■「不破政権構想」は政権論一般か具体的な政権構想か
<「政権構想」として掲げるものが、「政権の協議をする準備があるということ」の表明にすぎないのだとしたら、「政権構想」の名に値しないということです。>
これはおっしゃる通りですね。
「さざ波通信」編集部も私も勝手に「政権構想」と規定していましたが、そうではないようです。
3中総を引用すると、
【これは、政権構想の直接の提唱ではなく、わが党がこういう政権論をもっている、政権問題についてこういう用意があるということとして解明したものです】
として、総選挙でわが党が民主連合政府の樹立への展望を指し示してその実現のための国民的合意を広げる努力をしながら、もし自民党が多数を失った場合暫定政権という政局打開の政権を実現するために協議に参加する用意がある、と言っています。そして、5中総でも【政権構想についてのわが党の立場】として同様の説明がされています。
つまり具体的な政権構想の提唱ではないんです。この点から見ても、さざなみ通信の「不破政権構想の破綻」という指摘が当たらないことは明かでしょう。もう一度「さざ波通信」編集部に質問です。「何」が破綻したのでしょうか。
■自民党政治の継承か打破か
<社民党が参画した内閣は肯定的に評価できるのでしょうか?>
<全体として自民党政治の枠でありながら、部分的にでも打破できれば共産党は政権参加すべきだとお考えですか?><共産党が参加すれば、進歩的な方向に向くという保証はどこにあるのでしょう?そもそも「自民党政治」とは何を指しているのでしょう?>
「さざ波通信」編集部も私も細川内閣は自民党政治を継承するものだと規定している点では一致していると思います。では自民党政治の継承か部分的な打破かを評価する基準はなんなのでしょうか。この問題を考えることは、今回の「政権論」を論ずるにあたって重要なことだと思います。
93年の細川内閣の政権の基本的性格として非自民非共産6党派による合意があります。その中には企業・団体献金の廃止や過去の戦争に対する反省などの前向きなものもありますが、政権の性格として「外交および防衛等、国の基本施策についてはこれまでの政策を継承し」としていることが大変重要だと思います。ここでは2つのことが判ります。彼ら自身が外交及び防衛などが国の基本政策だと認識していること、そして基本政策についてはこれまでの継承でいいと表明していることです。この政権ではこの合意の通りに、ガイドラインの策定作業などがこれまで通りに進められましたし、米の輸入自由化へのウルグアイラウンド合意などもこの延長にあると思います。これらはこの政権が、安保を強化・改悪しアメリカ帝国主義への従属を強めるという性格を持っていたことを示しています。この点で私たちはこの内閣を積極的に肯定することは出来ません。
以上のことを考えると、三中総で提起された政権論の中で、「政策の一致点による合意」の他に「安保条約への態度の保留」ということが、積極的な意味を持つことが判ってきます。綱領路線で目指す民族民主革命にとっての2つの敵であるアメリカ帝国主義と日本独占資本による支配の強化に繋がるような政権には、共産党は参加出来ないのです。しかし、自由党も民主党も公明党も社民党もそれぞれの綱領を持っている訳ですから、この違いを脇に置くことが暫定連合政権の大切な基準になるんだと思います。
■過去の「暫定」連合政権構想
共産党は過去に2度「暫定」連合政権構想を具体的に提起しています。1976年4月三木内閣の時、(1)小選挙区制粉砕(2)ロッキード疑獄の徹底究明(3)当面の国民生活擁護、という三つの緊急課題で暫定政権構想を提起しました。1989年7月にも(1)消費税廃止(2)企業献金禁止(3)主食であるコメの自由化阻止、の三つの緊急課題での暫定連合政府の樹立を提唱しています。いずれも安保の問題を保留することを条件とした点で今回と同様ですし、具体的な提起をしたのは選挙戦に突入してからのことですから、今回の「政権論」が取りわけ新しいという訳ではありません。今回の「政権論」の提起は、その時よりも共産党の勢力が大きくなって、共産党が参加した政権が具体性を持って受け取られていることではないでしょうか。
■連立相手の綱領路線と政策
<自由党や民主党が新自由主義と帝国主義化を食い止める政策を掲げているのですか? たとえばどのような政策でしょうか?>
私は綱領を問題にすべきではないと指摘したのです。彼らはおっしゃるように新自由主義を進めようとしているでしょう。しかしそうした綱領的な立場の違いを「暫定」政権を作る上での障害としてはいけないのです。その違いを脇に置いて、当面する政策上の一致点で合意することが大切だと思います。ではどんな政策で合意できるのか。これは今回の野党3党の合意が参考になると思いますが、少なくとも官僚主導の無駄な公共事業の削減や、雇用確保の推進による不況打開対策などは一致できるのではないでしょうか。
■人民的議会主義
<「議会制民主主義」と言ってもさまざまな形態がありますよね。革命を支持する側の議員の数も、こうした議会形態自体も、いずれも市民社会における抑圧者側と被抑圧者側の力関係の反映であり、革命の成否は、あくまでその力関係で決まるのではないですか?>
それはそうでしょうが、議会は軽視しちゃならんでしょう。議会の形態を変える闘いも大事だし、そこで多数者となる闘いも大事です。もちろん、労働戦線を中心とする広範な大衆闘争と、強大な党を作る党建設がその基礎でしょう。選挙と議会だけが全てを決定するかのようなブルジョア議会主義は誤りだし、逆に議会の役割を軽視しして強力革命に傾向するのも誤りです。
<基本政策において自民党と大差ない民主党とは中央段階で「野党共闘」をいっしょうけんめい追求する一方で、地方首長選挙では、市民派議員・無党派との共闘を少しも追求しなかったということです。目を向ける相手が間違っているのではないでしょうか?>
地方選で市民派・無党派との共闘を少しも追及しないというのは事実なのですか。だとすれば改善を要求しなければいけません。しかし、民主党なりの野党との共闘を追求することも大切です。目をむける相手は両方です。
(追伸:この論争のお陰でいろんなことに気付きましたし勉強もしました。私の認識は少しずつ深まりつつあります。澄空望さんありがとうございます。もう少し続けましょう。出来れば編集部のご意見も聞きたいと思います。ちなみに私の規約改正の提案にはご興味ありませんか。)