なかなかここにアクセスする時間がとれないのでレスが遅れ気味です。最新 のSekioさんの投稿もまだ良く読んでいない段階で、とりあえず6/25の大歩危さんへ のレスです。
1)「238U」と「劣化ウラン」の言葉の使い分けについて
>0.2%の235Uが存在するためにそのような劇的な変化は考えにくいの で、さつきさんの仰るとおりとすると、多くの科学辞典に記載されているのは純粋 の238Uが崩壊した瞬間の放射線量のみであり、定常的な状態を示したものではないと の指摘は理解できます。
私の6/9(イラク討論欄)でのまとめでは「話を分かり易くするために「精製」直
後の劣化ウランの組成を238Uが100%と仮定します。」として、「定常状態」へ至る
過程を説明しています。235Uはほとんど無関係です。おおざっぱに言うと、半減期
が24.1日の234Thは238Uの数百億分の一程度の濃度で、半減期が1.17分の234Paはさら
に少ない濃度で、238Uと同じ放射能(Bq)を持つことになります。「238U」は核種
の名前ですから「238U」に234Thや234Paは含まれませんが、「劣化ウラン」は238U
を主成分として、他のいろいろな「不純物」を含んだ工業的な生成物(副産物)の名
前なので、議論する時は両者をきちんと区別して用いないと混乱します。
そこで、6/25の質問をくり返しますが、「238Uは主にはα線を出す」ではなく、
「劣化ウランは主にはα線を出す」と記述している「一般的な科学(化学)辞典や科
学雑誌」を紹介して下さい。
2)β線の飛距離について
>2.27MeVのβ線の空中飛程が数?ということは私も確認しています。
しかしながら、それはあくまで高いエネルギーを持ったβ線のしかも最大飛程であ り、また232Thのβ線エネルギーはその1/10以下と思います。
2.27MeVのβ線の大気中での飛程は「数m」ではなく、約9mで、234Paからのβ線の平
均的なエネルギーの平均的な飛距離はその数分の1、つまり「数m」と予想されます。
前回紹介した「放射能の基礎知識」というサイトの中にβ線のエネルギー分布のグラ
フがあるので、参考にして下さい。ただし、特定のβ線の平均飛距離を計算から厳密
に求めるのは不可能なので、経験的な値として書きました。私もそれほど経験豊富で
はないので、参考までに数MeVのエネルギーのβ線の大気中での平均飛距離を数cm~
数十cmと解説している本やウェブサイトがあれば紹介して下さい。Sekioさんもこれ
を読まれていたらよろしくお願いします。
このような不確定要素もあるので、同じように計算したモナザイトと比較すること
で、危険度の目安とした訳です。
3)自己遮蔽効果について
>しかしながら物質全体を考えると、1個の崩壊原子の周囲には何十億 という原子が取り巻いており、ベータ線は最大のエネルギーをもったものでも何mmも 進むことは出来ないと私は考えています。これが6/9のまとめの中の「4)「放射線量率」の計算」で説明している「自己遮 蔽効果」であって、例えば232Thからのβ線は金属ウラン中では最大0.004cm(40マイ クロメータ)しか進めません。これらの効果も全て計算に入れた結果を示しています。 同じように計算したモナザイトと比較することで、劣化ウランの危険度が理解してい ただけると思います。なお、これまでは無視してきましたが、β線の危険性は、それ が物質との相互作用の結果エックス線を発生するという面にもあります。「自己遮蔽 効果」の為に外部へ出ることのできなかったβ線も、必ず内部でエックス線を発生さ せ、その一部は外部へ放射されます。