いずれにせよ、こうした選挙戦の欠陥は、党の得票増大が必ずしも大衆闘争の
発展と結びついたものでないことを反映するものであります。昨年の総選挙にお
いて、八中総の三本柱の方針があるにもかかわらず、その後の二つの幹部会決議
に大衆闘争との結合についてふれられなかったことも、同じ事情をしめすもので
あります。また、さいきん、少なくない経営支部で、組合選挙で獲得する票より
も全国選挙で党によせられる票の方が多いという特筆すべき傾向がうまれてお
り、わが党の得票の増大が必ずしも職場の闘いと結びついたものでないことを示
すものとして留意すべきことがらであります。
したがって、最近のわが党の得票と党勢力の増大が、全体として「二本足の活
動」にささえられてかちとられたものということができません。もし生き生きと
した職場や地域での大衆活動がすすめられ、党がその先頭にたちつつ、たたかい
の中で読者を拡大しているとすれば、それらの読者が党のまわりに結集し、党と
ともに活動しないことがどうしてありえましょうか。もちろん「二本足の党活
動」を、一方では民商や民診の世話役活動、党の自治体議員のさまざまな活動、
あるいは職場や組合での党員の日常の活動、全国的な報道機関でしらされる党議
員や党代表の言動、選挙戦での大量政治宣伝、等々の活動の総体と、他方では党
建設のとりくみの結びつきとして、理解するならば最近の党の前進が二本足の活
動にささえられたということもできましょう。しかし、この二本足は、とくに職
場で広汎な大衆をたたかいに組織し、このたたかいのなかで党勢力を拡大すると
いう活動を中心としていないところに根本的な欠陥があります。これは真の二本
足といいえないものであります。「手引きで」は、これまでの党勢拡大が、かな
らずしも生き生きした職場や地域の大衆闘争の発展と結びついたものでなかった
ことの反映として、「たて糸」の拡大という「二本足の拡大」と「よこ糸」の拡
大という全国的課題としての拡大とを区別し、この二つの任務の遂行を強調して
います。したがって、支部の労働組合運動や大衆闘争へのとりくみの弱さは、さ
いきんの党の得票や党勢力の増大にもかかわらず、全党的、普遍的なものとみな
ければなりません。またこの欠陥は、これまでみてきたさまざまの根拠から長期
にわたってつづいており、その集中的なあらわれは、労働組合運動におけるわが
党の立ちおくれであると考えねばなりません。十二回大会は、まさにこの党の積
年の弱点を克服する出発点となるべき任務をもつものでありましょう。
こう申し上げると、まさにそのために一連の「手引き」が発表されているとい
われるでありましょう。たしかに「手引き」は党活動改善の上で一定の積極的役
割を果たすことでしょう。しかし、すでに検討してきましたように、支部におけ
る労働組合運動や大衆闘争軽視の傾向やそのとりくみの弱さの根源は、なにより
も地区機関常任の具体的指導そのものに起因しています。この指導内容の抜本的
改善がなければ、「手引き」にのべられた指針の実践は事実上ほとんど不可能と
なるでしょう。
もともと、支部は大衆のなかで生活し、大衆とともに呼吸しているものであっ
て、職場地域における大衆のたたかいの一要素ともなるべきものであります。何
らかの外部からの働きかけ、とくに強力な働きかけがなければ、支部会議が全国
課題の伝達だけの場所となったり、大衆活動を積極的にすすめている党員の活動
を評価しなかったり、組合規約や労働協約をよく知らなかったり、組合員として
活動することを重視しなかったりするようなことは、絶対におこりようがないこ
とであります。職場や地域の活動に熱中するあまり、全国的課題をおろそかにす
るという偏向は大いにありえても、特別の力が働かないかぎり、その逆は生じが
たいものであります。したがって、「手引き」にのべられているいくつかの克服
すべき欠陥は、なによりも機関指導の問題として、根本的検討を必要とすること
がらであります。「手引き」が発表されたとき、支部の多くの同志から、「機関
はこれを保障してくれるか」という質問や意見が出されたと伝えられています。
