一般投稿欄

もう少し話をしたくなりました。高山様へ

2004/3/30　天邪鬼、６０代以上、画家

　少しのんびりと書きます。
　失業というものは生活する意欲を失わせますね。私が中学生のころ両親の商売が失敗し、七人の子供を抱えながら父は失業しました。それは悲惨な生活で母は米軍の衣類やタバコ、化粧品を売って歩き二人の兄は急な家庭の没落にあって、長兄はアルバイトに追われ、次兄は高校一年生で退学し、私は病気で寝ていました。その下に四人の妹と弟がいます。父はいろいろ仕事を探すが見つかりません。そんなに窮していたのですが、父は次第に無気力になり家の中で掃除ばかりしていました。そんな父の不甲斐ない姿を病臥中の私は悲しい目で見ていました。それから後もどん底の生活を経験してきましたが、この時代に私の情緒性ができたように思います。
　しかし不思議なものでいつしか時が過ぎそんな苦しかった時代でさえ懐かしく思える時代が家族にやってきます。父母とも自営業で何とかやっていけるようになったからです。
　リストラで職場を失った人々は全国にどれほどいるのでしょう。その人たちが希望を失ってひざを抱えている姿を想像するだけで胸が痛みます。横のものを縦にも動かす気力すらなくなるのが失業者の心です。失業病といってもいいと思いますが、失業をすれば必ずそうなります。仕事を探しに行く気力さえ失います。だらしがないとか、思わないでひたすらにその人のことを周りが考えてあげなければ立ち上がれなくなるのです。
　就職よりも、心が病んでも外からは見えないので本人の苦しさはなおさらです。心の病は恐ろしいのですね。だから私はそうなるまで妻をがんばらせるつもりはありません。その点は注意深く見ているつもりです。
　自殺などは精神のバランスが崩れなくてはできるものではありませんね。日本の自殺者が三万を超えるようになった原因がリストラだと新聞に書かれていたが、たった数行のその記事の裏にどれほどの悲惨さがあることでしょうか。ほんとにひどい世の中です。妻の会社では経営責任のある人間が会社倒産前にさっさとやめてしまい、別の子会社の社長に納まっています。食い逃げなんです。そして400人もの従業員が放り出されたのです。私は無抵抗に退職した労働者の不甲斐なさを言いましたが、考えてみれば一人一人の労働者は無力なんですね。団結したときの労働者は無敵ですがばらばらの労働者は虫のように弱いのですね。会社の組合が御用組合ならば相談に行くこともできないで、リストラに応じるしかないのですものね。
　私の妻の場合は個人加盟の合同労組にこっそり入っておかせたのでなにかがあればそこに加盟している労働者が一緒に立ち上がります。会社で孤立していても外に連帯の輪があります。だからまだがんばってられるのです。もしもそんなものを知らなければ太刀打ちできません。
　ところがね、もうその組合に入っていることは明らかになったので、それを知らされた会社の労働組合幹部が「二重加盟だから会社の組合を辞めろ」といってきたのです。これはペテンです。会社側と企んだのは間違いありません。
　ユニオンショップだから会社の労働組合を脱会すれば同時に会社をやめねばならない仕組みなのです。妻の首を切るために労働組合が会社とグルになったのです。
　二重加盟は裁判で認められているからこれは違法な話です。労働者の利益を守るための労働組合が労働者の敵なのです。無知であれば引っかかるところでした。そんな組合だから二重加盟しておかねばもうとっくに放り出されています。労働者と資本家は完全に利害が対立します。労働者の利益はしほんっかの不利益ですし、資本家の利益は労働者の不利益です。その中間はないのですよ。労働者が少しでも会社の側に立てば、終わり、です。
　あなたのお父さんの元の会社もＮ建設もえげつないね。たとえ失業してしまったとしても、腹の底に資本家のえげつなさをぐっとしまいこんでおくことだね。　私の住む都市ではこのところ露天商が非常に増えました。どの街角にも八百屋、果物屋が路上に品物を並べています。きっと、リストラや不況で仕方なくそれらの商売をはじめたものと思います。なんとしても生きていかねばなりません。見栄や格好を構っていられる時代ではなくなったのです。数年前にはどこにでも空き缶が捨てられて、町内会で拾い集めていたのですが、今では「ビン、缶」の日は空き缶の奪いあいです。
　「どっこい、生きてる」
　そのど根性が必要になってきました。
　イラクの人たちはもっと苦しんでいます。ガサの人たちの失業率は7割なんですって。世界中でまじめな普通の人々が苦しめられています。アフガンでは子供たちに栄養が行き渡らないので脳性まひの子供が異常に多いのですって。
　だんだん腹が立ってきました。ボルテージが上がる前にキーから離れます。お父さんにいつもとかわらぬ優しさをあげてください。　きっと、立ち直る日がきます。あせらないようにお伝えください。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　天邪鬼。