日本共産党の不破哲三委員長は一九九二年二月二十八日、国会内で記者会見し、「労働基準法の抜本的改正についての提案」を発表しました。荒堀広常任幹部会委員が同席しました。「提案」は次の通りです。
過労死。人間らしく生き家族の幸せのために働いているはずが、ある日突然帰らぬ人に残された家族はなんと無念なことでしょう。長時間・過密労働で、働き盛りの労働者の二人に一人が過労死の不安におびえています。ある銀行員の妻は、「私は過労死相談室の電話番号を控えるようになった。銀行よ、夫を殺すな」と新聞への投書で訴えています。こんな国は、世界のどこにもありません。日本の労働者は、一年に平均二千数十時間、旧西ドイツやフランスよりおよそ五百時間近くも長く働かされています。
欧米では、法定の労働時間も八〇年代半ばには週四十時間が主流になりました。ところが日本では、一九四七年制定の労働基準法で四十八時間とされたあと、ようやく四十年後の八七年の「改正」で四十時間が法文化されましたが、実施は先送りされ、九一年度から四十四時間になったばかりです。しかも、労働基準法に残業の上限規制がないために、長時間の残業が横行し、四十四時間というこの法定労働時間は、ことばだけ。週五十五時間が当たり前という職場が少なくありません。
年次有給休暇も、欧米では法律の規定も三週から五週が普通で、労働協約では四週から六週、長いバカンスを楽しんでいますが、日本では基準法の規定はようやく最低十日(三百人以下の事業所は八日)になったばかりです。
世界の時短の流れから、日本だけが取り残されてしまいました。
これにくわえ、自動車工場などでは、作業中はトイレどころか汗もふけない秒単位の労働を強いられています。諸外国にその類をみない超過密労働です。欧米の労働者・労働組合からは、「あらゆるゆとりの吸収による労働強度の増加」「エラーを許さず、ほとんど息抜きの余裕のない生産システム」と批判されています。この過密労働は、下請けの労働者にいっそうひどい形でもちこまれています。
この問題では、国の政治が重大な責任をおっています。自民党政府は、国際的な労働基準となるILO(国際労働機関)の労働時間、休日・休暇関係の条約を何ひとつ批准していません。一日八時間労働と残業の上限を定めることをもとめた七十三年も昔のILO第一号条約さえ批准していないのです。
また財界は、日本の賃金は世界最高水準だと宣伝しますが、実際にその国でどれだけの商品を買えるかという購買力平価で換算すると、実労働時間当たり賃金はアメリカや旧西ドイツの三分の二にすぎません。
長時間・過密労働と低賃金を土台とした日本の大企業の世界市場への進出は、世界中から「共通のルールがない」「不公正貿易」という非難を浴びています。
労働基準法は、「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」とした「憲法第二五条」にもとづき、第一条で「労働条件は、労働者が人たるに値する生活を営むための必要を充たすべきものでなければならない」と定めています。過労死、一日二時間半しかない自由時間、深夜・不規則勤務、家族そろっての夕食は週二~三回、単身赴任――世界第二位の経済力にふさわしくないどころか、「人たるに値する生活」からさえほどとおいのが、日本の労働者の状態です。
制定後四十五年間、基本的には手つかずのままで世界から大きくたちおくれた労働基準法を抜本的に改正することは、緊急の課題になっています。
日本共産党は、これまでも労働時間の短縮、残業規制など、労働基準法の改正を要求してたたかい、最近の国会でも、昨年六月の参院決算委員会で上田副委員長が、今年二月の衆院予算委員会で不破委員長が、サービス残業や長時間労働、超過密労働の実態を取り上げ、政府に労働基準法の抜本的改正をせまってきました。日本共産党は、人間らしい生活を営むための最低労働条件をすべての労働者に保障するために、あらためて労働基準法と関係法の抜本的改正を提案するとともに、すべての労働者とその家族、すべての労働組合に、広範な討論をこころからよびかけます。
一日拘束八時間、完全週休二日・週四十時間労働制をただちに実現します。
