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一般投稿欄

労働組合が労働者の首を切る (2) 高山優様、他。

2004/05/31 天邪鬼 60代以上 画家

 正念場
 その後組合執行委員長から通告書が来て、執行委員会の決定として妻の合同組合と 会社組合の二重加盟を機関決定違反、団結権の否定として非難し、6月13日の組合大 会で会社の労働組合からの除名を提起すると言ってきました。その際2人の組合員の 弁護者を選んでよいということです。妻は一人で行きます。なぜなら頼める人はいな いからです。
 多分多くの組合員の考えは
「自分だけ個人加盟の組合に入って解雇を逃れたのはけしからん。それでは黙ってや めていった人間はどうなるのか」という感情が支配的だそうです。
 ユニオンショップでは組合から除名されたものを会社は解雇しなければならないこ とになっています。このユニオンショップについて後に私は書きたいが今はそんな悠 長なことをいってる場合ではないのです。
 この時代、56歳にもなる婦人労働者を解雇させれば再就職の見込みはありません。 ビルの掃除婦でも、コンビニのレジでも、求人があっても若い人にとられます。たと えいまの給料20万の半分10万でもくれる職場は見つからないのです。働き口そのもの がないのです。会社の組合がリストラと解雇に反対せず、会社を守るほうが大切だと いう立場にたったからには自分の身は自分で守る以外にありません。首を切られない ためには合同労組に入っても仕方がないでしょう。
 機関決定、組合の決定といえども自分の解雇を認める決定になぜ従うことができる のでしょうか。どうして自分の解雇を自分達で決めねばならないのでしょうか。組合 が死ねといえば死なねばならないのでしょうか。
 動労千葉ではこの春24時間のストライキを打ち抜いたのですが、その要求はなんと 定年前の組合員が配置転換を会社に命じられたのに対して、反対するストライキだっ たのです。これが真の労働組合なのです。一人の解雇をも許さないのが労働組合のあ るべき姿ではないのでしょうか。500人の会社のうち300人のリストラを会社と取り決 めするような労働組合をどうして頼れるでしょうか。それが労動組合の名に値するの でしょうか。彼らの決定に従っていれば私たちはすでにブルーテントで暮らしている でしょう。
 自身が会社に残った人間がリストラされた人々に代わって言うべきことがあるので しょうか。しかもリストラ計画は組合の協力のもとに静かに果たされました。である のになぜもう一人私の妻を除名し解雇させねばならないのでしょうか。
 イラク戦争反対もしなければならない。年金問題で政府を追い詰めねばならない。 しかし日本中の労働組合がこのようなユニオンショップにあぐら をかき、果ては労 働者を抑圧する組織になっている状況を許しているかぎりどのような戦いも敗北する でしょう。市民運動の限界はベトナム戦争で経験しています。ここで交わされている 多くの論議も実生活に基盤を置かず、また労働者大衆から離れたものに終始するなら ば結局空理空論になり、いつまでもそうしているならばニヒリズムとアナーキズムに なっていかざるを得ないのです。大衆から離れたところからアナーキズムはあり、ア ナーキズムが簡単に右翼と結合していることをまざまざと見ます。また日本共産党の 変質は長期にわたりいまや救いようがなくなったし、思想的に依拠すべき前衛が見え てこないことも大きな原因です。さざ波通信はその任は果たせる性質のものではあり ません。最近の右翼の跋扈はアなーキスとが右翼に転化した特徴を持っています。左 右の日和見主義は同根なのです。論理の必然として日本共産党は国粋主義に陥ってい くでしょう。その傾向がまたファシズムの温床になろうとしています。
