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党員用討論欄

都議選不破報告の感想

2001/7/12 山荏田僚、50代、会社役員

不破議長の東京都議選報告について
 都議選の総括案ともいえる議長報告が先日発表されたが、その内容には首をひねる疑問点が多い。

1 選挙の結果をどう見るか
 議長報告では次のとおりである。

「小泉人気のもとで、野党として得票率を伸ばしたのは、日本共産党が唯一です。大事なことは昨年の総選挙での後退を押し返して(得票率で)われわれが、14.3%から15.6%へ増大を勝ち取った新しい前進の方向をきり開いた点。民主党との関係では民主党は165万票(総選挙時)から64万票にへらし、共産党は10万票の差をつけて逆転した」

 疑問点1
 なぜ都議会選挙を総選挙と比較するのか、その意味がわからない。国政選挙と都議会選挙では、1選挙の目的、2政策、3選挙区、4立候補者数、5選挙基盤、6議員活動(議会内外)等においてまったく条件が異なる。条件が異なる選挙での数字を比較して論じるより、上記6点の条件が同一の前回の都議会選挙と比較してその結果から、政治的に前進したのか、後退したのかを分析するのが自然で正しい総括である。ちなみに前回の97年都議会選挙の結果と今回との比較は次のとおりである。

今回得票数(率)議席前回得票数(率)議席
自 民 党1.721.603 (35.96)531.160.762 (30.82)48
共 産 党748.085 (15.63)15803.378 (21.33)26
公 明 党722.464 (15.09)23705.816 (18.74)23
民 主 党647.572 (13.53)22388.928 (10.33)13
ネ ッ ト137.489 (2.87)695.455 (2.53)3
社 民 党68.055 (1.42)070.637 (1.88)1

 選挙結果の評価は 議席、得票数、得票率、の三点が前回の同一選挙に比べどうなったかをみるのが基本である。
 議席の増減は、議会活動 議員活動や議員個人の人気、選挙戦術を反映し、得票数、得票率は政策や公約、政党自体の日常活動やあり方がどう評価されているかがあらわれる。
 すなわち選挙とは前回の選挙でかかげた政策や公約の実現にどう努力してきたか、政党活動やありかたが健全に運営されてきたのか、そして今後公約実現のみとおしや具体策をどう押し進めるのか、が有権者によってチェックされ、次期議会活動への期待として、一票が行使されるのである。
 さてそれらを前提にしてみるならば、今回の都議選の結果は前回に比べ、議席、得票数、得票率の3点そろって伸ばしたのは、自民党と民主党であり、逆に3点そろってへらしたのは、共産党と社民党である。不破議長が報告のなかで民主党は半分に減らした(得票数)と何回も念をいれて強調している印象とはずいぶん違った図になる。
 3点がそろってへるということは、先ほど述べた政党活動や議員の個人活動を前回より否定する人が多かったということを意味する。それは

  1. 石原都政行政にどう参加(反対)し公約実現に努力したのか。
  2. 議会内外の活動はどうだったのか。
  3. 共産党の昨年決定の自衛隊容認論、民主集中制の強化等の影響は。

 等の問題が、支持者や他の有権者をして共産党への選択を躊躇させたことを意味する。しかも3点とも減少したことは、深刻である。3点そろって減少する選挙は日本共産党の歴史ではまれなことである。このまれな悪い結果を認めたくなくて、不破議長は、比較の対象として総選挙を故意に選んだのではないかというのが、私の疑問点である。
 選挙指数3点がそろって減少するということは、共産党の活動が否定されはじめたということを意味し、共産党の存続にかかわる問題を提起しているのである。
 バブル以降日本資本主義は新しい局面にはいってきている。この間国民は村山、橋本、森といった無能内閣を甘受させられ、がまんにがまんを強いられてきたが、今回それらの旧悪を全面否定と改革を宣言した小泉に、がまんの救世主と幻想して当面の治世を委託しようとしている。
 ところが、共産党指導部はこれらの複雑な新しい局面を正しく認識し対処することができないまま、方向性を見失いつつあるのではないだろうか。不破議長報告が都議選総括で事実を事実としての認識をそらしている作為に、またそれをそのまま受け入れている幹部の姿勢に、おおいなる疑問をいだいたのは私だけだろうか。