水を飲んだりトイレにいったりする生理的余裕時間、疲労をいや休息時間、準備や後かたづけ時間、業務上必然的に生じる手待ち時間などが実労働時間にふくまれるのは当然です。欧米では、午前、午後の十分から十五分の休憩時間や「主たる活動に不可分、不「可欠な活動」は実労働時間にふくまれています。労働時間が五時間以上の場合には、少なくとも一時間の食事休憩時間の保障が必要です。労基法制定時の国会で、政府・与党側は「理想としては将来拘東八時間制に進むべきものと思うが、わが国産業の現状をもってすれば、最低基準としては、実働八時間制が適当」と説明していました。それから四十五年たっても、いまだに改善されていません。とくに、住宅事情が悪くなり、通勤時間が長くなっている今日の状況では、拘束時間を規制することがいよいよ切実になっています。食事休憩時間をふくめ拘束八時間労働が当たり前の社会にし、ひきつづき一日七時間労働制をめざします。労働時間の短縮にあたって賃金を切り下げてはならないことは、いうまでもありません。
人間の生活は、生理的にも社会的にも一日二十四時間のサイクルでおこなわれています。たとえ総労働時間を短縮しても、一日単位の労働時間規制をくずし延長するなら、体力と健康の維持、家族とのだんらん、文化的生活や社会的活動のための自由な時間の確保という点から、重大な結果をまねきます。
一日の所定労働時間を変形して残業料を節約することをねらった一ヶ月・三ヶ月単位の変形労働時間制は、一日八時間労働制の原則を破壊するもので、これを無制限にひろげるやり方は、ただちに廃止するようにしなければなりません。変形労働制は、公益上の必要がある場合を除き、週所定四十時間の範囲で、一日所定一時間の延長を限度とします。
フレックスタイム制や裁量労働制の導入は労働者の要求によるものとし、所定総労働時間の上限を、一日十時間、四週百六十時間に法定する必要があります。
欧米諸国の週休日は年間百四日ですが、日本は八十五日しかありません。年間総労働時間の短縮のためにも、完全週休二日制の実施は急務です。公益上や遊園地など事業の性格上やむをえない場合を除き、週休日を土日に統一することは、家庭生活、社会生活の充実のためにも重要です。欧米では日曜労働はきびしく規制され、日曜労働の割増率が二〇〇%という労働協約さえあります。日本は、毎週一回か四週で四日の休日を定めているだけです。休日の振り替えは原則として禁止されなければなりません。
残業時間の上限を一日二時間、月二十時間、年百二十時間と法定し、残業割増率を五〇%、深夜・休日は一〇〇%に引き上げます。労働者個人に残業拒否の自由を保障し、サービス残業は厳禁します。
日本の残業時間は年間二百五十四時間で、旧西ドイツより百六十時間も長いのです(一九八九年)。フランスでは残業時間の統計自体がありませんが、八六年の調査では年に三十五時間弱でした。日本の自動車産業の男性は、平均して実に四百十九時間も残業しています(九〇年)。
残業は、一時的、例外的なものとしなければ、労働時間法定の意味がありません。そのためには、残業の上限を法律によってきめる必要があります。多くの国では、一日二時間、年三十日(西ドイツ)、一日総労働時間十時間、年百三十時間(フランス)などと、残業時間は法律できめられています。わが国の場合は、労基法で残業には労使協定が必要となっていますが、法律による上限規制がないため長時間残業が野放しになっています。また、本人の残業拒否権の保障が大切です。
割増率の安さが残業を常態化しています。多くの欧米諸国では、法律や労働協約での残業割増率は五〇%、深夜・休日割増率は一〇0%です。一九四七年の労基法制定時にも五〇%という意見がありましたが、戦後復興期という当時の経済状況なども考慮して二五%におさえられたのです。世界第二位の「経済大国」になったいま、ただちに引き上げることは当然です。
「セブンイレブン」(朝七時出社、夜十一時退社)の異名を取る金融・保険業の年間総労働時間が、統計上は千八百五十三時間(九〇年)で全産業中もっとも短いことの秘密はサービス残業にあります。労働基準局の立ち入り調査で、都内の金融機関八十店のうち二十八店でサービス残業ただ働き残業が摘発されました。労働省の委託調査でも、残業割増賃金が完全には支払われていない労働者が三分の一もいます。サービス残業は、欧米では想像もできないことです。過労死を取材にきたアメリカの記者は、サービス残業が理解できず、「ガードマンが、会社の入り口で帰らせないようにしているのか?」ときいたそうです。逆に西ドイツでは、労働者が「勝手に」労働をしないよう、休日には事業所にかぎをかける義務があります。サービス残業をくわえると、日本人はドイツ人より年に七百時間も多く働いていると推計されています。労働時間の正確な把握を企業に義務づけ、明白な企業犯罪の横行をきびしく取り締まる必要があります。
