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党員用討論欄

領海内に不審船が来たら?

2002/2/4 澄空、30代、会社員

 久々に投稿します。
 「毎日新聞」に有事法制についての電話世論調査の記事がありました。非常に憂慮すべき結果だと思いました。以下が全文です。

【3】世論調査:有事法制必要は6割 民主支持層がトップ
 「有事法制」について、61%の人が「必要だ」と考えていることが毎日新聞電話世論調査で分かった。「不必要だ」は20%にとどまった。さらに必要派のうち46%が「有事法制整備を急ぐべきだ」と答え「急ぐべきでない」13%を上回った。無回答は42%だった。
 有事法制が必要と答えた人は男女別で男性72%に対し女性51%と20ポイント以上の開きがあるのが特徴だ。また支持政党別では、党内に慎重論もある民主支持層が72%でトップ。自民支持層の69%、自由支持層の68%などが高かった。社民、公明支持層では必要派は4割台にとどまったが、不必要派を上回っており、反対が多数を占めたのは共産支持層(必要29%、不必要64%)だけだった。また「支持政党なし」層は必要61%、不必要21%だった。
 調査では、不審船事件の対応についても尋ねたところ、「自衛隊が対応すべきだ」が44%で、「海上保安庁の対応で十分だ」41%をわずかながら上回った。 【高安厚至】
[毎日新聞1月20日] ( 2002-01-20-19:31 )

 この間の米同時多発テロや「不審船」事件の影響でしょうか。
 1月28日に発表された「『不審船』問題についての日本共産党の見解と提案」の中でも、以下のように書かれています。

「わが国領海やその周辺水域で、犯罪行為を行っているのではないかと疑われる国籍不明の船舶、いわゆる「不審船」が出没していることにたいし、国民から不安の声があがっている。」

 そしてこの認識から次のような判断が示されています。

「海上保安庁によると、いわゆる「不審船」は、同庁が把握しているだけでも過去二十隻が確認されている。また、これらの「不審船」が漁船の形状はしているものの、国籍不明であったり、船名を詐称していたり、今回のようにロケット砲や自動小銃で武装していることも判明している。このような船舶が、領海はいうまでもなく、排他的経済水域で出没しているということは、わが国の安全と秩序にとって、放置できない。」

 このように、わが党は、「不審船」について、領海のみならず排他的経済水域でも取り締まるべきだと考え、それゆえ「周辺国と共同対処できるルールづくり」を提唱しているわけです。

 さて、有事法制を必要とするという世論や国の安全についての国民の不安にはどれだけの具体的根拠があり、そして「不審船」問題についての党の見解には、どれだけの妥当性があるのでしょうか?

 「不審船」とは、その航行を放置しておくと重大な犯罪を起こすか、その恐れがある船舶のことだとされています。「領海侵犯」という名前の罪状はないため、この場合の犯罪とは、おおむね非合法の海上輸送のことだと考えてよいでしょう。たとえば、密航や麻薬・武器といった取引が禁じられているものの密輸です。インターネット上の資料をみるといずれも中国からのものが最多で、その次が北朝鮮のようです。たとえば麻薬の密売は半数以上が中国がらみで、3~4割が北朝鮮がらみだそうです。今回の事件が明らかにしたことは、これらの密航・密輸船が武装しているということでしょう。
 では、こうした事実が国民の安全にとって、どれだけの脅威になっているのでしょうか? 海上保安庁が把握しているだけでも過去数十年で二十隻だそうですが、たとえこれがもう少し多かったところで、陸上や領海内で行なわれている麻薬・武器取引や発砲事件などとは比較するのも馬鹿らしいほど小さいものであることは明らかです。

 だからといって、これらを放置するわけにはいきません。海上保安庁ができるだけ取り締まるべきでしょう。しかし、莫大な税金を投入して武装強化し、海上保安庁職員に命をかけさせてまで取り締まる必要はまったくありません。「不審船」の目的は密航や密輸であり、わざわざ武器で先制攻撃してくることはまず考えられません。逃げるなら逃げるでよいのです。それで密航・密輸がされないなら充分に警察機能を果たしたことになります。それが、実際に領海内で行なわれている取り締まり行為である「警告撤去」というものでしょう。

 なお、こうした「不審船」に対する取り締まりは、日本の主権がおよぶ領海に限るべきです。共産党の見解では、排他的経済水域において「不審船」の取り締まりについては取り決めがないと言われていますが、これは誤りでしょう。排他的経済水域においては、日本の主権は海洋資源(魚や鉱物・石油など)に限られているので、「取り決め」がないのではなく、主権がないために「取り締まりができない」と考えるべきなのです。

 今回の「不審船」事件は、「取り締まりができない」ところで取り締まりをしようとしたところにそもそもの問題があります。現在はどうなっているのかは知りませんが、かつては中国との漁業協定で、東シナ海においては、日本の経済的排他水域での漁業違反は、違反船が中国籍であれば、中国当局が取り締まることになっていたと思います(逆に中国の排他的経済水域での日本国籍船の違反は日本が取り締まる)。たとえ、本当に漁業違反容疑があったとしても、中国方向へ逃げて行った時点で、あとは中国当局に通告するだけでよかったのではないでしょうか。

 いずれにしても今回の「不審船」事件は、『さざ波通信』が言うように海上保安庁・政府の対応がメチャクチャであった上に、おまけにうまく有事法制についての世論誘導ともなってしまいました。こうした世論誘導に警鐘を鳴らす役割をもつはずの『赤旗』が沈黙していたことは極めて遺憾です。