投稿する トップページ ヘルプ

一般投稿欄

7/17寄らば大樹の陰様~驚きつつ補足いたします

2004/07/19 樹々の緑 50代 会社員

> 私は「国連」や、妥協の産物で実際にはなんの有効性を持たない「国祭法」等に頼るのではなく、もっと強い様々な運動や組織を作ろう、何でも他人に頼るのは止めにしょうと言っているのです。

 あなたが、経験から「頼りにならない」国際組織や国際法に「頼る」のは止めにしようとおっしゃっている意味は分ります。
 あなたご自身は、アムネスティーインターナショナル日本の会員であるようですし、このサイトで見たように思うのですが、確か、(韓国)従軍慰安婦戦後補償請求訴訟の支援者でもあるわけですよね。
 この裁判が、わが国において、国際法及び国際私法に基づいて闘われていることを、あなたはどのように説明されるのでしょうか? あなたご自身の上記引用の立場に従えば、これは自己矛盾ではありませんか? それとも、これだけ膨大な費用と人力を使う意義は、裁判所で勝訴することではなく、「もっぱら」裁判を通じて一般市民運動を起こすことにあるとお考えなのですか? 原告が敗訴判決を受けたときの失望は、どうでもよいことなのですか? 「国民基金」では問題のごまかし「解決」でしかないからこそ、これらの原告は、高齢を押しても訴訟を闘っているのではありませんか?
 読んで下さっている他の方々には、立ち入ったことで済みませんが、私の記憶違いでなければ、この訴訟では、①個人の国際法主体性、②仮に個人の国際法主体性が認められなくても、国際私法上の請求の可否、③その場合の不法行為の「違法性」要件を充たす上での、1910年の「醜業条約」、1929年の「強制労働条約」、1926年の「奴隷禁止条約」に依拠し、その解釈に関して1996年の国連人権委員会におけるクマラスワミ特別報告書やチャベス特別報告書を援用しながらの「違法性」主張の可否、④日韓請求権協定や日中共同声明における「請求権放棄」の意義、⑤時効適用の可否、等々が争点となっていると思います。
 そしてこれらのことは、大樹の陰さんにおいては熟知されていることですよね? しかしそれはほとんど、あなたが「頼りにはならない」としている、国際法に基づく主張ではありませんか? 信じられないことです。
 もちろん、現に闘われている数々の対権力訴訟を見ても明らかなとおり、訴訟で勝つこと「だけ」が目的なのではありません。むしろ、これによってマス・メディアを通じて広く国民世論に訴えること、広範な国民運動による言論の包囲を通じて、非力で臆病な裁判所を突き動かし、裁判所を国民の側に付かせることがとても重要です。この両者が相まって初めて、個々の裁判闘争の社会的意義も全うできるのだということは、大樹の陰さんに改めて申し上げることでもないでしょう。それは、松川事件を始め、戦後初期の裁判闘争の経験が、すでに明白に物語っているところです。
 しかし大樹の陰さん、あなたご自身が熟知されているように、運動を「裁判闘争」という形で遂行するときの、原告の負担は並大抵のものではありません。もしもあなたが、本気で「他の当てにならない形だけの組織や法律に頼るのではなく」と考えているのであれば、即刻、これらの原告たちに「訴訟をやめなさい」と忠告すべきだと思いますが、いかがでしょうか。
 ブルジョア法は、ブルジョア法の限界を乗り越えることはできません。しかし同時に、ブルジョア法は、その固有の原理を持っており、法の双面的拘束性(原理的には権力も人民も等しく拘束されるということ)・一般的抽象性(法適用は、適用対象の具体性を捨象して、同種事件に対しては同等に行われること)は、人民による闘いの有力な武器ともなりうるのです。その可能性を、あなたはなぜトコトンまで追求しようとしないのですか。
 もしも「しっかりとし(た)運動を私たち自身で作ろう」と、あなたが本気で考えておられるのなら、そのような、国際法を発展させ人民の権利を擁護する運動を、なぜ本気で作ろうとはしないのですか?最初から「そんなものは、結局何の頼りにもならないんだよ。この国の貧弱な人権状況を見てごらん」とうそぶいて、どのような生産的意義があるというのでしょうか?本当に驚きの連続です。
 あなたが「国祭法」と書いていることからも、あなたがいかに国際法に反感を抱いているのかは、よく伝わってきます。しかしそれは結局、戦後国際社会の地道な努力に「そんなことをして何になったのだ!」と唾を吐きかけていることになるのです。しかも同時に、その結果、北朝鮮の金正日政権の人権抑圧を批判する有力な武器を、自ら投げ棄てることにもなるのです。これでも「論点が違」うとおっしゃるのでしょうか。
 なお、念のため申し上げますが、7月6日付の私の投稿で、あなたが「私の回答・反論に正面から答えないままに」と言ったのは、このような国際法の議論ではありません。
 あなたは、そもそもこの議論の出発点となった、「北朝鮮による日本人拉致は国際的無法行為(これも、「国際法」による評価ですよ)であり、日本による植民地支配や第2次大戦の清算が未了であることによっては正当化されない行為である、したがって、拉致被害者の原状回復は、これらの未清算を理由として『国交正常化』や『南北朝鮮統一』の彼方へと追いやられてはならない」、という点について、ご自分の言葉でどのように回答されるのでしょうか。改めて、その点を遡ってお訊きしたいところです。