深夜労働をきびしく制限し、徹夜労働をふくむ交代制労働の規制をつよめます。
深夜労働や深夜におよぶ交代制労働は、人間の生理的リズムに反し、疲労を蓄積し健康を害します。家族や友人、地域社会とのすれ違いという点でも、非人間的労働形態です。機械設備などを効率よく使おうとして、労働者に非人間的労働を強いることは許されません。日本の大企業では、昼勤と夜勤のあいだに二時間から三時間のあきをおき、最初から残業・早出を組み込んでの二交代という体制が、ひろくとられています。このため自動車産業などでは、二交代十一時間労働でほぼ二十四時間操業が可能になるという、きわめて非人間的な労働が強要されています。欧米でも最近は、日本企業との競争を理由に深夜におよぶ交代制労働が始まっていますが、そのさいでも休日をふやす、週労働時間をへらす、賃金を上げるなど、さまざまな優遇措置をとっています。
徹夜労働をふくむ交代制の採用については、やむをえない場合にかぎり、労働基準監督署の許可制にするなど、規制をつとめます。深夜労働の範囲規定を、午後十時から午前七時までに拡張します。生産技術上、公益上やむをえない場合でも、労働時間や休憩・休息時間、仮眠時間、交代の型とローテーション、休日・休暇など、十分な配慮を規定します。深夜・交代制労働者の残業、女性、年少者の深夜交代制労働は、原則として禁止しなければなりません。
年次有給休暇を最低二十日とし、一定日数の連続取得と完全消化を保障します。
フランスのバカンス統計には三泊以下はふくまれず、平均二十九泊、三泊以下はバカンスとは考えられていません。日本は平均で二泊です。ILO一三二号条約は最低三労働週週休一日で十八日)の年次有給休暇と、うち二労働週の連続取得を定めていますが、現行労基法では最低十日間です。そのわずかな有休でさえ取得率は五〇%です。有給休暇の連続取得と完全消化を企業に義務づけます。
ILO条約はまた、傷病や災害で労働できなかった期間と公的・慣習的休日は年休に数えてはならないとしています。したがって、傷病や家族の看護の心配によって年休を残さないよう、有給の傷病・看護休暇や一時間単位の取得も必要です。労働者に自由な休息時間を保障するという年次有給休暇制度のほんらいの趣旨から、出勤率による取得制限をなくす、繰り越しは一年につき一週間に限定し買い上げは禁止する、使用者の時季変更権をきびしく制限する、有休取得者への不利益扱いに罰則規定をもうけるなどの措置が重要です。
ベルトコンベヤー、コンピューター労働などを人間的労働にふさわしいものにするため、作業基準に余裕時間を組み込み、標準作業時間について職場の労働者の合意を義務づけます。
日本のベルトコンベヤー労働の標準作業時間からは、トイレなどの生理的欲求のための時間、機械の故障や保全と調整のための時間、材料待ちの時間などによる不可避的おくれ時間が、ほとんど削られています。過密労働を規制し、人間的な労働にするためには、標準作業時間を、少なくともこれらの不可避的おくれ時間をふくんだものにする必要があります。欧米では、これらの余裕時間を組み込むのが当然のこととされ、しかも労使合意を必要としています。標準作業時間が人間的労働にふさわしいものかどうかをきめるのは、現場の労働者です。標準作業時間をきめるさい、ヨーロッパでは組合とは別に大衆的に選出された工場委員会などで協定していますが、日本の場合はどういう方法でおこなうか、実際に即した工夫が必要です。
過密労働規制のため、一時間について五分以上の個人的休息時間を保障します。また、食事休憩時間をはさむ前後の作業時間中に、二十分以上のいっせいの休息時間が保障される必要があります。
コンピューター、ワープロ作業など、VDT(画像表示装置)を見ながらの連続高速打鍵作業は、慢性的疲労をもたらし、職業病が多発しています。産業衛生学会による「一日四時間以内、一連続五十分につき作業休止十分」などの規制勧告を、法にとりいれます。
生産計画にともなう要員配置は、休日・休暇、休憩・休息時間を保障するのに十分なものでなければならないこととします。
