テレビ朝日の選挙速報において、自民党との違いを聞かれた民主党の鳩山は、「サッチャーとブレアの、その両方をめざす」ことだと公言した。自民党は農村部に若干気兼ねしたサッチャー路線を追求してきた。日本共産党はこの間、こうした支配的な路線と正面から対抗してきただろうか。こうした馬鹿げた選択肢を超える、革新的オルタナティヴを有権者に示し、自民も民主も拒否する真の革新世論を組織することに全力を注いできただろうか。その答えは選挙結果に如実に現れたといえる。テレビで敗因を聞かれた不破指導部は、謀略宣伝を専ら強調した。確かに卑劣な反共攻撃は許すことはできない。比例区の縮小も批判すべきだ。しかし仮にそれが原因だとして、より深いところにある問題は、その程度の世論しか存在しないのはなぜかということだ。「反自民」の風は今回さらなる保守化傾向を示した。自由党は伸びたし、何といっても課税最低限引き下げと憲法改悪を掲げた民主党が躍進したことは、無自覚な形で一定の批判的感覚と同居していた「市民派」のかなりの層が、より明確に保守化したことを意味しよう。辛くても直視すべきは、革新的世論が成長していないことだ。
では、この間の不破路線は何らの責任がないといえるか。末端活動家の力量不足のせいだといえるか。違うだろう。今回の選挙においてはっきりしたことは、革新的オルタナティヴなき「反自民よりまし」路線の範囲内においては、有権者は共産党ではなく民主党に期待したということだ。その程度のことで、共産党にいれる人がそんなにいるとでも思っていたのか。共産党が本来果たすべき役割は、こうした世論を下から変えることだった。マスコミは共産党がより右にいかないから伸び悩んだというおきまりの(今回はやや苦しい)理屈を展開しているが、現世論状況を所与としたまま党が右に行けば、今回のような悪循環をより深刻なものにするだけであろう。民主党への批判を遠慮し、こうした「柔軟路線」の幻想に自らはまっていった不破路線は、はっきりと破綻した。党指導部は自らの犯した過ちを真摯に受けとめるべきだ。今こそ党全体がより広い歴史的視野に基づいて革新的オルタナティヴを開拓し、広範な声なき「革新勢力」の再生に向けて腹をくくるときである。