また、支部の同志たちに指導についての意見を聞くと、「中央はよいが、地区の
指導はよくないし、常任の水準がひくい」という回答がかなりあるのも、こうし
た事情を反映したものと考えられます。
かつて、九回大会三中総やその後の党中央の指導で、党活動における弱点を主
として指導の問題として検討することがおこなわれたことがあるのは、一定の道
理にかなったことでもありました。しかしながら、今、「手引き」で克服すべき
ものとされている欠陥のいくつかを、党機関の指導の問題としてとりあげ、改善
の方向を提起するならば、解決されるでありましようか。私は根本的には解決し
えないといわざるをえません。
なぜなら、地区機関常任の具体的指導における一面的欠陥は、すでに明らかに
したごとく、中央の指導、方針との関連のなかでおこっていると同時に、現在の
全国課題の遂行にともなう客観的困難に根源があるからであります。拡大につい
ていえば、少し手をぬくなら持続的に減紙する、減紙をくいとめても持続的拡大
にはならない。○月目標が次々と達成されないことでくりこされ、結局大きく目
標が残って、中央の月間となる。月間になっても支部はなかなか立ち上がらな
い、立ち上がっても、目標が達成されないのに、月間が終わると、活動もとまっ
てしまう、等々の実情があります。選挙でいえば、支部の立ち上がりがいつもお
くれる。とりくみがはじまっても目標達成までには一大奮起しなければならな
い。このようにしてよんでも、よんだ票の半分か三分の一しか票が出ない等々の
実情があります。こうしたことから中央からは、たえず緊急の任務、緊急の課題
が提起され、地区機関は一つ一つの支部や党員をつかんで全部を立ち上がらせる
「つめきる指導」に年中奔走することになるわけです。したがって、「中間機関
の指導の手引き」などを発表しても、その指導が根本的に改善されえない事情が
あるのです。
かつて、九回大会三中総は、機関の指導の事務的な官僚性、一面性、画一性が
とりあげられ、この克服が提起されました。愛知県でも、幾人かの党機関常任が
「ショックを感じる」ほど深刻な討議もはじまりかけ、改善の方向に動きかけて
いました。しかし、そのなかで年内目標の達成がおくれたため、三中総決定の全
面的実践ということで、その前にもその後にもかつて経験したことのないような
きびしい集中的拡大のとりくみに突入していきました。この拡大は、正月をほと
んど返上したことから「年末年始の拡大」としてなお記憶に残るものであります
が、支部長の同志を毎夜、二時、三時に集中させて点検し、目標達成のために不
退転の決意で指導をつらぬきとおすなど、数行の文面では、その実態をとうてい
あらわしえないほどの激しい集中した活動を推進しました。そのなかで、課題を
達成することが第一義的であると、三中総て克服すべき欠陥とされたような指導
も再現し、拡大数のてっていした追求を行いました。そして、その後は三中総決
定でいう機関指導の改善は、県党の常任の間で、実質的にたな上げになる結果を
生じました。
このような課題の達成か、官僚的一面的指導かという風に問題を対立させてと
らえるのはあやまりであるといわれるでしょう。しかしながら、地区機関の直面
している現実と課題のもとでは、こうした風にしか問題が進行せざるをえないの
です。根本的には統一されるべきことがらであっても、一定の諸条件のもとで
は、むしろ必要な諸条件をかくばあいには、不可避的に対立しあうこともまた真
理であります。大量の未達成の課題があり、一定の期限内にやりきらねばならぬ
とき、地区機関常任にどのような指導と活動が実際要請されるかおわかりでしょ
うか。
もちろん「年末年始の拡大」のころとくらべれば、いくつかの点で指導の改善
があります。しかし、期限内の拡大のためには、指導は確実に全国課題の徹底だ
けにしぼられ、指導の内容は、決意の動員が中心にならざるをえません。そして
このなかで、数だけを一面的に追求し、支部の同志に決意を押しつける指導――官
