小泉がピョンャンに行き、拉致問題の一挙解決で年金問題でのミスを取り戻そうとした試みは、成果としては「2家族5人の子供の帰国」だけと言う大失敗に終わった。
そして安否が確認されていない(行方不明とか死亡とされた)被害者10人については、改めて「再調査を行なう」との空約束しか出来なかったと言う。
これはこれまで小泉や阿部晋三が再三応えたように、「北朝鮮との水面下の交渉」などが一切なかったことの証明である。(これはイラク日本人人質事件で、小泉や川口が再三口にした「武装勢力との水面下の交渉」が全くゼロであった事が、後になってクメイシ師によって明らかにされたのと同じである)
拉致家族の1人が決め付けるように言った、「今度の訪朝は子供の使い」とか「貴方にプライドはないのか」との厳しい指摘、そして家族会代表の横田さんの「これは予想された最悪の結果である」との発言は、事の真実、小泉と言う男の限界を改めて露わにし、この2年近くこの男に利用され、使い回されてきた家族会の、押さえに抑えた怒りの爆発である。
小泉とその取り巻きは、子供5人を帰国させたことを大成果として吹聴している、だが考えてみればこれはあの9,17ピョンヤン宣言時、帰国した被害者を北朝鮮との約束の10日又は2週間で一旦帰国させ、そのうえに子供達のリハビリ(経過の説明や言葉、生活風習など)を行なっておれば、子供達の帰国はもう1年半以上前に実現しただろう。
拉致問題を徹底的に政治利用したのは、日本政府、小泉や阿部であって北朝鮮・金正日ではないし、事実、金正日はそれこそ国際正義に反することをやってはいない。
イラクやアフガンで「自由と人権重視の国、アメリカ」が行なっている虐待や拷問と、残された子供達は一切無縁だったし、彼らが北朝鮮にとって言わば敵性言語である英語を学習していたこと、また病気のジェンキンズさんの手厚い看護といい、この事実は北朝鮮が自身の経済的苦難のなかで、如何に彼ら残された家族を重視していたかが分る。
拉致家族に1年8ヶ月も離散家族化を強制したのは、日本政府であり北朝鮮ではない、朝鮮戦争によって1000万もの離散家族を発生させてしまった南北朝鮮民族にとって、離散家族の新たな発生など絶対望まないし、望む訳がないのだ。
この事は私が接している韓国の「女子勤労挺身隊」被害者のハルモニ達の思いでもある、韓国の人々はかつての植民支配国・日本の政治や動向には私たちが考えている以上に敏感であり、拉致問題も公には口にしないが、日朝の交渉をじっと見守っている。
私はこの国における朝鮮・在日問題の全ては、私たち日本人のものだと思っている。
拉致問題で昨年の春、ある拉致被害者のご両親と2時間ばかりお話したことがある、このサイトでも、既に拉致家族の方々は、今も彼らの背後でうごめいている拉致議連やつくる会など、右翼的部分に「洗脳」され、利用されていると投稿した。
そしてそのキーワードは「拉致問題はアメリカによる北朝鮮への武力行使・先制攻撃による金正日体制の破壊しかない、それもこの3年以内の」だった。
ところが極最近、ある在日の人に会った時、拉致家族会の集会で別の家族の方がこれと全く同じことを話したと言う、それは家族会の人々にその思想が徹底的に導入されている事を意味する。
拉致被害家族の背後でうごめく暗黒の陰と闇、やつらの存在を改めて確認する事となったのである。
今、小泉に多大の期待を寄せ信頼せざるを得なかった拉致被害家族の間に、小泉の裏切り、余りにも無力で不甲斐なさ、そのウソとペテンを思い知らされ、これまでギクシャクしながら曲がりなりにも団結を守って来た人々には、深刻で明白な亀裂が走っている。
無事子供達が帰ってきた2家族と、曽我・ジェンキンス親子そして10人といわれる安否不明家族たちとの3分解は避けがたいだろう。
これらは今後より一層深刻になる、25万トンの食糧援助、多額の医療援助など、5人の帰国と引き換えに小泉が金正日に提供したものは、彼らがこれまで要求して来たことと正反対のものであるからだ。
国際社会の厳しい現実の中で、幾多の困難に直面し様々に乗り切って来た金正日と、うわべだけで中味がなくウソとペテンのみで切り回して来た小泉とは、同じ2世政治家と言え、その外交的実力には雲泥の差があった、それが今この局面で表面化したに過ぎない。
自己の政治権力保持の為に、その延命の為に、拉致問題を利用した小泉純一郎とそにしてそれにべったりくっ付き「実力者」となった安倍晋三に、責任の全てはある、決してそれ以外ではない。
今日の無残な、ある意味屈辱的な結果の全ては、小泉等の行いの矛盾が表面化しただけに過ぎない。
この怒りは全ては小泉と安倍に向けなければならない、彼らがその元凶なのだ。
そしてつけ加えることがひとつある、それは5人が「帰国」と報道されている事だ、拉致問題そのものは戦後の日朝関係の歪みの産物であるといえ決して容認される事でも、今回の交渉によって許されるべき事でもない。
だが今度帰国した5人の青年は、これまで拉致問題も両親の出自も知らず、朝鮮人として生き、学び生活して来た、アメリカ的に言うなら生まれも育ちも朝鮮であり、紛れもない朝鮮人なのだ、アメリカで暮らす日本人の2世が肌の色が違うと言えアメリカ人であると同じである。
だから反発を受けるかもしれないが5人は「来日」しただけであり、「帰国」したので決してない。
これは戦前、朝鮮より強制連行された、在日朝鮮・韓国人に例えれば分ることだ、右翼の人たちは「朝鮮人は朝鮮に帰れ」とことあるごとに喚く、しかし、彼らに祖国はない、韓国にも朝鮮にも籍はない、肉親の墓参に祖国の地を踏む事が出来ても、そこは決して祖国ではないのである。
しかし私は危惧している、あの「イラク日本人人質事件」と同じように、この小泉に対する怒りが、無辜の在日の少女を始めとする在日朝鮮人に歪んだ形で向けられることを恐れる。
これまで吹き荒れていた北朝鮮バッシング、民族的排外主義の嵐が再び吹き荒れる事を恐れている。
だが、それを押し止め、正常化するのは、私たち日本人の懸命の闘いであり、日本共産党を始めとする諸勢力の「反転攻勢」の闘いだと思っている。
堅牢を誇ったかに見えた小泉政権に大きなほころびが見えたのだ、そこを突かないでどうする、いま立ち上がらなければ参議院選の勝利などありえない。(と言って共産党は小泉の年金未加入・未納問題についても早々に手を引いて、有事7法案、ACSA協定の衆院可決に協力してしまったがー)