8月28日朝日国際面は、社説や天声人語の論調とはことなり、北朝鮮に対して、客観的な公正な検証報道である。今までの、日米安保・世論にこびたものから、一線をかくしたものといえる。編集委員・波左場清氏の見識、および氏を起用する朝日の良識が伺える。
「イラク戦争の教訓」を強調する北朝鮮の内実を、冷静に伝え、分析している視点はこれまでの朝日では、記憶にない。有事法案成立のときにも、民主党の修正法案を擁護し、北朝鮮の脅威を煽り、法案の成立に加担した社説であった。
根っこには米国ありきの論調が垣間見える朝日だが、さすがに、米国の暴虐性が露になった昨今は、その論調もやわらいでいる。いいことであるが、真っ先に先見性をもつべきジャーナリズムが、現実に追い越されているようでは情けない。
思えば、米軍のイラク攻撃を真っ向から批判した良識を示したのは、北朝鮮とシリアであった。米国に「悪の枢軸」と名指しされ、狙いをつけられれば、たちまちイラクの運命が予測されるこのとき、米国の覇権に鋭く、反論した勇気に私は声援をおくったものである。新聞の小さな小さな記事であったが。
そうした正義の声に対して、米国は、アフガンに続くイラクを見せしめに、無残な破壊と脅威をみせつけた。さらに小型核なるものの開発、米国発の核拡散へと人類破滅街道へまっしぐらである。
米国のイラクへの更なる無法、イラク民衆の命をかけた抵抗が、無残にふみつぶされるなか、北朝鮮の核抑止戦略が浮上した。
--米国が北朝鮮と同じく「悪の枢軸」と呼ぶイラクを攻撃し「体制転覆」を正当化するのをみて、北朝鮮外務省は4月6日、「国際世論も国連憲章もイラク攻撃を防げないー」と声明を発表。さらに、6月に入り、「我われにも核抑止力を備える権利がある」と公言。
北朝鮮の核開発疑惑は冷戦の終結とともに浮上。同じ社会主義陣営にあった旧ソ連の崩壊と、改革・開放を進める中国の「変質」で、北朝鮮が孤立化していく。それまで中・ソとの「友好協力総合援助条約」で事実上、「核の傘」にはいっていた北朝鮮は、冷戦終結後、ソ連の解体(91年)、また「中韓国交樹立」((92年)で、その友好性を喪失。
こうした北東アジアの現実に照らせば、核保有国の米・中・露はもとより「米国の傘」にある日韓両国に対し、北朝鮮だけが「核の傘」の外である。
先日の6者協議で、日米韓は、北朝鮮に、核開発計画の「検証可能で、完全活不可逆的な形での破棄」を要求。これに対して、北朝鮮は「核だけでなく、他の軍事力についても武装解除させようとの下心がある」と激しく反発。
(イラクとおなじ、手足をもぎとったうえで、自由に料理してやろうという魂胆であるか。核はみんながもつか、一斉にもたぬかである。それでこそ、核抑止力となるのであろう。しかも、もっとも持つのにふさわしくない米国・イスラエルが、最も多くの大量破壊兵器・核をもている。)
みなさんは、北朝鮮を、日本あるいは親日派の他国におきかえてみてはどうでしょうか。とくに、北朝鮮憎しの方々は、こうした冷戦下の史実、北東アジアの力関係も検証した上で、北朝鮮バッシングしてみてください。
アフガン、パレスチナ、イラク対米国の関係も、すべて、こうした、米国戦略の一環です。野蛮な国だの、きちがいだの、以前の物理的戦略下に組み込まれた、小国の像が明確になるとおもいます。
北朝鮮が現在「休戦状態」であったこと、私は、初めてしりました。戦前も戦後もなく、ただただ、休戦期間であったなんてことを、メディアは、伝えてきたのでしょうか。そういえば、中国のかたたちの戦後補償はききますが、朝鮮の方たちのそうしたものは、いっさい、しりません。
58年、日本は戦争しなかったといばり、その実、朝鮮戦争には、何千人という兵士を内密に送り、朝鮮特需を堪能し、経済大国になりました。北東アジアとの外交は、米国の核に守られながら、ODAとやらの戦費=テロ掃討費用を拠出し、米国に戦争ゲームを思う存分やらせ、ネオコンの土壌をしも支えしてきたのです。
北朝鮮が、今現在、軍事最優先なのは、当然のことでしょう。米国が桁違いの軍時優先とおなじように。アメリカほどの軍事力がない小国が、未曾有の狂気に対処せねばならないとき、能力以上に構えねばならないのもまた、当然のことです。国民の総意をまとめるのに、「天皇の赤子となってーー」と、狂気した日本国民とよく似ていると批判してみても、それは、天につばする行為です。
15%の国民が飢えて苦しむ状況を、おせっかいに批判する人が多いですが、日本の戦時と比較したらどうでしょうか。しかも、米国にくらべれば、その戦力たるや、像と蟻ほどの違い、その巨像に挑もうとする蟻んこを、よってたかって、絶対安全圏のなかから、いびりぬく。これが、人間のやることですか。
おりしも、キュウバ危機で、ソ連不信を深めた62年末、「全人民武装化」「全国土要塞化」など「4大軍事路線」を決定。その後、国家指導理念の「主体思想」の中で、「国防における自衛」を「政治の自主」「経済の自立」とともに、重要な柱と位置づけた北朝鮮。
経済が破綻状況にあるなか、金正日総書紀は「核抑止力」を公言する中で、その目的について「将来、通常兵器を縮小し、人的資源と資金を経済建設と人民生活にふりむけるためと」効率のメリットにもふれている。
イラクのフセイン氏も北朝鮮の金正日氏も、それぞれの事情のもとで、悪戦苦闘しているのは、日本の小泉さんとかわらないでしょう。かれらは、米国にたよらないぶん、敵視されているぶん、何千倍の苦労かと推察されます。
わたしたちは、縦糸、横糸、斜め糸からなりたつ、国際関係をきっちりと、公正な感覚でとらえなおしましょう。
メディアの北朝鮮報道の偏向ぶりを、そろそろ、検証してもいいでしょう。救う会と右翼の方々のキャンペーンは、8悪がた、成功し、日本は、立派な軍事国家になりました。これからは、本物の左翼の出番です。民主主義の日本ですから、拮抗する言説が自然ですよね。巷では、99%の右翼勝ちなのですから、さざ波では、遠慮または、転向していただきたいものです。そうでなければ、バランスがとれません。