北朝鮮問題に関して、最近報道されない2点を挙げ問題提起としたい。
1)金聖愛、金平一母子の動向
金日成の死後、彼等の動向は全く報道されない。周知のように、金聖愛は金正日にとって継母であり、金正日にとっては邪魔な存在であった。彼女は、金日成の死の直前にカータ元米大統領夫妻と会見し、夫の死の直後にその葬儀に参列したのを最後に、以後公式の場に姿を現していない。息子(即ち金正日の異母弟)の金平一も消息は不明である。
彼等は粛清されたとも考えられるが、亡父との関係を考えれば金正日とておいそれと処刑する訳にも行かず、軟禁されていると考えるのが妥当であろう。
私が彼等の動向を問題にするのは、「ポスト金正日」という視点からである。東欧に比して市民社会の成熟の遅れた北朝鮮では、東欧型の「複数政党制による民主化」は期待薄である。むしろ「ソ連共産党におけるフルシチョフによるベリヤ追放とスターリン否定」「中国共産党におけるトウ小平による4人組追放と文革否定」「日本共産党における宮本顕治による志田ら旧徳田派追放と50年軍事路線否定」に見られたような、「宮廷革命」の方が現実的である。
そもそも北朝鮮との国交回復や、賠償経済協力(それ自体は当然のことであるのに)を直ちに追求すべきか問題にされるのは、交渉相手が金正日政権だからである。他国の民を拉致するような政権は、自国の民に対しても飢餓と強制収容所を押付けているのである。よってこのような政権に経済協力したところで、却ってかくの如き反国民的政権を延命させるだけで、日朝両国国民に対しては害毒しかもたらさないのである。だからといって、「ポスト金正日政権としてのいわゆる野党、党内反対派的存在が現在の北朝鮮には表向き見当らない」のが最大の難点なのである。
しかし金正日は正規の党大会を経て国家元首に就任した訳ではない。手続き上からも、政権の正当性は何等存在しない訳であり、いわば「政権を僭称しているに過ぎない」のである。
我々はこのような「反国民的政権を打倒する北朝鮮国民の闘い」を支援することと、「北朝鮮国民への経済協力、賠償、国交回復」を統一的に追求していかねばならないのである。経済協力、賠償は北朝鮮国民を代表する資格のない金正日一派に対してではなく、北朝鮮国民に対して行われなければならないのである。
以上より、小生は「北朝鮮のフルシチョフ、トウ小平、宮本顕治」としての役割を金平一に期待したい。「金正日からは当然の如く嫌われ外国大使など閑職に置かれていたが、その分外国を知っている」「金正日よりは冷静沈着な性格で人望もある」等の人物評を読んだ記憶がある。
2)オウムとの関係
オウムの毒ガス技術、資金源については、北朝鮮並びにロシアマフィアの存在が以前よりいわれていた。そして、「オウムの教理も北朝鮮の主体思想が下敷きになった」ともいわれていた。
旧ソ連の崩壊と共に失職した贋ドル技術者達が北朝鮮に流れ込んだともいわれる。そして北朝鮮外交官が、「贋ドル使用、麻薬密売」で国外退去させられた事実もある。
オウムの資金源に、こうした北朝鮮麻薬、贋ドルが充てられていた可能性は否定できない。しかもそれは決して過去のことではなく、現在尚オウムが活動し続けているのを見れば、現在も関係が続いているかも知れないのである。