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7/3 寄らば大樹の陰様へちょっと一言

2004/07/06 樹々の緑 50代 会社員

 純粋に個人的事情から、投稿どころでない事情は続いているのですが、2~3 日おきにサイトは参照していました。
 唐突でしょうが、私は、アメリカのイラクに対する武力行使(=戦争行為)が、国 際法上正当な行為と認められるとは考えません。実のところ、日本共産党が支持して やまない「国連」でさえ、5大国の拒否権を始めとする基本的に不平等な意思決定体 制を持つ限り、そう簡単に「国連決議に従って」ということもできないと考えていま す。したがって「多国籍軍」についても、全面的に支持しているわけではありません。 ましてや、日本国自衛隊がこれに参加するというのは、超法規的に「万一の場合に自 衛隊を活用するのは当然」と言い放った不破議長の発言を連想させるものであり(理 由が違うだけです)、絶対に支持できません。
 時おりしも、「北韓」日本人拉致問題(=曽我さんの家族再会の実現)を利用した 小泉政権による土壇場の点数稼ぎが行われようとしている現在、目前の参院選挙で、 国内的には年金=老後の生活保障・特別会計資金の濫費問題、国際的にはイラク「多 国籍軍」への自衛隊参加問題で自公連立政権に掣肘を加えなければならないだけに、 私の回答・反論に正面から答えないままに、大樹の陰さんが、別の方を相手にして 「北韓」問題で次のような投稿を未だにされていることに、本当に失望しています。

> 金正日体制の打倒は北韓の人々の断固たる権利です、部外者がしたり顔で何か言 う事ではありません。

 大樹の陰さんが、「金正日体制の打倒」の理由をどのように考えられているのか、 この発言だけからは不明です。しかし、少なくとも、このサイトのいままでの議論の 流れから見て、「北韓」の政治体制による人権の極度の抑圧を「打倒」理由から除外 しているとは思えません。したがって、平たく言い直せば、「金正日政権による国内 的人権抑圧は、『部外者』である他国の人民がとやかく非難がましいことを言うべき ことではなく、あくまでも『北韓』人民自身の意思のみによって解決すべき問題だ」 という主張が含まれていると考えられます。
 確か同趣旨のことを長壁さんも「口幅ったい」という形容で述べられていたように 思いますが、これらの方々に共通しているのは、日本共産党現指導部と同じように、 民族自決権のみの異様な強調であり、これと同じ第二次大戦の教訓の一つである、人 権の国際的保障の原則に対する圧倒的な軽視です。
 寄らば大樹の陰様、あなたは国連憲章第1条を読んだことがありますか。
 そこには、国連の目的が定められているのですが、第1項で国際の平和と安全の維 持、第2項で民族自決権に基礎をおく諸国間の友好関係の発展、が挙げられるととも に、第3項では、「経済的、社会的、文化的又は人道的性質を有する国際問題を解決 することについて、並びに人種、性、言語又は宗教による差別なくすべての者のため に人権及び基本的自由を尊重するように助長奨励することについて、国際協力を達成 すること」が、国連の目的として明示されているのです。
 このように、民族自決権尊重と並んで、人権の国際的保障原則は、国連の目的でも あり、そのためにこそ国際社会は、法的拘束力がない1948年の世界人権宣言を嚆矢と し、各国が自己の判断で条約当事国となることを選択して、法的拘束力がある国際約 束を行う「国際人権規約」(「経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約」= A規約、及び「市民的及び政治的権利に関する国際規約」=B規約、並びにその選択 議定書)を成立・発効させてきたのです。ヨーロッパ人権条約(1953年発効)では、常 設人権裁判所という司法的保障手段まで整備してきました。ナチス・ドイツによるユ ダヤ人大量虐殺を目近に経験したヨーロッパで、このような条約による相互拘束の方 法が発展してきたことは、象徴的です。アムネスティなどの市民運動が、これらの流 れを推進してきたことは、言うまでもありません。
 とくにそのB規約は、当事国を直接に拘束するとされているのですから(この点に 異論なし)、その当事国民である日本国民が、同じく当事国である「北韓」の国内的 人権抑圧に対して、強制的方法以外の方法(=代表的なものは言論による批判)によっ て抗議することは、まさに「当事国国民が、他の当事国政府に対して、国際約束の履 行を求めるという正当な要求を行う」ということであって、「『部外者』がしたり顔 で何か言う」ことではまったくありません。このような非難が何ら内政干渉にならな いことについては、例えば、山本草二『国際法』(有斐閣刊)189頁をご参照下さい。 もともと、国際人権規約B規約当事国同士では、相互の国内的人権抑圧も、国際問題 なのです。こうして、お互いに「風通しをよくする」ことこそが、条約による人権の 国際的保障の狙いなのですから。
 もちろん、人権の国際的保障原則の国際的普及の過程では、アメリカによる自国の 世界支配政策に有利な、勝手な「人権侵害」認定によるニカラグア侵略、経済援助に おける差別等の否定的な現象もありましたから、手放しで人権の国際的保障を鼓吹す るわけには行きません。しかし、人権の国際的保障という国際的課題自体の正当性は、 疑いがないものと思います。
 結局、寄らば大樹の陰様の上記主張は、おそらく日本共産党現指導部と同じように、 民族自決権原則の尊重のみを異常に誇張し、人権の国際的保障原則を背景に追いやる 主張と軌を同じくするものとなるのでしょう。
 しかし、当の日本共産党は、中国の天安門事件に対する1989年7月11日付「赤旗」 掲載の宮本議長(当時)の談話『中国当局の暴挙を批判される方々は日本共産党へご 投票を』の中で、「人権問題は国際問題です。」という留保なしの言明をしているの ですから、いわば、最近の日本共産党お得意の「知らぬ顔の半兵衛」と同じ結論にな るのだと思います。