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大歩危様に

2004/05/24 Sekio 50代 教員

 「基本的に健康を害する程の劣化ウランを吸入することは不可能」という政府 筋の見解と、「退役兵士の体調異常や子供の先天性異常が3.5倍、イラク国民の癌 発生率が4~10倍等のデータ」というNGOの報告のどちらを信用されますか?前者 は仮定に基づく推論であり後者は調査に基づくデータだと思うのですが。
 もし、「どのデータが正しいのかは断定出来ない」というのであれば、その影響の 重大さから、少なくとも前者の推論の正しさが疑問の余地なく示されるまでは、劣化 ウラン弾の使用禁止を求めることが筋ではないでしょうか?
 当然ご存知だとは思いますが、α線は電荷があるため透過力が弱いとはいえ、その 電荷のゆえに、体内被曝をすると生命体への毒性は強く、遺伝子を損傷する恐れの強 いことが指摘されています。劣化ウラン弾は着弾すると衝撃と高熱のため粉塵となり 大気中に飛散して体内被曝を引き起こすとされています。また、食物連鎖を通じた生 物濃縮による間接被曝もあり得ます。
 このような可能性があるだけでも、劣化ウラン弾の使用禁止を求めるのは当然です。 まして数々の悲しい被曝の実態が報告されているのであれば、「どちらが正しいのか」 などとは言っておれないはずです。失礼ですが大歩危様の言い方は水俣病が疑われ始 めたころのチッソ側の発言とそっくりです。一見公平なように見えますが、実は真実 に目をふさぐ言い訳のようです。
 放射線被曝は少なければよいと言うものではありません。医療用のレントゲンによ る被曝も厳しく制限されています。自然の放射線もできるだけ避けるべきなのです。 劣化ウランの放射能は低いので無害であるということですが、日本の原子カ規制法規 では環境中に放出することは明確に違法とされ、厳重な管理と安全対策が義務づけら れています。わが国内では禁止されていることがイラクならよいと言えるのでしょう か?
 私は、「敵が迫ってきたとき、自衛隊が陣地を構築するために土地の強制収用を可 能にする法律を可とするのなら」と聞いています。「自衛隊員が危険を冒す」事を聞 いているのではありません。土地建物を強制収容されるのは一般国民です。一般の人 に強制行動をさせるべきでないのなら、土地建物の強制収容もすべきではないのでは ないでしょうか? 
 この問題はそもそも、「敵が迫ってきたら」という問題の立て方に問題があると思 います。
 議論がかみ合わない理由は、あなたが今イラクで起こっている現実の悲劇を悲しむ べきこととして直視することなく、高いところからまるで試験の答案を書くように論 じているところにあると思えます。アメリカの戦略が戦前も戦後も変わっていないこ とを論じるのなら、その戦略によって多くの人々(アメリカ兵を含む)が今この瞬間 にも命を落としていることを悲しみ、このような馬鹿げたことを一刻も早く辞めるよ うにと、声を上げるのが人間でしょう。