 疑問点2

「民主党が得票を減らしながら議席を増やせたのは、公明党の「票の積みし {票回し(民主党へ}」等の反共戦略の結果である」

 と報告では述べているが、民主党が票を減らしたという認識は先ほど述べたように誤りであり、逆に前回より3.2%伸ばしている。議長報告は公明党が同党の候補者を擁立していない選挙区では票回しが行なわれたと述べている。
 一般的には政党が他党に票をまわす行為は違法ではない。過去の例では共産党にはそのような経験は選挙区ではないが、国会内の首班指名では他党の代表に一票を投じたことは耳新しい。共産党が将来の選挙で他の革新党と票のバーターをすることはありうる。それは多分「推薦」というかたちをとるだろうが、投票を個人に強制できるものではないから、投票に参加する党員や支持者が納得できる理由と協定が必要なことはいうまでもない。それを今やっていないからといって、公明党のそのことをとらえて「反共謀略」と決めつけるのは単純すぎる。
 新聞記者の話や記事、3図の選挙区における全員落選の事実から不破議長はけしからん事実のように報告しているが、冷静に考えてみれば公明党の動きは当然の成り行きで予想できたことである。
 公明党は今や政権党であり、反共産党をさけんでいるわけだから、自党の立候補がいない選挙区で共産党にいれなさいと言うわけがない。まして民主党はその生い立ちからいっても、公明党にとっては竹馬の友であり、政策的には自民党の同居家族的な枠組みの政党であるから、支援をおしまないのは政界の自明である。。その選挙区の党機関は公明党票が当然共産党以外の候補に流れることを予想し、計算した上で選挙運動が展開したはずであろう。選挙前から公明党票を共産党にとりこむ方針はなかった以上、落選の主因を公明党の反共謀略に求めることは単純すぎるし、総括としてはいかがなものかと考える。
 はたして公明党の「反共謀略」の影響によって共産党の議席がどのくらい打撃をうけたのか分析をしてみる。
 図2は民主党、公明党をはじめ各政党や諸派が立候補者を擁立した選挙区での、得票率、得票数率を表したものである。この選挙区では各政党は自党の議席確保に懸命であるから、他党に票をまわすことはない。したがって今回の都議選の各党の力量がそこにあらわれている。
 得票率の推移ではわかりにくいので、得票数率を計算してみた。これは前回の都議選で獲得した票数を100として、今回の票数がどれだけ増減したかの%である。例えば板橋区の場合、民主党は102,2だから前回の2倍以上の得票をしていることを意味し、共産党は前回より12.8%票を減らしていることがわかる。
 この16選挙区の平均は、民主党が60.6%増であり、共産党は-6.8%である。票数でいえば、民主党は138000票増やし、共産党は33866票減らした。
 したがって今回の都議選では、平均値として民主党は前回より60%以上の得票を上積みできる力を有し、共産党は逆に6.8%後退している姿がそこにある。(もちろん候補者の個人的集票力も計算にいれる必要があるが、ここではそれは計算できないので、平均値として得票数率を各党の集票力として判断することにする。)

図2 得票率の増減(97年都議選との比較)
     (但し 公明党、民主党の候補が競合した16選挙区)

単位、%
民主党共産党公明党
得票率得票数率得票率得票数率得票率得票数率
新宿-1.9518.4-5.75-2.1-3.557.7
江東 3.3771.3-6.34-13.4-5.001.1
品川 1.6844.7-6.69-12.2-4.860.5
目黒0.5628.1-5.56-9.3-7.15-5.9
大田1.2643.3-6.03-9.1-4.587.2
世田谷2.9182.8-6.37-22-5.62-2.6
中野5.93102-2.98 5.7-0.4721.2
豊島4.6540.5-10.26-23.7-5.1-11.2
4.8468.2-2.454.5-3.221.6
板橋4.68102.2-7.43-12.8-4.154.2
練馬1.1346.4-6.83-16.4-3.529.4
足立4.2296.1-3.191.3-3.27 8.4
葛飾1.9258.9-5.32-5.9-2.9114.8
江戸川2.4383.4-5.04-6.1-4.019.8
町田1.2137.6-1.8117.5-3.0914.1
北多摩11.7245.7-5.89-1.4-4.710.7
上記平均2.4560.6-5.55-6.5-4.285.6
東京平均3.266.5-5.7-6.8-3.652.3

図3 公明党の票まわしで議席を失ったとされる選挙区
   政党の数字は投票数率(前回を100としての数値)
   票差は当落差 定は定数 公 流は票回しのところ
   もぎとり票、下位当選者(民主党、その他)からもぎとっていれば当選していた数

民主党共産党自民党票 差もぎとり票
27-4.351.92952148
文京53-2.21707822391
台東-16.3-12.3121.4297721489
渋谷134-7.370.3648223241
立川63.76.775288521443
府中36.88.682.4775023876
小平58-3.010012501626
日野新人-20.09413352668
西東京8.2-4.287.7930724654
北多摩367.72283774023871
北多摩468.30.319.8229821150

 図2で説明したように、民主党が前回より60%以上の票を上積みできる環境がこれらの選挙区にもあったことを前提にするならば、公明党の票まわしの有無にかかわらず、民主党やネットは自力で当選している。港、文京、小平の三選挙区が票差としては、あとすこしで追いつく可能性がみれる。しかしながら、公明党や創価学会員が自主投票だったとしても、この票差をうめるだけの共産党候補選択の見識が彼らにあったかどうかは疑問である。
 このように不破議長報告は、都議選結果の評価、事実の認定において歪曲がされており、三点セットでマイナスになった重大な事実の分析や、それをもたらした原因の追及に言及されないままになっている。私は共産党の存続がかかった選挙として総括しなければならなかったのではなかったのかと感想するものである。