参院選もとっくに終わったのに今さらの感がしないでもないですが。
今回の参院選大阪選挙区では、辻元清美(無所属)が71万票余りを獲得して、最
下位当選の北川一成(自民党)に約1万7千票の差にまで詰め寄りました。大阪では
辻元票が「台風の目」といわれた所以です。
かくいう私も、辻元清美に入れるか宮本岳志(共産党)に入れるか、今回は投票日 ギリギリまで迷いました。私が辻元候補に引かれたのは、①選挙ポスター(「もう一 回働かせて」)・ウェブサイトのキャッチ(「戦争はいらん…そこそこ暮らせて~」) に惹かれた、②年金・イラク問題での与党追及でパワーがありそう、③秘書給与詐取 事件に関しての目に見える形での「お詫び行脚」(選挙カーの後に「ごめん」と大書) 、という、まあどちらかというとミーハーな理由からなのです。
【参考URL】
・辻元清美公式HP
・辻元再生プロジェクト
結局私は、北朝鮮問題をめぐる過去の辻元発言や、宮本候補が私の地元出身である 事、武富士の暴力的労務管理・サービス残業問題を国会で追及した実績等を考慮にい れて、選挙区では宮本岳志に投票したのですが、はっきり言って、辻元清美が、秘書 給与詐取というマイナスポイントも抱えている中で、何故71万票余も獲得したのか (お仲間の社民党比例票はたった13万票余)、その理由が今もってわかりませんでした (まあ、「宮本は今回は落ちるな」というのは雰囲気で何となくわかっていましたが) 。
辻元票については、それまでの西川きよし票や府知事選・横山ノック票と同様の 「一種の芸能票」と見なす向きもありますが、私は、どうやらそうでもないと思うの です。その理由は、これらのムードだけの芸能票と違って辻元候補は反戦・反与党的 スタンスが鮮明で、単純なノンポリ・ムード票が流れ込む要素が少ないと思われるか らです。
それよりも、辻元候補が進めた選挙戦術が、大阪府民の感情(アンチ巨人の野球ファ
ンの動向にも通じる、ある種の「判官びいき」)にかなりフィットした部分があった
のではないか、と思っています。この点を解明していけば、ひょっとすれば、選挙戦
術論や「候補者のタマ」論など、護憲・平和票の再結集を目指す議論にも資するもの
が出てくるのではないかと、ひそかに愚考しているのですが…。
下記の参考数値で見る限り、主に民主党と自民党の比例票が選挙区では辻元候補に
流れたようですね。
【参考数値1】
・大阪府選管HP
・参院選大阪府 選挙区得票
尾立源幸 (民主) 910,597 (得票率24.94%)当選
比例票との比較▲363,579
山下栄一 (公明) 795,256 (得票率21.78%)当選
比例票との比較+ 43,599
北川一成 (自民) 735,164 (得票率20.14%)当選
比例票との比較▲147,301
辻元清美 (無所属)718,125 (得票率19.67%)
比例票との比較+587,763
(社民票と比較)
宮本岳志 (共産) 442,755 (得票率12.13%)
比例票との比較+ 8,709
増田義雄 (無所属) 34,819 (得票率00.95%)
大城戸豊一(諸派) 13,916 (得票率00.38%)
・同上 比例区得票(按分票は切捨て)
民主党 1,274,176
自民党 882,465
公明党 751,657
共産党 434,046
社民党 130,362
女性党 66,882
みどりの会議 54,298
維新政党新風 10,218
【参考数値2】
・選挙でGO!/参院選'98・'01近畿分析
・'98年参院選大阪選挙区得票数(下位7氏省略)
西川きよし(無所属)1,057,393 当選
山下 栄一(公明) 872,294 当選
宮本 岳志(共産) 725,385 当選
坪井 一宇(自民) 573,610
中務 正裕(民主) 542,581
長崎由美子(社民) 116,552
・'01年参院選大阪選挙区得票数
谷川 秀善(自民) 982,887 当選
白浜 一良(公明) 864,154 当選
山本 孝史(民主) 602,312 当選
山下 芳生(共産) 594,063
渡辺 義彦(自由) 195,508
北岡 隆浩(諸派) 116,216
土居 和子(諸派) 101,449
・'04年参院選大阪選挙区得票数
尾立 源幸(民主) 910,597 当選
山下 栄一(公明) 795,256 当選
北川 一成(自民) 735,164 当選
辻元 清美(無所属) 718,125
宮本 岳志(共産) 442,755
増田 義雄(無所属) 34,819
大城戸豊一(諸派) 13,916
ざっと前3回の参院選大阪選挙区の得票を比較してみたが、かつて'98年では7
0万票余りを取っていた共産党に代わって辻元清美がそれを取ったと見れなくもない
でしょう。事実、民主候補の90万票余はそれ自体大きな数字ですが、それでも同じ
選挙の比例票より30万票以上も減らしています。辻元候補は自民・民主の比例票か
ら合わせて50万票余を奪った形になっています。言い換えれば、この50万票は、
もし「護憲・平和・反リストラ政党連合(or新党)」が出来れば、闘い如何によって
は二大保守政党から充分奪い返せる票である、という事です。
それなりに知名度やパワーのある候補者が出馬し、その地域の有権者の感情(ここ
では、所謂「判官びいき」)にフィットするような情宣活動に徹したら、多少のマイ
ナス経歴(この場合、秘書給与詐取)や基礎票の少なさ(元在籍していた社民党の比
例票はわずか13万票余)をカバーして二大政党に肉薄できる事を、この選挙は証明
したのではないでしょうか。