 いま大切なことは何よりも階級的労働運動でしょう。それは勝手の総評など出なく もっと質の高いものでなければなりません。ここに強力な基盤が築けないらばイラク 戦争に反対し切れないばかりでなく、朝鮮戦争、ひいては世界戦争を防ぐことはでき ないでしょう。個々に基盤がないからこそ私たちの声はヒステリックになるのかもし れません。「何でもこいや」と構えるには労働者階級の団結が背景になければならな いのです。
 私自身は画家ですがこの大不況の中でほとんど絵が売れないので経済は妻に依存し ているのが現実です。だから月20万の妻の収入で高い家賃7万円を支払いながらやり くりしてきたのです。ボーナスなどここ数年ありません。障害者年金が突き当たり6 万1500円入るが、赤字補填です。しかしそれでも生きては行けます。
 だが妻が解雇されれば数ヶ月失業保険が入るが、そのあとは、わたしたちにこじき をせよというのか!会社が妻を解雇できなくなると労働組合が会社とグルになって、 最後のトドメを刺そうというのでしょうか。一帯何時まで労働者は企業意識に閉じ込 められるのでしょうか。会社あっての自分と思ってきたが自分が会社に捨てられてな お会社のほうが大切というのならばあまりにも情けないことです。
 妻は組合大会で言うべきことは言うがそれが通用するとは思っていまん。
 「ねー。私が自殺したら会社と組合は保障するかしら、」
 「さーな。保障させて誰が受け取るのか。」
 「あんたよ。あんたなら事情を全部知ってるから、できるでしょう。」
 「ばかいえ。言葉には魔性がついている。不吉なことを言うな。」
 「いろいろあって心が重いわ」
 「ああ、俺もだ」
 裁判にかけても戦おうと言い合いながらこうして弱気の虫が出ます。だが私は妻が 決して負けないことを信じています。
 「おまえなー。いま投げ出したらいままで退職勧奨を拒否して生き残ったことがパー になるぜ。会社の組合が労働者の首を切るって言うのは国労の1047人の解雇とおんな じで国労のまともな労働者が長年一緒に戦っているよ。僕らは間違ってないんだ。負 けたらあかん。」
 「そうよ。解雇されたら生きていけないのよ」
 「俺の甲斐性がないばかりに申し訳ない。」
 そして私たちはどう戦うかという話もやめて明るい話題にことさら話を切り替える のです。こんな苦しいこととは別に30になる娘がもうすぐ寿なんです。きのう彼と二 人で家にきたので僕の得意料理の串カツを山ほど作ってビールを飲み交わしました。 しかし彼のお母さんが数日前に倒れたとか、多分息子の嫁が決まってほっとしたのだ ろう。娘の幸せな顔を見ていると妻の解雇の話などまったくする気になれませんでし た。水主の人はどうしたのでしょうか。私たちも彼の気持ちに近づいたことを正直に 伝えます。
 リストラとは、解雇とは、何だ!イデオロギーとか権とかの問題以上に、生きるか 死ぬかの問題です。自殺するまでもない。生死をかけた戦いです。
 私たちが戦いに立ち上がったら、署名などお願いするかもしれませんのでそのとき はぜひご協力をお願いします。この戦いは多くに方の支持があれば勝てるし、なけれ ば負けるという性質のものですから。そのとき社名その他を明らかにします。
 私の妻はこうも言います。
「私の問題はいまの日本中に労働者が全部抱えている問題やからやっぱり負けられへ んわ」
 優様。心配をおかけします。今、正念場にかかります。これからもその都度書きま すのでよろしく。

 私と高田優様の公開書簡の形になっていますが、どうぞ読んでおられる方は以前の 分も合わせて読んでいただければほとんどのことがご理解願えると存じます。どうぞ 二人の間に入ってください。一人でも多くリストラ問題や労働問題での悩みを話し合 えることを望みます。

 私、気の弱いことも書きましたが、この苦しさを抜きに立ち上がるなどということ はどんな場合もないと思います。自分達の心の中も現実もありのままに見つめながら この理不尽と戦い抜いていきたいと思います。
  ”We will Win!”(映画「ロッキー」より)