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党員用討論欄

日本共産党中央委員会への意見書…6

2013/6/30 鵜崎義永

 地区機関常任が、支部の直面する労働組合運動や大衆運動の具体的指導をする 時間的、精神的余裕がなく、一面的な活動と指導をやっていることを、暗黙の裡 にささえる支柱となっている「理論」や「方針」があることもまたここでのべて おく必要がありましょう。その一つは、かつて宮本委員長が発言し、いま「党員 拡大の活動について」の手引きにのべられている「個々の要求をかちとる大衆闘 争については、党もとりくむが、大衆組織がとりあげてとりくむ。しかし共産党 を強大にするための党員拡大、読者拡大は、党員がやる以外にはだれもやってく れるものがいない」という「理論」です。これによって地区機関常任は「支部の 大衆闘争の具体的指導はやっていないが、二本足でとりくむ方針は強調してつた えてあるし、拡大は党しかやるものがいないのだから、具体的指導でそれだけに なることがあってもやむをえないではないか」と心の中で考えることができま す。また、党の方針で、緊急課題、緊急任務として強調されるのはいつも拡大、 選挙、読了で、さいきん大衆闘争で強調されたのは、小選挙区制反対だけであっ たことも、地区機関常任の一面的活動をつくりだす一つの根拠ともなっています。
 また選挙でも次のようになっています。十年前の一九六二年四月十二日の幹部 会決定は、選挙公示二か月前で「さらに票を拡大するためには、新しく党の政治 的影響をひろげ、大衆との結合をひろげなければならない。当面の政治的対決 点、各階層のもっとも緊急な問題、地域住民の切実な問題についての具体的で適 切な政治宣伝と新たな大衆活動を展開しながら、新しい党の政治的影響と大衆と の結合を開拓しつつそれを日々の努力で新しい党支持者として組織化しなければ ならない」とのべています。ところが今回の総選挙では公示一か月半前に、「宣 伝強化、後援会、党勢拡大特別月間」が提唱され、つづいて公示十日前に総選挙 での大躍進をめざす幹部会決定が出されていますが、このいずれも大衆活動の強 化について一言もふれられていません。ここでは大量政治宣伝と拡大と後援会づ くり、さらに票よみの課題をやりぬくためにあらんかぎりの力をふりしぼって決 起することが訴えられています。「八中総で三本柱の方針が提起されているか ら、大衆闘争は当然の前提とみるべきもの」といわれるでしょうが、地区機関の 具体的指導では、減紙回復と票よみの課題をやりきるだけで手一ぱいで十年前の 幹部会決定の見地がはいりこむ余地がなくなっている現状を事実上認めた方針と いうべきではないでしょうか。地区機関の具体的指導が、いわゆる「よこ糸の活 動」についての指導や督促が中心で、労働組合運動や大衆闘争の具体的な指導を ほとんどやらない活動が長期間つづいているなかで、今ではこれが地区機関常任 の一つの活動スタイルまでに定着しつつあります。このなかで支部は指導しても らえないことを知っており、相談しても無駄だと大衆運動についての指導をます ますもとめなくなってきています。そしてさらに重大なことは、現在かなり多く の地区機関常任が、労働組合運動などの大衆闘争についての指導能力を失ってき ているということです。支部に対して「春闘をとりくむように」とか「職場の要 求を一つ一つほりおこして闘いをとりくむように」とか「大衆闘争の四つの観点 を堅持するように」とか一般的な指示をすることはできますし、又個別指導でい つも言っています。しかし、実際に職場や経営などでおこっている闘いや組合運 動の具体的な問題について、一つひとつ適切な指示をあたえ、闘いを発展させる 指導をやろうにも、経験も、知識もほとんどないというのが現状です。支部の組 合グループなどは「地区機関には大衆運動の指導はできない。地区の常任は無能 だ」とさえ考えています。
 地区機関常任はその上、日常不断に緊急の課題にたずさわっており、「重大な 情勢があり、そこからくるとりわけ重大な緊急任務」という風にいつも課題と任 務からものを考え、たえず緊張した気もちでとりくんでいます。ここから大衆運 動の具体的な問題について考えようにも、どうしても広汎な大衆の気分や感情が 理解できず、セクト的な情勢分析やセクト的な方針を指導しがちになるという歪 んだ傾向さえ生まれています。
