国税庁のホームページによると、平成13年度で、課税対象の法人は、280万あるが、その内納税しているのは79万法人(所得合計32.8兆円、税額9.2兆円)で、残りの201万法人(恐らく中小企業が大部分であろう)は赤字(合計27.5兆円)なのである。すべてを合計すると、所得金額は5.3兆円、一法人あたり平均して、200万円足らずになってしまう。この所得金額は従業員の給与など必要経費を差引いた額であるから、日本の法人の平均像は、給与を支払い、固定資産税で地方財政に貢献し、若手社員の収入にも及ばない利益しか上げない社会奉仕団体みたいなものである。法人税を云々するときには、この点を見落すべきではないであろう。
消費者から見た場合には、単純に、大企業=悪とは言い切れない。確かに、トヨタは儲けている。しかし、トヨタの車は高いだろうか。あの車を中小の町工場で作ったならば、もっと高くなるはずだ。だから、中小企業は自前で車を作らず、大企業の傘下に入ることになる。トヨタが儲ける仕組みはそんな所にある。
この点に関しては、共産党の志位委員長も27日のNHK「日曜討論」の中で、
もう一点、中小企業についていいますと、さきほど小泉さんは大企業がもうけをあげたと、いずれ中小企業に及ぶといったんですが、逆なんですよ。一部大企業のもうけは、中小企業をいじめてもうけをあげている(ものです)。
と述べているのは正しい認識と思う。しかし、大企業のお陰で、消費者は中小企業の犠牲の上にたって、安い製品を手にしているという観点は思いもつかないようだ。消費者から見れば、大企業=悪ではないのである。
しかし、中小企業が大企業の一方的な被害者ともいい言い切れない。大企業は、そこで働く労働者の賃金を生産性に比べて低く抑えている。それが、日本の労働賃金を全体的に低く抑え、中小企業も経営が成立つのである。対労働者という関係になると、大企業と中小企業は持ちつ持たれつの関係のようだ。
法人の赤字27兆円は、実に、10%の消費税分に相当する。逆に言えば、消費者は法人企業を通してそれだけ安い商品やサービスを提供されているのである。中小企業の経営が成立つことに反対する人は少ないであろう。だからこそ、もし、大企業への増税が可能ならば、その資源はすべて他の法人の赤字補填に当てるべきであろう。それが極めて共産党的なタームである経済民主主義の立場ではないのであろうか。それを考えれば、大企業への課税を行ったところで、そこからは、理論的・原理的にも福祉財源を捻出できない筈である。全法人の実質的な利益は、たったの6兆円足らずなのだから。