大歩危さんの冷静な議論姿勢を陰ながら応援していた者ですが、今回の投稿はさすがに問題多しと言わざるを得ません。特に劣化ウラン弾について私見を述べさせて頂きます。
(2004/05/27 大歩危さん)
理論上はそうだったかもしれませんが、現実は違いました。まして劣化ウラン弾に関しては、諸説紛々としており、科学的な根拠や統計に裏付けられたものではなく、可能性を論及した推論が殆どです。
理論と現実のズレは珍しいことではありません。理論は「ある部分を捨象した現実」を表現しているだけですから、常に不完全なものであり、まるで誤っている場合すらあります。理論と現実のズレは劣化ウランの物理的・化学的毒性についても想定されてしかるべきであり、大歩危さんの議論は極めて恣意的なものです。
ちなみにあなたが信を置く文部科学省の報告ですが、こんなものは「戦場における劣化ウラン弾」について論じる資料として無価値、むしろ有害ですらあります。さつきさんのご紹介を受けて私も閲覧してみましたが、肝心の射爆場である鳥島陸域の調査データは何一つありません。海流的には鳥島よりも上流(!)に位置する久米島海域への影響調査がメインになっています。大歩危さんは自分の目できちんと確認された上で引き合いに出されているのですか?
他にも米軍筋による調査があるらしいですが、これは公害源企業による環境調査以上に客観性の乏しいものですから議論のほかですね。とりあえず理論と現実が矛盾していると言うのであれば、「理論」ではなく現実をこそ重く見るべきであり、これはイラク民衆の目線であると同時に科学的な立場としても何らおかしなことではありません。
(2004/05/27 大歩危さん)
劣化ウラン弾の毒性をことさら、強調する狙いは、イラク人民のためと云うよりも寧ろ例えば反米のための政治的キャンペーンのためになされている色彩が強いと思っています。
どこを見ればそんな「色彩」が確認できるのですか? あなたはかなり濃厚な色眼鏡を掛けておられるようです。スターリニスト左翼はソ連や東欧社会主義国、北朝鮮などの欠陥を指摘されると「反共の政治的キャンペーンに過ぎない」といってこれを退けるわけですが、あなたの議論はそれと全く同じではありませんか。
議論の発端は劣化ウラン弾を通常兵器と見るか、核兵器という範疇で捉えるべきかという点にあったと思いますが、これは核兵器の概念把握に従属する問題ですから無前提にどちらとも言えないとは思います。ただし、高純度ウランの濃縮残滓である劣化ウラン弾が核兵器生産体系の副産物であることは否定できません。核兵器が全面禁止されれば劣化ウラン弾も自ずからその存在基盤を崩壊させるのではないかと思います。もちろん、それ待ちということではなく、核兵器廃絶への多様なアプローチの一つとして劣化ウラン弾批判も位置付けられてしかるべきでしょう(2004/5/29 PM3:00記)