 私の申し上げることは極端だとお考えになるでしょう。もしそうなら、いやそ う考えられなくても、党中央で一度、全党の地区機関常任の労働組合運動の指導 能力を調査する必要があると考えます。中央の労働組合部で、労働組合運動につ いての基礎知識、現在の労働組合運動における諸問題、実地にあったっての応用 などについてのテスト問題をつくり、地区機関常任に対して抜き打ちテストを やってみて下さい。わたしの云うことが極端であるどころか、もっと恐るべき事 態が明らかとなるでしょう。
 以上が大都市の党組織にとりわけ典型的な地区機関常任の活動の実態であり、 その活動が一面化する根拠でもあります。私の述べることが一面的で独断に満ち たもの、清算主義的見地につらぬかれたものと非難することはたやすいことであ ります。しかしこのような結論を出す前に、地区機関常任の活動の実際がどう なっているか全面的に調査される必要がありましょう。全国の党全体についてた だちに調査をするのが困難であれば、中央の指導が最も行き届いている東京都党 においてだけでもすぐ全面的調査をやっていただきたいものであります。そうす れば、少なくとも、この数年来、地区機関常任の具体的指導は、拡大、選挙、読 了などにしぼられ、労働組合運動の具体的指導がほとんどやられない一面的なも のになっている客観的事態と、これまで指導と活動の改善に関するさまざまな方 針にもかかわらず、こうした一面的活動が根本的に解決されることなく、むし ろ、機関活動の一体系のなかの不可欠の部分として定着している事実が明らかと なるでしょう。問題は、私の偏見や独断なのか、そうでないのかではなく、事実 がどうなのかであります。そして、この事実が明らかになるならば、党中央が十 年余にわたってくりかえし、「大衆の状態に注意し、細胞の直面している問題を 解決するという前提を抜きにして相対的重点といわれている問題だけを強調」す る一面的指導のあやまりをいましめてきたにもかかわらず、なぜこうなったの か、十回大会六中総のいう「労働組合運動軽視の傾向」からだけくるものかどう か、一都道府県委員長の指導の欠陥からだけくるものかどうか、根本的検討を必 要とするでありましょう。
 さて、私が申し上げるような地区機関常任の一面的指導、一面的活動が長期に つづくなかで、支部活動において、どのようなことが進行するでありましょう。 中央の方針でどのように二本足が強調され、総合活動が指示されていても地区機 関常任の支部にたいする個別指導では、事実上、「よこ糸」の課題の徹底にしぼ られ、とりわけ緊急重要な任務として督促し点検されることが長期間つづくなら ば、支部が生き生きとした二本足の活動をすすめることができなくなることは、 想像にかたくありません。しかしまた支部は、広汎な大衆のなかで現実に生活し ており、中央の二本足の方針もあるため、それなりに大衆活動にとりくんでいく という事情もあります。したがって、支部の現状というのは、きわめて複雑な事 情となっており、一様でないところにその特長があります。
 地区機関の個別指導の一面性と結びついてあらわれる支部での歪んだ傾向をい くつかあげてみましょう。機関から提起される全国課題は重視するが、支部の直 面している大衆闘争の課題を軽視する傾向、極端なところでは機関からの通達だ けを支部会議で討論している傾向があります。この機関からの通達だけを支部会 議で討論する支部は、この十年来、党中央がそのあやまりを指摘してきました が、現在もなおあとをたちません。支部会議で大衆闘争の討論はするが、ほとん ど討論にもならず、確信が持てる方針の出せない支部もあります。また支部長や 支部委員は党の重点課題に追われて大衆活動をほとんどやれず、支部の大衆闘争 のとりくみを指導できず、組合役員をやっている支部員がいても、その活動はほ とんど支部会議などに反映されていない支部があります。支部で討議される大衆 活動の方針が、しばしばセクト的であったり、党員の大衆のなかでの活動がセク ト的であったりして、広汎な大衆とくにおくれた大衆とほとんど結びつく能力を 持たない支部もあります。会社や組合などのサークルの中へほとんど党員が入っ ていない支部や、組合規約、労働協約、就業規則、賃金体系などよく知らない党 員も、「手引き」にもかかわらず、相当広はんにあります。等々。