僚的一面的指導、事務的行政的指導がかなりのていどあらわれてきます。しかも
期限内に目標が達成できればよいのですが、多くのばあい未達成におわり、月間
がおわると減紙がつづくため、こうした指導の長期化がおこり、結局定着してい
くことになります。
したがって、地区機関常任にとっては、現実の悪は「減紙」が生ずることであ
り、「持続的拡大」ができないことであり、「急上昇急暴落」が克服できないこ
とであり、月間や選挙での「立上がり」が遅いことにあり、「票よみ」のあまさ
にあります。愛知県でかつて生じた指導上のあやまりも、指導者個人の欠陥にも
よりますが、全体としては、「減紙」や「急上昇急暴落」を克服するための「持
続的拡大」をすすめようと、集中拡大を年中やるよう指導し続けたことに起因す
るものです。
「政策と計画をもつ自覚的自主的な細胞」「全活型の細胞」といわれたのも、
また「手引き」が発表されたのも、減紙を克服し、持続的拡大のできる支部をつ
くるということが、一つの目標であったといえましょう。しかし、「政策と計画
をもつ自覚的自主的な細胞」「全活型の細胞」はいろいろ論議されましたが、結
局は成功しなかったとみなければなりません。
「政策」をもつという一つのことをみても所期の目的は達成されていません。
当時はカンパニア的に「政策をつくれ、つくれ」と地区機関常任が支部を督促
し、%をあげることに奔走しました。しかしその後はいつの間にか忘れられ、
時々思い出したように、方針の上で支部に政策をもたせる等々のことがいわれる
だけです。今、政策をもっている支部が全支部の何%になるのか調査するなら
「政策と計画をもつ細胞」ということが言われる前と同じような状況にあること
がわかるでしょう。また持続的拡大のできる支部をつくるということでもいまだ
に成功していません。
私は、地区機関に勤務していたころ、二本足で持続的拡大のできる支部をつく
ろうということで、さまざまな指導の工夫をこらしたことがあります。しかし結
局成功しませんでした――いや工夫をこらして指導すればするほどうまくいかな
かったのです。私の他にもそのような努力をはらっている常任もいく人かいまし
たが、同様の結果でした。また、地区内の支部を見ると、地区機関常任が手をつ
くして指導してる経営支部の大ていが活動がうまくすすんでいないのです。拡大
の部数ではすすんでも生き生きとした活動になっていませんでした。地区内で大
衆闘争も積極的にすすめ、拡大も持続拡大で、しかも急速に党を大きくしている
経営支部は、むしろ機関の手のとどかぬ支部でした。これは地区内におこってる
傾向だけでなく、全県的にも、生き生きした活動を県活動者会議などで報告でき
る支部は、名古屋にはきわめて少なく、郡部で機関の指導のゆきとどかないとこ
ろにむしろあります。この傾向は、全国活動者会議にもみることができます。ま
た「急上昇急暴落型」という欠陥は、全党の拠点であり、中央の指導が行きとど
く大都市の党に多く、持続拡大を続ける党組織はほとんど、中央の指導のとどか
ない農村県であるという事情も特徴的であります。
党中央の指導がもっとも行きとどくはずの東京都党について、このどの都議選
で、「党員と党支持者の力を全面的にくみつくしきれないまま選挙戦が終わっ
た」といわれていますが、私は四年前にも都議選に応援にいったいく人かの同志
から同様のことをきいた記憶があります。十一回大会後、東京都党のある拠点経
営で労働組合選挙に重大な後退があり、都委員会が、組合運動に十分な具体的な
指導をしていなかったあやまりについて報告を聞いたこともあります。また、現
在、三か年計画でも都党は一目標も達成されていません。これらのことは、束京
都が日本の政治の中心地であり、党中央の意識的系統的な指導が行わわているこ
とを想定するならば、異常であるという印象をまぬがれることはできません。
以上のことがらは、指導において典型をつくることが、全党的に依然として成
功していないことを示すものでありましょう。
十一回大会後、党中央は、減紙回復の月間、月間と指定しない集中拡大の時
