2004/3/15 democrat、40代、弁護士
また「○○狩り」などと言われるかもしれませんが気になる発言にはコメントさせてもらいます。
>ちなみに私は「死刑制度は野蛮である」と主張する廃止論者は大嫌いです。彼らの 『文明vs野蛮』という思考は、そもそも自分が見下したくて堪らない存在を『野蛮』 と既定〔ママ〕する段階で差別思想そのものであり、且つそのことに彼らが無自覚だ からです。人権と差別を脳内で両立させる彼らの整合性のなさには吐き気がします。 (3月10日 「最初は誰でも初心者」さん)
えらく感情的な発言ですが、もっとよく考えた方がよいでしょうね。そもそも「差
別」そのものが「野蛮」なもの、裏返して言えば、「差別してはならない」という価
値感は高度に「文明」的なものであるという点をお忘れのようです。
奴隷制度や身分差別、あるいは人種差別、さらには女性差別、こうした差別こそは
近代文明が克服しようと努力してきた「野蛮」そのものではないでしょうか? 女性
にブルカの着用を強いたり、性器切除を行ったり、姦通罪に石打刑したりすること、
これらを「野蛮」と言わずに何と言うべきでしょうか?
もちろんこの場合の「文明vs野蛮」とは人道主義(人間の尊厳思想)を物差しとし
たものであって、「見下したくて堪らない」というのとは異なります。「文明vs野蛮」
即「差別思想」というのは、あまりに単純な思考ですね。
死刑制度に関して言えば、火あぶりや石打、十字架、公開処刑といった残虐で見せ
しめ的なやり方が「野蛮」極まりないことは言うまでもないことですが、「人を殺す」
ことそのものが非人道的で野蛮な行為というべきなのです。経済事犯等も含めて年間
数千人も死刑を執行している中国などは、まさに野蛮の極致です。
相手が誰であろうと、およそ人を殺すことは最も非人道的な行為であって、私人の
行為(殺人)であろうが国家の行為(死刑、戦争)であろうが行為自体の非人道性に
は何ら異なるところはありません。
現代の人道主義的価値観は、国家権力の行使のすべてに人道主義を徹底させようと する。その端的な帰結が戦争の違法化と死刑廃止です。この二つはいわば表裏一体と いうべきものであって、それゆえに、先制攻撃ドクトリンを敢行し大量の死刑(しか も公開処刑まで)を容認するブッシュ政権は現代人道主義に対する「野蛮な」敵対者 にほかならないのです。
なお、人道主義的観点だけでなく、「国家による暴力の廃絶」をめざす共産主義者 や無政府主義者にとって、死刑廃止は当然掲げるべき要求でしょう。今回の共産党綱 領改定で、当面する民主的改革の内容に死刑廃止が明記されなかったことに私は強い 不満を持っています。