グリム童話もアンデルセン童話も、絵本ではなく、原典を読むとその薄気味悪
さに気づくことができます。
「不思議の国のアリス」だってそうです。テニエル卿の不気味な挿絵が、ルイス・
キャロルことオックスフォード大学数学教師で、10歳を超えた女には興味がなかった
というチャールズ・ドジソンの雰囲気にぴったりです。
ここは、文学サロンではありませんから、ルイス・キャロルについての詳しい説明
は、はしょりますが、10歳以下の少女を自室に連れ込んで、肌もあらわな写真をたく
さん撮りました。以前「ルイス・キャロル写真集」を買ったことがあります。大体、
「アリス」だって、彼がほれ込んでいた、学部長の年端も行かない娘の気を引くため
に作ったお話です。今なら、警察行きでしょうが、19世紀末のビクトリア朝時代だっ
たから「あの大学教授様は、おかしな趣味でいらっしゃる」ぐらいで、親たちは我慢
していたんでしょうかね。
原題はAlice in Wonderlandですが、この文のタイトルを英語で言えばJapanese
Public in Junchan’s Wonder Japanese Worldであって、決して純ちゃんが不思議の
国に迷い込んだわけではなく、日本国民が純ちゃんの摩訶不思議な世界に紛れ込んで
しまったのです。
彼の魔術は、使い慣れない言葉の短いフレーズを多用したことによって、成り立ち
ました。「自民党をぶっこわす」-「そうだ、自民党は壊れて欲しいのだ」と国民は
勘違いしました。以前に私が申し上げたとおり、本当の意味は「俺が自民党の権力者
になってやる」ということでした。「官から民へ」-「そうだ、役人は生活も保障さ
れているし、なんだか恵まれているようだ。汚職もするし」と国民は思いました。で
も、民間というのは「儲かってナンボ?」の世界です。そして、公立保育園が民営化
され、金儲けしか考えていない私立学校があたかも公立学校より、良い教育をしてい
るかのような錯覚を持ちました。建築許可も民間がやるようになりましたので(少な
くとも、わが地方では)、地域の環境なんか考えていません。
極めつけの「構造改革」です。また、日本国民は思いました。「そうだ、日本は変
わらなくてはいけないんだ。小泉さんは良いことを言う」と変わる中身を検討もせず
に興奮してしまいました。その結果、「金持ちになって、親の苦労に報いよう」と自
分のことしか考えていない孝行息子の竹中平蔵が「他人を押しのけて、のし上がるの
が立派な人間」という凄まじい理念で、少数の金持ちと多数の貧乏人を作り出しまし
た。
こういう変化を国民は求めていたのでしょうか?なかには、「自分は、金持ちにな
る」と頑張っている方もいるでしょうが、だれもが競争を好きというわけではありま
せん。(私事で恐縮ですが、)常々「勝気」「負けず嫌い」と言われる私ですが、自
分の目標に向かって努力するのは好きだけれど、他人と競争するのは好きではありま
せん。その辺りの、「努力」を間違って理解しているのが「教育界」であり、「経済
界」です。もっとはっきり言えば、資本主義社会です。
「アリス」のなかで、アリスを不思議の国へ導いた(というか、アリスがくっ付い
て行った)ウサギが消えると、物語もお終いに近づきます。福田康夫官房長官という
「とぼけたウサギ」がおりましたが、ご機嫌斜めになったのか、戦略だったのか、消
えました。小泉の秘書官が全面に出て、ポーカーフェイスもなんのその、むきだしの
人気取りと情報操作を始めました。そろそろ、終わりに近づいたかなと思っていたと
ころに、「人生いろいろ」発言でした。小泉首相がこんなに分かりやすい言葉を使っ
たのは、致命傷でしたね。お人好しの国民だって、島倉千代子の「人生いろいろ」は、
知っているのですから。
気に食わない人物を片っ端から、首切りの刑に処するトランプのハートの女王が、
アリスを裁判にかけます。女王が「この子の首を切れ!」と言った時、アリスは立ち
上がって「なによ、あんたたちはただのトランプじゃないの!」と叫びます。
すると、アリスは目が覚めて、読書をしている、これまたビクトリア朝ご推薦みた
いなお姉さんのそばにいることに気づくのです。
さあ、もう純ちゃんの不思議な世界で遊ぶのはやめましょう。ここにいらっしゃる
方たちは、以前から「日本語ワンダーランドof純ちゃん」に違和感を抱いていた方た
ちだと思いますが。
最後に、どなたか忘れましたが、ここの投稿によって、この拙文の着想を得たこと
をご報告申し上げます。また、日本語訳をお読みになりたい方に、「新潮文庫『不思
議の国のアリス』矢川澄子訳、金子国義絵」は推薦できません。アリスは、フリフリ
ドレスを着て、リボンをつけたビクトリア朝のおとなしい、従順な少女ではありませ
んが、(それどころか、少し変な子です)矢川訳のアリスは品がなさすぎますので。
それから、挿絵もテニエル卿の不気味な絵には残念ながら及びません。
Lewis Carroll: Alice's Adventures in Wonderland / Dover Thrift Editions