 こうした傾向は、全く目新しいものは何一つなく、十年来の党の方針でくりか えし指摘されてきた欠陥であり、「手引き」でその克服を強く指示されている偏 向であります。問題なのは、こうした欠陥が、どれはどの規模でわが党内に存在 するか、ということであり、どうしてこれらの偏向がくりかえしくりかえし指摘 されても、解決されずにあらわれてくるかということであります。
 大衆闘争の軽視と広汎な大衆と結びつくことのできないセクト的傾向は、わが 愛知県党とりわけ名古屋や尾張部の党支部に普遍的な傾向としてみられ、十一回 大会前の指導の改善や「手引き」などの指導にもかかわらず、依然として根本解 決をみていないといわざるをえません。全国の支部の実状についてはわかりませ ん。しかしその他の事情から総合的に推察するならば、もし中央でアンケート調 査などやり、「手引き」などでしめされた具体的欠陥がどれほどあるかを大都市 の党でつかむなら、「手引き」などの指導にもかかわらず、現在もなおかなりの パーセントにのぼると思います。そして、もし部分的な諸問題では改善されるこ とはあっても、とくに党の広汎な大衆との生き生きとした結びつきでは、ほとん ど解決をみていないと考えます。
 なぜなら、党員の広汎な大衆のなかでの活動は、ねばり強い系統的な努力、か ぎりない献身と英雄主義によって象徴されるものであります。こうした努力と献 身があってこそ、広汎な大衆の限りない支持、おくれた大衆からの支持さえもあ つめることができるものであります。しかし、前に見たようにこの二年間の全党 の活動を見ると、あいつぐ月間とそれに準ずる活動、選挙があり、緊急の課題、 緊急の任務がつぎつぎと提起されています。そして地区機関常任をつうじて、支 部へ目標数や課題がつぎつぎとおろされ、くりかえし、くりかえし強調され、く りかえし、くりかえし点検をうけるなかで、多くの党員は、このような大衆のな かでのねばりづよい活動を続けていることができるでありましょうか。わが共産 党員の誇るべきすぐれた資質から、地区機関の要請にもこたえて日夜奮闘しつ つ、大衆のなかでも努力と献身を惜しまず、広汎な大衆の支持を引き続き集めて いる支部や同志も少なからずあると思いますが、全党的に見ればそのような活動 は不可能なことであります。
 さらに、広汎な大衆との生きた結びつきのなかから切実な要求をとらえて、大 衆自身の闘いへの立上がりを組織し、闘いを発展させること、この闘いのなかで 大衆の党員への支持を党の支持へと、政治的・思想的に発展させることは、一そ う困難な任務であり、党と党機関の具体的方針や生きた指導をとりわけ必要とす るものであります。しかし支部があいつぐ緊急課題、重要任務におわれ、地区機 関常任がその具体的指導で、四つの観点にもとづく大衆闘争指導を行わないなら ば、それは不可能に近いことになるでしょう。
 十中総における岐阜県委員長の発言を再び引用させてもらうならば「県委員会 が最近調査したなかではっきりしたことは、春闘方針を討議している支部が経営 支部の五〇%でした。……その経営支部のなかで、党中央の春闘方針にもとづい て、その支部の春闘方針をもっている支部が一〇%だったわけです」とありま す。つまり「手引き」が発表され、支部活動の改善の方針が出されているにもか かわらず、事態は根本的に好転していなかったのです。岐阜県委員長は、指導に よって心服したと報告していますが、党の経営支部が、指導がなければ、労働者 の最大の関心事である春闘の方針を計議しないなどということは一たい何ごとで ありましょう。しかもそうした支部が半数もあるというのはきわめて重大であり ます。党勢拡大は自己目的ではないことはもちろんであります。しかし、それぞ れの職場に建設された党支部が、春闘の方針を討議していなかったとは、春闘の さなかにいったい何を討議し、何を中心とする活動をやっていたのでしょう。答 えは一つ、党機関の提起する全国課題を中心に討議し、それを中心に活動してい たにちがいありません。