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党員用討論欄

「真実と和解委員会」をつくろう

2002/2/25 国忠崇史、30代、赤旗配達員

  私は以前テレビで、人種隔離政策廃絶後の南アフリカ共和国において「真実と和解委員会」が設置され成果を挙げているという内容のドキュメント番組を観ました。この委員会の趣旨は、アパルトヘイト時代の官憲が黒人解放活動家等に加えた陵辱や虐待の真相を隠さず語ることと引き替えに、刑事訴追を免れるというものであります。通常の裁判では自己に不利益な陳述は忌避されますから、こういった特別な委員会を設けないと弾圧した側から事の本質が明らかにされないのは当然ですが、反面、拷問死者の遺族や急進的な黒人グループからは、手ぬるい、これでは癒されないとの批判が出ているとのことです。しかしとにかく委員会の活動によって、当時の国家的弾圧の詳細が明らかになってきたという功績がもたらされています。
 この「真実と和解委員会」方式はいつしか他の紛争地域を和平処理するヒナ型となり、現在では名称もそのままにチリ、エクアドル、東チモールへと伝播しています。
 そこでひとつ、私から提案があります。

<この「真実と和解委員会」を、わが日本共産党にも設置してはどうでしょうか?>

 そうひらめいたのは2月11日付党員用討論欄「しんさん」さんの投稿を読んだからです。しんさんさんは御身の上に起こった事件を回顧したあと、こうお書きです。

三十年後、党は「この事件は組織的犯罪であった」とようやく認めながら、私が要求する「名誉回復」措置、当時の責任者の謝罪(自己批判)を絶対にしようとしません。

 私は日本労協連鹿児島事件の過程を通じ、大衆団体幹部の党グループからは理不尽な扱いを受けましたが、東京・北海道の地方党機関や全労連一部労組からは同情され、他方で党中央からは2年間全く黙殺されるという不思議な状況のまっただ中にいますので、しんさんさんとは様相が異なり、彼の事件について直接のコメントはできませんが、名誉回復措置の重要さはよく判ります。取るべき措置の内容とはつまり真相を機関紙上で明らかにし、しんさんさんへ当時向けられた誹謗について謝罪するということです。さらに名誉回復証書のようなものを本人に交付することも必要と考えます。
 これら名誉回復措置は中国や旧ソ連などでも、政変のあとには普通に行われていたことです。一党独裁の政権党から不当に除名されると、社会生活も即座に不自由になるわけですから当然の措置ですが、ソ連共産党や中共のような政権党でないわが党であっても、六全協後に行われた経験がありますし、決して初体験ではないはずです。また、かつて綱領討論誌「団結と前進」を発刊した力量があるのですから、60年代以来の党内事件の真相を投稿すべき「真実と和解(仮称)」誌が発行されてもおかしくはないです。
 こうした措置を取られるべき対象として、しんさんさんほか「さざ波通信」投稿者ではラジオ関東争議団の碓氷さんが思い浮かびますし、一般的に知られている件では「ミヤケン勇退決議」の伊里一智、小田実問題の有田芳生、「葦牙」同人たち、原水協の吉田嘉清、「愛知県党箕浦指導問題」の宮地健一、そして「新日和見主義事件」の川上徹・油井喜夫といった各氏が続けざまに想起されます。彼らの多くは近年になってホームページを開設し、あるいは『査問』『汚名』などの書籍を刊行しましたが、そこでの訴えに党は耳を傾けようとはせず、「真実と和解」の道はなお遠し、と慨嘆せざるを得ません。

 さて、私の遠縁にも『流されて蜀の国へ』を自費出版した川口孝夫氏がおりまして、彼は1952年の白鳥事件の詳細を知る立場であったため袴田里見によって56年中国四川省に送られ、17年間帰国できませんでした。党は、川口氏を「流刑」にしたのは袴田たちが勝手にやったことで(六全協翌年の事なのに!)、さらに後年川口氏が「文化大革命」に傾倒したことを以て、党中央には全く責任がないといいます。強調しておきますが、この態度は日中両共産党が和解したいまになっても変わりません。何と実りのない両党の和解でしょうか。

 内部の暗部、矛盾を解決できずに放置したまま、ただお題目ばかり唱えているようでは説得力はなく、党の魅力もありません。今最も必要なのは、裏表の二面性のない「日本共産党の改革」ではないでしょうか?
 と、しんさんさんもお書きです。
 みなさんご存じの通り「表」では佐々木憲昭議員などの大活躍により、われわれ党員も大いに誇りがもてる活動が展開されています。しかし時代の大枠は「さざ波通信」編集部の規定通り反動期であるといえます。つまりムネヲを放逐して「田中真紀子首相」でも誕生させれば簡単に新自由主義勢力は息を吹き返しますから、わがほうの追及にも限界はあります。
 こういう時期こそ「裏」での党内事件放置をやめ、心からの「真実」を吐露し、潔く和解へと向かうべきです。それは決して後ろ向きの総括ではありません。非共産党左翼や良心的人士と我々党員とが末端レベルで連帯し、新自由主義と軍国化に立ち向かうための貴重な礎となるでしょう。
 実は日本国内の新左翼勢力(トロツキー系を含む)においても実質的な「真実と和解委員会」が機能し始めています。元中核派反戦自衛官の小西誠氏が著わした『検証内ゲバ』を読めばわかります。われわれ共産党員は、過去を検証する態度において新左翼勢力に負けていていいのでしょうか?

 繰り返し提案します。党内に「真実と和解委員会」を設け、WEBや討論誌上で過去を検証すること。これは党創立80周年にあたっての偉大な記念事業となるでしょう。党中央にその気がないのなら、私がやります(^^;