現在、大企業の生産・要員計画は、約九五%の出勤率と過密労働を前提につくられています。このため、仲間に気兼ねして休暇がとれない、週休二日は名ばかりの休日出勤、汗もふけない過密労働、休憩時間中も仕事――などの事態が常態化し、職場からは、「仕事がきつくなるなら週休二日なんかいらない」という極端な声さえあがっています。欧米では八〇%強の出勤率を前提に計画をたてるのが普通です。大企業の生産計画にともなう要員配置は、休日・休暇、休憩・休息時間を保障するのに十分なものでなければならないこととし、また計画実施中の労働者の異議申立権を保障する必要があります。
労災・職業病を防止し、人間らしい職場環境を保障します。
政府統計によれば、労働災害による死亡者は年間二千五百五十人と増加傾向にあるのに、休業四日以上の死傷者数は二十一万百八人と減少をつづけているとされています。全災害中の軽傷の比率が低いのも日本の特徴で、これは、企業の労災隠しの横行を推測させます。労災隠しをなくし、労災・職業病を防止するために、労働安全衛生法を改正し、常時三十人以上の労働者を使用するすべての事業場に、労使代表による安全衛生委員会の設置と、安全衛生の見地からの労働過程、労働内容の報告、安全衛生委員の巡視と決定事項の履行の義務づけが必要です。急迫した危険のある場合の労働者の避難権の確立、労働環境の整備、安全衛生教育の強化、産業医制度の充実と権限の強化、健康診断制度の充実をはじめ、企業による労働者の健康保持増進が大切です。
労災補償を大幅に改善します。
労災保険法を改正し、「人たるに値する生活」を補償することを基本としたものにします。休業補償を六〇%から一〇〇%へ引き上げ、障害・遺族補償を五〇%引き上げます。労災・職業病の認定にあたっては、企業に挙証義務を課し、過労死認定基準を緩和することが重要です。
全国一律最低賃金制を確立し、労働者全体の賃金水準の向上をはかります。
基準賃金が安く残業割増率が低いから、残業させるほどもうかるのです。長時間労働と低賃金は一体です。「残業なしでも生活できる賃金を」要求するのは当然です。ところが、労働者全体の賃金の底上げの役割を果たすべき最低賃金制が、逆に低賃金政策としての役割を担わされています。
現行最低賃金制は、九一年度の全国平均で日額四千三百十九円にすぎず、月に二十二日働いても九万五千円にしかなりません。フランスの法定最低賃金は、平均賃金の六割、オーストラリアでは七割なのに、日本はなんと三割です。これでは「人たるに値する生活を営む」ことはできませんし、低賃金を合法化しているようなものです。労働組合組織率が二四・五%と低く、外国と違って産業別の労働協約がつよい社会的規制力をもたない日本では、とりわけ最低賃金制の充実が重要です。法的拘束力をもった全国一律最低賃金制を確立することが急務です。
同一労働同一賃金の原則を明記します。
パートや臨時職員は、正規職員と同じ仕事をしても、賃金には大きな格差がつけられています。正規職員のあいだにも、能力給など、客観的基準の不明りょうな差別賃金がもちこまれています。同一の労働には同一の賃金を保障し、また、労働者の専門性と熟練度を正当に評価した賃金が必要です。
賃金をはじめ採用、昇進・昇格における性別による差別の禁止を明記します。
現行労働基準法では、賃金についての男女の差別的取り扱いを禁止しています。しかし男女の賃金格差はフランス八九%、ドイツ七三%にたいして日本は五二%です。とくに昇進・昇格での男女差別が賃金格差の要因となっていますが、企業はその理由を「能力や勤「続年数」とごまかしています。昇進・昇格などの差別の禁止を法律に明記することが必要です。
女性の深夜業を禁止し、看護婦など例外的な場合の深夜勤務は月間所定労働日の三分の一以内、八時間につき二時間の仮眠時間の保障など深夜勤務の労働条件を明記します。
現在、看護婦には月に九日から十一日も夜勤があり、四人に一人が切迫流産し、異常出産の比率も三・七%と日勤者より高くなっています。やむなく深夜勤務につく女性労働者の保護のために、労働条件の改善が急務です。
産前産後休暇は各八週間とし、妊娠中、産後一年間の女性の深夜業・残業・休日労働を禁止します。生理休暇は本人の届け出によるものとし、毎潮時二日間の有給休暇を保障します。
フランスやオーストリアでは十六週間、デンマークでは二十四週間でしかも二週間の父親休暇まであります。母性を保護し、安心して子どもを産める環境を保障することが大切です。
育児時間は一日六十分を九十分とし、有給とします。育児休業制度は有給、原職復帰、代替要員の確保を義務づけます。家族介護のために介護休業制度を確立します。