こうしたことは、岐阜県党だけのことでなく、全党的に 共通しておこっている傾向であるとみなすべきでありましょう。しかもこの労働 組合運動や大衆運動軽視の傾向は、たまたまあらわれた欠陥ではなく、この十年 来ますます、普遍的性格をおびつつあるものと考えねばなりません。「そうでは ない。いくつかの弱点や欠陥はあらわれたが、基本的に全党が二本足の活動を続 けてきたからこそ、得票が五百五十万に増え、読者が三百万近くに大きくなるこ とができたのだ」といわれるでありましょう。十二回大会決議案にも「党勢拡大 の面では『二本足の活動』の基本方針を一貫して堅持しつつ、持続的拡大の定着 に努めつつ……数次の運動を推進した結果、党は第十二回大会を、党員三十数万、 党機関紙の読者は百万部以上の増加という党史上最大の組織勢力をもってむかえ た」とのべています。
 しかし、はたして得票の増大、党勢拡大が真に「二本足の活動」によってえら れたものといいうるでありましょうか。
 第一に、明らかにすべきことは、拡大した読者がどこでどのようにしてふえた かということであります。たとえばこの三年間に拡大した百万部以上の読者のう ち、何%が経営支部によってふやされたものか、そして経営支部がふやした部数 のうち、その経営や職場でふやしたものは何%かということを全党的に調べるこ とが必要でありましょう。私が地区機関で活動していたころの経験から申します と、名古屋の西部、北部地区では、経営支部の読者数は、全地区内の読者数の三 分の一ていどしかありませんでした。読者数の大きな%は、民商、学生、民診な どで占められていました。しかも、経営支部のふやした読者のうち、その経営や 職場の労働者は、またその半分とか、三分の一しかなかったのです。そして拡大 部数が増えるにしたがって、経営支部のしめる%は次第に低下していきました し、経営支部がふやす読者も、地域や友人関係でふやすのがますます多くなって いく傾向がありました。百万部以上ふえた部数のうち、何%が経営支部によって ふやされ、その何%がその経営や職場の労働者であるか、私には知るすべはあり ませんが、議員の同志がふやした部数がかなりあるときいていますし、かつての 傾向から類推すれば、経営支部がその職場の労働者にふやした部数の%は決して 大きいものではないと思います。
 さらに注目すべきことは、これほど大きな部数を持つようになったにもかかわ らず、職場や地域のたたかいや選挙などのとりくみに読者を結集することに成功 している支部がきわめて少ないという傾向であります。かつて一九六〇年ごろ、 かなりの経営支部はそのまわりに読者や支持者の一定の層をもち、職場の問題の 討論や学習などにそうした大衆を結集していました。そしてその中で党員をふや せば、職場の闘いなどをつうじて、さらに広汎な層を党のまわりに結集し、職場 の力関係を次第にかえていくことに成功していました。こうした生き生きとした 大衆とのつながりをもつ経営支部は、愛知県を例にとると、九回大会をめざす中 間目標総達成の拡大運動および、私たちでは、「年末年始の拡大」といっていま す、六五年の年内目標総達成をめざす拡大運動をへるなかで、次第次第に姿を消 していきました。「政策をもった細胞」「自覚的自主的な細胞」ということがい われたのは、その後でしたが、愛知県では、結集しない党員もふえ、多くの経営 支部が生き生きとした大衆とのつながりを失い、多くの読者をもちながら、ほと んど結集する能力をもちませんでした。このことは、支部が県機関、地区機関に よる拡大の一面的追及によって、労働組合運動、大衆闘争にとりくめず、広汎な 大衆を闘いに組織することができなくなっていたことの反映でもありました。し かしこの時期でも、党機関の機関紙拡大についての強力な指導によって、愛知の 読者数は確実にふえていきました。経営支部は主として地域でふやし、地区全体 では、民商や民診、学生などに依拠してふやす傾向がつよまっていました。した がって、この拡大を、労働組合運動や職場の闘いを先頭に大衆闘争を力強く発展 させつつ、党勢を拡大したという「二本足の活動」であったということは決して できません。いまの全党の実情については知るよしもありませんが、全活会議の 報告や赤旗の報道をみるかぎり、「五点改善運動」以来の党の方針にもかかわら ず、読者を生き生きと党のまわりに結集することに成功している支部――とくに経 営支部はそれほど多くあるとは思われません。このことは経営支部などが、全体 として広汎な大衆の闘いを組織し、発展させるなかで、大衆の意識をかえ、読者 をふやすという活動をやっているとは、いえないことを反映しているものでしょう。
