「さざ波通信」に掲載されてから半年以上経過しますが。来年早々にも総選挙が予想されますので、この問題について批判したいと思います。
1)はじめに記事の形体について。
インタビュー形式になっていますが、HT氏というのは誰ですか。氏名を明らかにしないのであれば、立場をはっきりさせるべきです。党歴何年なんていうのはあまり意味をなしません。編集部の中でどんな立場なのかが解らなければ、単なる一個人の見解なのか、編集部としての主張なのかも解りません。もし質問に答える形式を取りたいならQ&Aの形式を取るべきです。まずこの記事の作り方からして意図が良く解りません。
2)この膨大な論文は、昨年の7月ころからの暫定政権構想についての批判です。対して中央のまとまった文章としては不破委員長の8月の緊急インタビューと9月の3中総がありますが、中央の正式な見解として3中総の報告にある「日本共産党の政権論について」を基準にインタビュアー氏とHT氏の見解を検証してみましょう。
3)まず両氏は(1、不破政権論はなぜ破綻したか)という前提で会話を始めます。
不破委員長があの政権論を打ち上げてから2、3ヵ月ですでにその破綻は明白になったと言うべきでしょうね。3中総などでは、この政権論を掲げて次の総選挙を闘うとまで言われていましたが、そのようなことがもはやまったく不可能なのは誰の目にも明らかです。中央委員会総会で大々的に確認された方針がこれほど短期間に破綻した、
3中総での分析はどうなっているでしょうか。
総選挙がつくりだした結果が、民主連合政府をつくる条件はまだないが、自民党が衆議院でも多数を失い、野党が協力すれば野党政権が実現しうるという過渡的状況となる可能性がおおいにあります。・・中略・・そのときの対応として、自民党の政権たらい回しを許さず、暫定政権という政局打開の政権を実現するために、党として積極的に協議に参加する用意がある、このことも私たちは、総選挙にむけて国民に公然とあきらかにして、選挙戦をたたかいます。
「○○党とくっついて政権をとるために選挙にのぞむ」という具体的な政権構想ならHT氏の言い分も解ります。しかし3中総は「政権に対する態度」を明らかにしたのですから言ってることがすれ違っています。「何」が破綻したのかという問題です。HT氏はすぐあとで、<おそらく念頭にあったのは民主党と自由党です>とおっしゃっていますが、3中総ではそのような指摘はありません。そういう「煮詰まった政権構想」を提示したわけではないのです。明らかにHT氏の読み違いでしょう。
4)次ぎに「破綻」した理由を
不破委員長の政権論によれば、その展望する暫定政権は部分的であれ自民党政治の枠組みを進歩的な方向で突き崩すものでなければなりませんが、現在のところ、実際に政権を狙える力量を持ち、かつ、自民党の枠組みを進歩的な方向で突き崩すような政策ないし綱領を持った政党など、存在しないからです。
としています。これも3中総を見てみましょう。
総選挙の結果にしめされた国民の切実な要望にそって、国民生活や民主主義にかかわる重大な問題で、自民党政治を部分的にせよ打破する方向に一歩ふみだすという客観的な条件が野党間に生まれること、そしてその条件にそくして共同して政権をつくる合意が野党間につくられることです。
3中総ではこれが暫定政権のための第一の条件として上げられています。
表現が微妙に違うことにお気づきと思います。不破さんも3中総も「進歩的」などとは言っていないのです。HT氏自らが「進歩的」でなければならないと曲解して、それは無理だと批判するのは自縄自縛の行為です。そしてHT氏は<政策ないし綱領>と表現されていますが、この2つをごっちゃにするのはとんでもない話しです。政権を組もうとする他党の綱領が「進歩的」か否かはこの問題では全く考慮する必要はないと思います。政策の面で自民党政治を「部分的にせよ打開する方向に一歩踏みだす」共闘が生まれるかどうかとうことが大切なのです。実際の政治の場面では、例えば年金改悪た議員定数の問題で野党共闘が実現しているではないですか。それをどうやってもう一歩前進させるかとう展望が語られたのがその「不破政権論」です。<当面する政策においてすら、共産党とそれ以外の主要な議会内政党とは一致していないのです。>という指摘は事実に反します。
5)他党については自由党と民主党が<自由主義的な政策を掲げ、いっそうの民営化や規制緩和、市場かなどを目指しています>として<民主党や自由党のような新自由主義政党が「成熟」すればするほどますます共産党の政策的方向性との対立性を深めるのです。>と決め付けます。そして、<社民党も公明党も、民主党や自由党に比べれば、都市および農村の庶民階層や貧しい階層、すなわち、新自由主義政策によって不利益をこうむり、相対的に平和主義的な階層に依拠している度合いの強い政党です。・・中略・・しかしながら、両政党とも、安保体制を容認しており、現在の主要な流れ(新自由主義+日本の帝国主義化政策)に徹底して抗するという姿勢はまったく持っていません。>と分析します。これについては3中総の次の言葉を贈りたいと思います。
そのさい一部にある反共主義を優先させる「排除の論理」を克服することも大切になってくるでしょう。
不一致点は横において、当面する緊急課題で大同団結するという道理ある共闘の論理にたつということが大事になってきます。
そして「不破政権論」が大会決議の
今日の“総自民党化”という政治状況のもとでも、さまざまな部分的一致点が、他党との関係で生まれることがありうる。また、悪政と国民との矛盾が深まるなかで、“総自民党化”勢力の内部にも矛盾や亀裂が生じることもありうることである。そういう条件が生まれたときには、わが党は、国民の利益にそって国会を前むきに動かすために、積極的、建設的な努力をはらう。
に沿っていることを指摘します。さらに綱領に示された統一戦線の考え方の基本である
当面のさしせまった任務にもとづく民主勢力と広範な人民の共同、団結を、世界観や歴史観の相違を理由としてこばんだりさまたげたりすることは、祖国と人民の解放の根本的な利益をそこなうものである。
を思い起こして欲しいと思います。
あとの<安保凍結への批判>や<暫定連合政権>への批判はまた少し時間を頂きます。簡単に言えば安保の問題はHT氏の勘違いです。暫定連合政権を提唱すべきかどうかというのは戦略の問題として首肯ける点もありますが、私は中央の方針の方が正しいと思います。
またその後の<不破政権論の背景>については<国民主義>とか<機械的段階論>という分析がされていますが、そうした「HT氏の言葉」で語られても「そいう考えもありますね」としか言えません。本気で背景を分析するなら「共産党自身が語った言葉」で解析してかないとだめでしょうね。