旧西ドイツでは、子どもが一歳半になるまで育児休業が認められ(九二年一月から三年間に延長)、最初の六ヶ月は月六百約五万円)支給され(それ以降は収入により異なる)、しかも全額国庫負担です。各種保険からの拠出もふくめ、少なからぬ国でなんらかの手当が支給されています。
パート・臨時・派遣労働者などにたいする労働条件の不当な差別を禁止します。
パートタイム労働者は六百七万人をこえ、派遣労働者も増加しています。正規職員と同じ勤務状況でも、賃金・退職金・労働条件など、不当な差別と不安定雇用のもとにおかれています。EC諸国の女子パート労働者の賃金は女子フルタイム労働者の時間当たり賃金の九〇%~一二〇%ですが、日本は八〇%弱です。パート労働者保護法も各国でつくられています。雇用形態別による差別の禁止を明記し、平等待遇を保障するパート労働法の制定が急務です。
労働条件の明示義務を強化するとともに、就業規則の作成・変更には労働者の同意を義務づけます。
現行労働基準法は、採用にあたっての労働条件の明示を義務づけていますが、書面での明示義務は賃金のみです。このため、労働時間、勤務地、職務内容などの重要な労働条件が、事実上企業の自由裁量できめられています。労働条件全体の明示義務が必要です。就業規則の作成、変更も、労働者の同意を必要としないため、労働時配転、定年など重要な労働条件の一方的な切り下げが可能になっています。就業規則は労使が対等の立場で決定するのが、ドイツをはじめ主要国のすう勢です。就業規則の作成、変更、労働条件の重大な変更にあたっては、労働者の同意を義務づけることが重要です。
出向・配転、単身赴任を規制します。
出向・配転・転勤については、本人の事情と希望の聴取、一カ月以上の事前予告を義務づけます。さらに、賃金、労働時間、職務内容勤務地などの労働条件が大幅に変更される場合には、本人の同意を義務づけます。単身赴任には本人と家族の同意を必要とし、やむをえず単身赴任する場合は二年以内とし、経済的、精神的負担軽減のための措置を義務づけることが大切です。
採用差別を禁止し、解雇制限を強化します。
国籍・信条・性別・社会的身分を理由としての採用差別と解雇を禁止します。解雇権の乱用を規制します。ILO一五八号条約は、解雇には「妥当な理由」が必要だとしています。企業の都合による解雇の予告日数を最低三ヶ月前とします。また、予告後、解雇までの期間、次期就業準備のために十日間の有給休暇、またはそれに相当する就業時間内の自由時間取得を保障します。
労働基準監督署と監督官の大幅な充実をはかります。
全国三百七十万におよぶ監督適用事業場にたいして、監督署は三百四十三ヶ所、監督官は全国で二千五百人たらずで、申告があって、も調査にいく時間がないなど、十分な監督ができる体制にはほどとおいのが現状です。一九六〇年に一二・〇%だった監督実施率は、一九九〇年には四・八%にまで落ちています。大きな労働災害が発生すれば所轄の監督官だけでは間にあわないのが実情で、監督官自身が極端な労働強化を強いられています。
労働基準監督署と監督官を大幅にふやします。監督署の設置数と場所、監督官の必要配置数について、すべての事業所を対象にするとともに、労働者の申告をうけやすくし、それに適切な対応をするのに十分な水準を確保することが必要です。あわせて、労働者の申告権などの周知徹底、調査結果を知る権利の確立が大切です。
労基法違反の罰則を強化します。
現行労基法は、もっとも重い罰則でも六ヶ月以下の懲役または十万円以下の罰金です。違反企業名の公表、公共事業受注制限などの社会的制裁を重視するとともに、罰則を強化することが重要です。また残業割増金不払いなどの場合には、裁判所が二倍の金額の支払いを命じることになっていますが、労働基準監督署も命令できるようにするなど、制裁措置を強化します。
日本の多くの中小企業が、大企業の横暴な下請け政策などのため、原材料、単価などの面で経営上特別に困難な状況におかれていることは、ひろく知られていることです。したがって、改正された労働基準法の内容の全面的な実施を、中小企業をふくめて保障してゆくためには、大企業の横暴なしめつけの規制とともに、中小企業にたいする適切な助成措置を講じる必要があります。この点で、労働基準法の抜本的な改正の実施にあたって、必要な措置をとってゆくこととします。
以上の改正事項の実施については、改正法の施行日からとします。