう。方針では二本足の方針を堅持しているのに、実践的には一本足の指導に流れており、しかもそのことが長期間続いているというこの歪みは、機関の正規のルートによる報告や調査にはなかなか反映しにくいものです。ましてこの歪みが、いくつかの都府県にあらわれているかどうかでなく、全国に普遍的にあらわれているものであるかどうかをつかむことは一そう困難となるでしょう。
 私の提案する調査の方法は、地区機関常任と、その指導を受ける経営の支部長から一つ一つ事実を聞くアンケート方式のものであります。アンケートによる世論調査は、調査者の操作によっては相当ゆがんだ結論を導き出すこともできるという弱点をもっていますが、その弱点を考慮にいれるならば、かなり大衆の意見や実情を反映できるという、民主主義的側面を持っています。事態を正しく反映させるために、このばあいのアンケートでは、「活動は二本足になっているかどうか」等の抽象的な意見をたずねるよりも、ただ事実だけをそのまま調査する質問内容を重視する必要があります。
 たとえば、それぞれの地区機関常任個人が、担当する支部の直面する大衆闘争について三〇分以上の時間をかけて指導したり相談にのったりすることは何回ぐらいあるか。この一週間には何度あったか。この一か月では何回か。この一年にはどのぐらいか。この五年ではどうか。これらの回数は、それぞれ担当する支部いくつのうち何支部か。またこれらの数のうち、労働組合運動については、それぞれ何支部何回か。担当する経営支部の労働組合がいまなにを問題にして、どういうとりくみを強めているのか知っているか。この一週間のうち点検した経営支部のなかで職場や組合の動きについて、いろいろたずねた支部は何支部あるか。この一か月ではどうか。担当する経営支部のうち三つの主要経営の賃金体系を知っているか。担当するブロック、または地域の経営の組合委員長で何人に面識があるか。組合事務所へ行って組合の幹部と懇談したことが、本年になって何回あるか。今年の春闘でブロック、地域内の工場、経営の労働者の具体的な要求に対する地区独自のビラを何回まいたか。ブロック、地域内でこの三年間、いくつの労働組合がつくられたか。いま組合づくりにいくつ手がけられているか。等々です。これらの調査をやることによって、地区常任が、支部が直面する大衆闘争、とりわけ労働組合運動に対する具体的指導をどのていどやっているのか相当明らかとなるでしょう。
 しかしもっと事態を明らかにするのは、経営の支部長に対して、担当地区機関常任の具体的指導についてのアンケートをとることであります。この調査も、担当地区機関常任の指導をどう思うかという一般的な質問に終わるのではなく、この一週間、この一か月間、この一年間に、支部の直面する労働組合運動の諸問題について、担当地区常任から三〇分以上の時間をかけて指導をうけたり、相談にのってもらったりしたことが何回あるか。その間、拡大や選挙など「よこ糸」の活動についての具体的指導はどううけているか。等々の事実をたずねる必要があります。
 調査項目は私の思いつきであり、党中央でしかるべく検討していただきたいと思いますし、全国の地区機関すべてを調査することは不必要なことですから標本調査で結構です。しかし、いずれにせよ、客観的事実を明らかにする立場からアンケート調査をやっていただければ、私の主張が、問題を一面的にとらえて事態をゆがめているのか、一部にある弱点を過大視しているにすぎないのか、どうかが明らかになるでしょう。私が確信を持って申しあげることのできることは、こうした調査の結果、大都会においてはもっともいちじるしく、農村県ではかなり傾向はよわく、しかし全国的に多くの地区機関常任が、拡大や選挙などの具体的指導に比較して、支部の直面する労働組合運動、大衆闘争の具体的指導をあまりやっていないこと、しかもそのことが長期にわたっていることが明らかとなるであろうことです。
 しかもここで大切なことは、事実が明らかになっただけでは終わらないということです。深刻な事態が明らかになって、たとえば党中央が問題解決のために「中間機関の指導の手引き」のようなものを作られることがあっても、根本的解決にならないことを私は主張します。なぜなら、党中央がくりかえし、二本足の活動を強調し、八回大会九中総、十回大会六中総手引きなど、労働組合運動への党のとりくみの強化を指示しているにもかかわらず、地区機関の方針でも二本足を強調さえしているのに、とくに大都会などの地区機関常任の実際活動が、支部の直面する労働組合運動や大衆闘争についての具体的指導をほとんどやらないという一面的活動におちこんでいるからです。いまどこの機関へいっても「手引き」にもとづく活動ということがいわれます。しかし、実際の地区機関常任の具体的指導は「よこ糸の活動」の指導や点検がほとんどで、「たて糸の活動」に対する指導や援助がほとんどやられていないのです。もし、ここで党中央が「中間機関の指導の手引き」なるものを作って発表しても、それはそれなりに意義や成果はあっても、根本的解決にはならないだろうことは明らかではないでしょうか。根本的解決のためには、方針では二本足でも、具体的な指導、実際活動で一本足に流れていくという事態がなぜ進行するのか、なぜ長期化しているのか、その原因を明らかにしなければなりません。
 原因を明らかにしていく上で、まず注目しなければならないことは、地区機関常任の具体的指導の一面性は、拡大や選挙や中央の決定の読了などについて、地区機関の具体的指導がきわめて綿密であり、点検が徹底して行われているなかでおこっているということであります。
 十一回大会七中総で、岡副委員長は、「全国的な(拡大の)大運動というものは一年に一回かあるいは一回もやっていない年もあり」、「そういう意味で拡大ばかりやっているということはまったく実際にあわないいい方」だとのべています。中央の立場からみれば確かにこのとおりでしょうが、地区機関からみると事情はこれとは違ったものとなっています。中央の決定する拡大月間がある以外に、月間とは定めないが集中的に拡大をすすめる月があったり、減紙回復のために力を尽くすよう指示される時期があります。また、県委員会が独自に決める特別月間や旬間がかなりあり、さらに地区委員会の決める旬間もあります。しかも注目すべきことは、地区機関の段階では、重点的、集中的に拡大をすすめる時期とそうでない時期との活動の違いがかなりあいまいで、何となく拡大が重点的にとりくまれるべき課題としてみなされている期間がしばしばあり、「努力を集中して○月目標の達成を」という指導があると、連続して拡大月間に準ずる活動をすすめるという風になっていきます。したがって中央がみているより、地区機関の実情では、事実上拡大を重点的にやることになっている時期はかなり多くなっているのです。
 さらに一年に一回か二回全国的な選挙があります。公示までに目標の票をよみきるという方針から、早くから票よみをはじめねばならず、さらに支部毎の方針や目標の設定の指導や、後援会づくりの推進などを含めると、地区機関がその活動の重点を選挙に移す時期は告示の三か月ほど前ということになりましょう。また、中央委員会総会があって、その決議が発表されたり、幹部会決定が出されると、それにもとづいて地区機関自身の討議や具体化があり、支部と党員の読みと具体化の点検があります。三年に一度は党大会があり、大会準備や大会前後の読了の点検があり、一年半に一度は地方党機関の党会議があります。この間に地方独自の選挙がずい時あり、東京都議選挙などがあれば、それへの動員の点検があります。こうして地区機関の実情では、拡大・選挙・決定の読みなどを重点的課題、緊急の課題として取り組まなければならない時期がかなり続きます。