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一般投稿欄

―拝啓、高山 優さま―

2004/3/30 愚等虫、40代

 高山さん、初めまして。
 ご投稿を拝読させて頂きました。
 お父様の状況と苦悩、そして、あなたのやさしさが文面から零れてくるようです。

 「リストラ」という名のクビ切りに、多くの中高年が、内心不安を抱きながら、家 族に心配をかけないように、何とか踏ん張っているというのが、私達から上の世代の 多くの者に共通する想いではないかと思います。

 政府は、完全失業率5.2%などと発表しているようですが、私の地域の実感から すれば、実質10%は超えているのではないか、という気がしています。
 調査対象者が、調査週に、一時間でも賃労働をすれば、完全失業者として数字に反 映しないそうです。そうであるなら、実質失業率もきちんと発表すればいいのに、と 私などは考えますが、政府は、そのような数字は公表したくないようです。
 まさか、把握もしていないということはない、と考えたいものですが、本当のとこ ろは判りません。

 お父様は、50歳で、大型二種免許を取られたとのこと。本当に、真面目で頑張り 屋さんですね。そして、あなたも、お父様の求職のために駆け回っていらっしゃるご 様子。それでも、

> 現在も状況は変わらず、家と職安を行ったり来たりの生活を送る父の表情は、 日に日に曇っていき、見るに耐えません。中高年の自殺が増加しているという理由 が、わかってしまうくらい...。

と、書かざるを得ない事実に、言葉もありません。

 私も、かつて、失業者でした。
 今で言う「リストラ」とは、異なりますが、心ならずも、職を失ったという事に関 して言えば、相通じるものがあるのではないか、と思います。
 私は、取りたててできるような特技を持ち合わせておりませんが、この間、僅かな がらですが、失業者にパソコンを教えたり、就職・アルバイト情報を知らせたりして きました。

 そんな中で、私が一番大事なことと感じているのは、まず、相手の話を、よく聞い てあげることだ、と思っています。
 みんなが言うのは、自分に対する「自信の喪失」ということです。
 特に、真面目な中高年の方々は、家族に対する責任というものを、何も言わなくて も、強く感じています。
 一生懸命、求職活動をやっても、うまく行かないとき、どうしても、自分の能力の なさ、自分の非力さばかりを責めるということになりやすく、鬱病や、ひいては、自 殺・自死ということにもなりかねないことは、「小泉不況」と言われる中で、一万人 も自殺者が増え、毎年3万人以上となり、世界一の自殺率という実態を直視すれば、 否定しようがないと思います。
 このような万が一の事態は、もちろん、周りの環境や本人の性格など、いろんな状 況が関わってくるものでしょうから、一概には言えませんが、「決して、本人を責め るようなことを言ってはいけない」という事は言える、と思います。

 私の場合、パソコンを教えるのは、もちろん、技術の習得という意味もあります が、第一には、話を聞いてあげる事の大切さを感じているからです。
 また、パソコンには、仕事だけではなく、いろんな楽しみ方があるということは、 皆さんもご存知の通りです。それと同時に、「自分の能力も、まだまだ、棄てたもの ではない」という気にもなるようです。これは、一石二鳥にも、三鳥にもなり得ま す。

 私は、パソコンを教えながら、コーヒーや、時には、ビールなどを飲みながら、い ろんな話をします。というより、かなりの間、もっぱら聞き役です。リストラされた 事情はもちろん、生い立ちや家族の事など、話されることは、何でも聞きます。
 そのうち、私の方にも質問が回ってきたりします。これもまた、趣味から何から、 いろんな事を聞かれて、困ってしまうこともあります。

 というのは、上にも述べましたように、失業というのは、「個人的」な問題であっ ても、きわめて、「政治的」な問題だからです。相手の方は、これまで、自民党を支 持されていた方や、今でも、小泉さんを支持されている方々も、おられます。
 これは、どうしても、「対立」する事が多くなります。従って、私自身、基本的に は、政治の話は、かなり、打ち解けて、相手の気持ちが、「もう大丈夫」と思えるく らいにしっかりとして来ないうちは、なるべく、しないようにしています。

 よくする話は、スポーツ談議でしょうか。イチローや松井選手など大リーグやサッ カーの話など、いろんな事が話題になります。
 とにかく、自分の状況を見つめすぎて、ゆとりのない感覚になってしまうことが、 一番怖いと思うのです。
 もちろん、厳しい状況に変わりはないのですが、それでも、心理的に少しでも楽に して上げられれば、最悪の事態は、避けられると考えます。
 周りの家族の皆さんは、本当に、大変だと思いますが、できれば、「気長に行きま しょう」という、気持ちを持たれて、接してあげられれば、と思います。