期、総選挙直前の月間、本年6月の月間など、例年の大運動月間のほかに少なか
らず集中拡大の時期をもうけるとともに、○月目標の達成や減紙回復などを緊急
重要任務としてくりかえし全党に指示してきました。このことは一つには、減紙
を克服し、持続的拡大をすすめることをめざすものでありましょう。しかしこの
ような指導は、地区機関では常任の具体的指導がますます一面的指導になること
を助長するものであることはすでにみたとおりであります。かつて一九六九年の
はじめ、持続的拡大がすすまぬのは、地区機関などの指導で、相対的重点をおさ
える「力の適正な配分」のよわさからくるものとして、月間、旬間、週間など
次々と提起されたことがありました。そのころ私は地区機関にいましたが、文字
どおり拡大の指導ばかりをくりかえし、「相対的重点をおさえていないからふえ
ないのではなく、おさえすぎているからふえないのだ」とかんじたことがありま
した。このような月間、週間を連続的に提唱することは成功せず、沙汰やみとな
りました。減紙を克服するため、あるいは持続的拡大を定着化するため、六九年
二月二五日幹部会決定のように「機関紙拡大の全国的運動をくりかえし実施する
必要はいよいよ切実なものになっている」とするならば、支部にとって「たて
糸」の活動をすすめる余ゆうはますますなくなり、持続的拡大のとりくみもます
ます困難にならざるをえないわけです。十回大会十中総で持続的拡大の「教訓
的」なものとして評価された福岡県と佐賀県が十一回大会後の拡大率ではいずれ
も全国の最下位の水準にあることは、拡大運動のくりかえしによる持続的拡大が
結局どういう結果をもたらすかをものがたるものでありましょう。
こうして、この数年間、減紙を克服し、二本足による持続的拡大を定着させる
ことや、急上昇急暴落型を解決することなどのために、いろいろな努力が試みら
れてきたにもかかわらず、これらの課題は結局成功していません。大量減紙の克
服はすでに八回大会三中総からの全党的課題でありますが、その後十年たって
も、いぜんとして解決せず、拡大の大半は集中拡大によってささえられ、そのあ
と大量減紙がうまれるという経過をくりかえしています。票よみの甘さの克服に
ついても、「広くあたってかたくよむ」という方針がうまく実践されなかったこ
とは九中総における書記局長の報告がしめしています。
したがって、地区機関常任にとっては、減紙が解決せず、持続的拡大が定着せ
ず、集中拡大の努力を払わねばふえず、全党員の立ち上がりが遅く、票よみもい
ぜんとして甘いという欠陥がつづくかぎり、拡大、選挙、読了の任務をたえず、
緊急課題、重要任務として支部にもちこみ、一つひとつの支部をつかんで全支部
をうごかす「つめきる指導」に奔走しなければなりません。しかし支部にとつて
は、機関常任の労働組合運動などの大衆運動についての具体的指導はほとんどな
く、つぎつぎと全国課題だけをおろし、その督促と点検をくりかえしすすめられ
るなかでは「たて糸」の活動をつよめる余裕はなく、二本足の活動、持続拡大は
できないということになりましょう。このことは解きがたい矛盾であり背理であ
ります。
問題の根本は、どのような拡大がすすめられ、どのような選挙活動かおこなわ
れているかにあります。すでに申し上げたように、現在の読者拡大は、全体とし
て職場や地域の闘いと直接結びつかないものがかなり多くなっています。特に、
経営支部では、その傾向がいちじるしくなっています。多くの支部の同志たちに
とっては、全般的な政治情勢の高まりのなかで、つながりをもとめては機関紙を
すすめるという活動がふえています。このような拡大は支部にとってどうしても
職場や地域の闘いの力となるとは思えませんし、なかなかこのような工作には足
が出ません。多くの経営や職場では、さいきん、党が先頭となって、職場の事情
をかえるような闘いをくんでいません。職場の対象者としてあげられる大衆の多
くが一度、二度工作したことがあるか、一度とってやめた元読者で、簡単にふや
せるとは思えませんし、ふえたにしても目標達成までには、ほど遠い少部数です。