 とくに、経営や職場での大衆闘争の前進との二本足で読者拡大がすすんでいる といえないことは、党員の拡大が十回大会以後停滞し、十一回大会では、十回大 会とほとんどかわらず、十二回大会で沖縄県委員会の成立をみてようやく三十数 万になったという経過にもあらわれています。この七年間に読者が百数十万部も ふえ、倍加するという増勢をかちとる政治情勢にありながら、党員拡大では十回 大会で決めた目標にも遠く及んでいません。この党員拡大停滞は、「手引き」に 示されるような党の組織活動上の欠陥からおこったといわれていますが、ここで しめされている欠陥の多くは、実は「よこ糸」の活動だけを追及する一面的指導 の結果つくりだされたものであります。こうした一面的指導と活動の欠陥が党員 拡大の停滞をつくりだすほどであったことは、まさしくこれらの欠陥が全党的、 普遍的性質をもつものであり、機関紙拡大の大きな部分が職場などでの二本足の 活動によるものではなく、「たて糸」の課題の追及によってかちとられてきたも のであることをしめしています。
 さらに、さいきんの拡大運動にあたって、党中央は大衆運動をやってからでな いと機関紙をふやせないという支部の考えを「段階論」として批判し、選挙での 党の得票が躍進し、広汎な大衆のなかに政治的関心がつよまっており、機閔紙読 者を急速に拡大する条件が広がっているとくりかえしのべています。このような 方針のもとで推進された読者拡大は、大衆の実生活における諸矛盾の激化と全般 的な政治情勢の高まりを基礎とする側面が強いことをしめすもので、職場や経営 での闘いを中心とした大衆闘争との二本足で闘いとられてきたとはいえないであ りましょう。
 第二に、選挙戦のなかで、党と読者の結びつきの弱さがもっとも鋭くあらわれ ていることに注目する必要があります。最近の選挙でのとりくみの特長は、その 票よみ活動の大半が党員の活動によって支えられているということであります。 地方党組織によってかなりのちがいがあると思いますが、後援会組織がその力を 発揮せず、党員が読者や後援会員などをとびこして票よみに奮闘しているという のが全国の大半の党組織の実情でしょう。
 選挙戦は、党派と党派がその支持をもとめる政治決戦であるとともに、幾千万 大衆がその要求の実現をめざして、さまざまな行動や活動をしめす一大大衆運動 の機会であります。したがって党の選挙に対する基本方針は、党員の何倍にもの ぼる党支持者や後援会員の一大決起と票よみ活動に支えられて、党の選挙闘争が たたかわれるということにあるべきでしょう。五十年代後半から六十年にかけて 全国にさきがけて党の議席を確保した大阪などの選挙戦ではそのような性格を もっていたとききおよんでいます。また当時の選挙戦が全党的には、党員の活動 によって票よみ活動の大半がささえられていたにせよ、選挙戦を全党の力を結集 して本格的にたたかった最初の時期の弱点とみることができますし、このなかで 生まれていた、後援会員や読者の奮闘の実例を教訓とし、その後の選挙戦に発展 させるべきであったし、また発展させることができたでありましょう。
 ところがその後、党への支持が三倍以上の躍進をかちとってきているにもかか わらず、選挙戦は、ますます党員の奮闘によって支えられる傾向が強まり、党員 一人あたりの票よみ数が何倍にもふえています。このことは、現在のわが党の選 挙戦のとりくみの重大な弱点の一つとしていて重視する必要がありましょう。実 際活動では、大量政治宣伝はビラによる戸別配布がその大部分であり、組織活動 では党員が読者をとびこえて票よみ活動に奔走しており、選挙戦が事実上この二 つの活動にほぼしぼられようとしている現在の傾向は、今後の反動勢力のさまざ まな策動や攻撃を予想するとき、重大な弱点をもつものとして銘記する必要があ りましょう。