高山優さま。わたしのつまの怒りを共有してくださったことを感動的に受け止めて
います。
人生はエンドレスドラマです。一つの山を越えたと思えば次の山が現れたに底に下
りてまた歩かねばならないのです。私はもうこの年になって落ち着けるかなと思った
がやはりそうはいかない。波乱万丈の生涯になりそうです。いまおきようとしている
ことは小さな問題かもしれません。たかが妻の会社の労働問題といえばそれまでです。
しかしたった一人といえども人間を人間として認めない、しかも労働組合が一人の労
働者を虫けらのように踏みにじろうとするのに対して無抵抗ではいられないのです。
婦人労働者も人間なのだ。
「通知書」
天邪鬼N子殿 xx建設労働組合
執行委員長 大阪太郎
記
貴殿は当労働組合以外の別組織の労働組合に二重加盟
された事実を認められました。使用者との関係で、二
重加盟自体自体が、直ちに違法となるのかについては
議論のあるところですが、労働組合との関係では問題
は別です。貴殿に関する今後の交渉を責任をもって行
うことはできませんし、交渉権の二重委任は組合の統
制秩序を乱す行為ともなります。したがって、貴殿の
二重加盟は、組合規約題20条3項に抵触する行為である
ことを通知し、今後、執行委員会で協議し、対応を検
討することにいたしますので、この旨通知します。
平成16年5月17日
以上が妻の会社の組合執行委員長から来た「通知書」です。内容証明郵便で送られ
てきました。処分決定までに当人の弁護に同じ組合員の2人の弁護が認められるとい
うのが20条3項です。
私は職業柄労働問題は苦手なのです。ユニオンショップか団結権とか言う言葉を聞
いてもぴんと来ません。
人間としてこんなことは許せないと言う判断が基準です。私の妻は20年間ゼネコン
のこの会社の事務員として、怠けることも泣く勤勉に、遅刻や欠勤も一度もしたこと
はないし、命じられた仕事がどんなにハードでも文句一つ言わないで働いてきました。
また同僚とはいさかうことま一度もなく周りの人と仲良く仕事をやってきました。し
かし、経営者の甘さでこの時代の判断を誤り、ここ数年赤字経営からついに破産に等
しい会社更生法の適用の申請に至りました。経営が困難になった1昨年11月にリスト
ラがなされました。妻の部署の仕事がもっとも暇になったので彼女は人員削減の最初
の退職勧奨の対象者になったのでした。
本社からは何度も人事部長がきては妻は支店長室にに呼ばれ退職を迫られました。
会社のために辛抱してくれと泣き落としも受けたのでしたが、一切断ってきました。
その間に妻は胃潰瘍にまでなったのでした。そんな時組合役員に相談をしたのですが
その役員自身が会社に見切りをつけているので、話は聞いても何もする気がなかった
のでした。しかし妻は頑として退職勧奨をはねつけたのでついに会社の実権を握って
いた副社長に呼ばれ、そこで「下請けの会社に入ってくれ」といわれたがまた断りま
した。それで副社長は妻を現場事務所勤務にさせることに決定しやっと首がつながっ
たのです。
こんな妻に対して陰では同僚たちがゴネドクとささやいていましたがその人たちも
リストラで消えていきました。戦うといってもまだ何も大きな声で抵抗したわけでは
なく必至になって職場にしがみついただけのことです。組合の統制なんかまったく乱
すなんてしなかったし、そんな勇気はなかったのです。どちらかといえば内気な女で
すから。
もう一人地方支店事務員のAさんは第一次リストラで解雇されようとしていました。
彼女は関西労働組合に入り団体交渉で解雇を撤回させたのでしたが、当時会社の組合
に相談したところ、一人のためにみんなが犠牲になれないと彼女の解雇など問題にし
なかったのでした。彼女は仕方なく個人加盟の労働組合に入るしか身を守る方法がな
かったのです。妻にしても何時解雇されるかわからないから同じく組合に入りました。
これが言うところの二重加盟です。この1年半の間に1次、二次、三次とリストラ希
望退職が募られ500人の会社が200人になったのですがこの人員整理は会社の提案を組
合が飲んだもので、削減そのものが組合協力で進行したものです。だから退職勧奨を
受ければ組合に相談することもなくほとんど行き、リストラ対象者で自主退職しない
人はわずかいましたが簡単に解雇されました。
今年2月会社更生法申請のため最後のリストラとなり支店事務のAさんについて合
同労組と会社側の団交があり初めて妻も組合員として出席しました。その結果、地方
支店の事務員は支店そのものを閉鎖するので解雇ということだったが、関西合労と会
社の団交で何とか期限を決めて保留にさせました。そこで本社に転勤するなら解雇し
ないということで合意しました。
彼女は家族を地方においてこちらに転勤しなければ解雇される、地方では仕事がな
いので期限ぎりぎりまで悩みました。香会社責任者は彼女をもし残すとすれば事務で
はなく掃除婦として、本社で雇うという条件がつけました。
地方事務員のAさんは悩みに悩んだ末、掃除婦として本社にくるのを断り、解雇さ
れました。
私たちは彼女がこちらに来て一緒に暮らそうといい、掃除婦でも職業に貴賎はない
のだから負けないでと、励まし続けたのですが彼女は屈辱に耐えられなかったのです。
ついにリストラ、首切りに抵抗して残ったのは私の妻一人になりました。しかし会
社が認めたのだからもう安心と、やっと落ち着いた気持ちになったときに、会社の組
合本部からこのような通知が来たのです。すでに人員削減の目標は達せられていると
いうのに今度は労働組合がとどめを刺そうとしているのです。組合の面子か、会社と
ぐるになったかわかりません。
もしもに二重加盟をしなければもうとっくに私の妻は解雇されていたしAさんだっ
て1年半持たなかったのでしょう。
労働組合の本来の目的は組合員の労働者としての権利と生活を守り、経済的要求を
実現させることにあると思います。
会社の労働組合がなすべきことを怠り、会社の言うがままになって、助けを求める
組合員の声を聞かなかったのだから、統制違反だという前に組合本部の反省があって
当たり前なのではないでしょうか。それが孤立無援の中でやっと他の個人加盟の組合
の助けによって失業者にならなくてすんだ一人の労働者を、会社が解雇できないから
といって、組合が除名し、「組合員でないものは会社は採用してはならないという」、
ユニオンショップ制を盾に、組合の名において会社に妻の解雇を要求するのです。
私たち夫婦は最後の貯金をすべてはたいてでも、もしこのようなことになれば告訴
し社会問題にすると決めています。しかし蓄えの少ない私たちにとっておそらくは辛
い、苦しい、長期の戦いになるのだろうと思います。法的な知識はありません。労働
運動なんかまったく知りません。だがこんなことがまかり通ってなるものでしょうか。
勝てるか、負けるかはわかりません。しかし許せないのです。
おそらくこのさざ波通信でも意見が分かれると思います。
「一人はみんなのために、みんなは一人のために」というのが、労働者の合言葉で
しょう。
いまはできるだけ刺激の少ない言葉で妻は委員長に手紙を出した段階です。どのよ
うな意図を委員長が持っているかを見るためです。除名を意図してそのステップを踏
んで何時とわかったときから公然とした闘いになるのでしょう。
高山優様。なんと情けない世の中になったのでしょうか。このような小さな問題が 憲法の問題、イラクの問題と結合されるのだと私は思います。生活背景のない政治論 争など好まないのです。生きる。人間として生きるために戦わねばならないなら戦う、 ただそれだけです。 ではまた