 世間は、花見の季節となりましたが、あまり、賑わう場所には、顔を出したくない と思われるのが、普通だと思います。ですが、人出の多い土日を外すなりして、ご家 族で、お弁当など拵えて、ゆっくり、外に出られてみるのもいいのではないでしょう か。

 引きこもってしまう事は、決して、いいことではありません。
 タダでもできて、気分転換に効用のあるのは、歩くこと(ウォーキング)です。少 し汗をかくくらいが適度だと思いますが、高山さんが、ご一緒に歩かれるのも、いい のではないでしょうか。ストレッチなどもできますし、これまで口に出されなかった 話を、されるかもしれません。

 求職の件は、各地域によって、異なる部分も多いと思いますが、「ハローワーク」 だけでなく、(もちろん、やっておられるとは思いますが)街のミニコミなどにも目 を通され、給与の面など、一致しない点もあるでしょうが、一時的な、バイトでもさ れれば、自分も何らかの役に立っているという実感が沸き、前向きに考えることもで き、自信の回復にも、実際には、思ったより大きな効果があると思います。
 ただし、まったく、自分に合っていないような仕事や、「バイト」とは言え、実態 は、正社員と変わらないというような、極端な仕事は、逆に、ストレスを溜めてしま い、マズイと思います。
 あくまで、お父様が、出来そうだと納得されるものが、よろしいだろうと思いま す。

 バイトの実績が買われて、正社員になられた方もおられます。あくまで、「焦ら ず、やりましょう」という視点で、支えてあげられたら、と思います。

 また、今、共産党は、中高年の能力を活かした企業組合などの運動を支援していま す。
 高山さんの地域で、どのような取り組みをされているかは判りませんが、地区委員 会事務所か地方議員事務所などに連絡され、お尋ねされてもよろしいかと思います。 ただ、取り組みが行われていたとしても、給与は、決して高いものではないとは思い ますが…。

 それから、その際、経済的に逼迫されておられるのでしたら、「生活と健康を守る 会」などとも友好関係ですので、生活保護を申請する事も考えられ、ご相談されては と思います。
 生活保護を受ける事は、何ら恥ではありません。憲法に保証された国民の権利で す。
 これまで、長年、税金を支払い、また、心ならずも失業という事態にある者からさ えも、消費税という税金を支払わせている政府なのですから、タックス・ペイヤーと しては、義務を果たしている以上、権利を主張する事は、当然の事です。
 タクシー業界も不況で、あまりの低賃金に、仕事をされながら、援助を受け取るこ とができた、という記事を、以前、「赤旗」で読んだことがあります。全般的に、 「基準」が厳しくなっているようですが、これも、自治体によってかなり、異なるよ うです。

 余談であるかもしれませんが、つい先日(3月16日)、最高裁は、生活保護費の 使途に関する「学資保険裁判」で、高校進学のための貯蓄を認めた福岡高裁判決(9 8年10月)を支持する判決を下し、勝利判決として確定しました。
 憲法を暮らしに生かすために、14年間もの長い裁判闘争を闘ってこられた中嶋さ んご一家をはじめ、皆さんに、敬意を表しますとともに、喜びを共有したいと思いま す。

 決して追い詰められてはいない、という心のゆとりを持たれ、ご家族の皆さんが支 えてあげてほしいと思います。
 ただ、多くの方々の話から、「頑張って!!」という言葉だけは、禁句とされまし た方がよろしいだろうと、思います。

 高山さんも紹介されておられますように、ネット上でもいろんなサイトで、「リス トラ」問題が、扱われております。
 「リストラ天国」 は、失業を前向きに捉えているホーム・ページです。関連サイトのリンクなども、判り易いです。
 「失業119番」 も、いろんな方のご意見・アイデア・情報を知る事に役に立ちます。

 現在、数百万という失業者・半失業者の方々がおられます。決して、一人ではあり ません。少しずつでも、智慧と力を合わせて、乗り越えていきましょう。

 私が、失業していたとき、デール・カーネギーの「道は開ける」(創元社)という 本をよく読んだものです。
 その中に、「レモンを手に入れたら、レモネードを作れ」という言葉があります。
 レモンは「酸っぱい物・不快なもの」の意味です。マイナスと思える事も、家族の 暖かさ、家族の絆を確認する事ができれば、きっと、プラスになるでしょう。

 高山さんは、カウンセラーということですので、私のような素人の経験などより、 ずっと、いろんな事をご存知のことだろうと思いましたが、何かの足しにでもなれ ば、と思い、拙い投稿ですが、したためさせて頂きました。

 お父様と高山さん、そして、ご家族の皆さまに、笑顔が戻る日を願ってやみませ ん。
 あなたご自身も、お体に気を付けられ、お過ごし下さい。

 敬具。