本田さんからは、賛同の書き込みをいただきまして、ありがとうございます。
今回で投稿は三回目になりますが、今日は、最近の大学生の動向について書きたいと
思います。というのは、私はある大学で教えている関係もあって、実は、共産党系の
学生や民主党系の学生とも付き合いがあるからです。ちなみに、最近は共産党系の学
生はめっきり減り、民主党系の学生が増えているので、付き合いの程度も後者が圧倒
しつつあります。
参議院選挙での惨敗にかかわって、最近良く党員の高齢化が指摘されます。もちろ
ん、高齢化は言い過ぎで、実際のところは、中年化してきているというのが妥当なと
ころだとは思いますが、最近の20代あたりでの落ち込みは、世論調査などの結果から
見るとどうやら事実のようです。特に、共産党の支持率が最も多いのは、世論調査に
よると、40代・50代ですから、いわゆる学生運動華やかなりしころから党員であった
り、党から影響を受けたりした人々が、共産党支持層の主力といえるのでしょう。で
すから、たしかにこの傾向が続き、若年層での党の支持が増えないのであれば、10年
20年先には、名実ともに高齢化してしまうといえると思います。
近年の学生を見ていて書きたいことは、三つあります。1つは、学生の憲法理解、
および憲法への態度であり、もう1つは、今の学生の年金問題や公共事業問題への関
心の問題であり、最後に、共産党の体質と今の学生の欲求との関係です。
すべてを一気に書くと、長くなるので、今日は、憲法についてのみを書きます。ま
ず、1つの大前提を誤解を恐れず大まかに書くならば、私たち40代・50代にとって
は、憲法=よい、優れている、進歩的、守って当然という傾向が強いように思います
が、今の学生にとっては、憲法=古い、改正も検討して当然であるという傾向が強い
ように思います。と、ここまでは、ある種当然と考える方も多いかもしれませんが、
私の同級生やその上の世代(60代もふくむ)は、こうしたギャップを考えないで、憲
法について語る人が多いように感じます。そして、そのことは、学生との関係で議論
の空回りを引き起こしているように感じます。また、同じことは共産党にも言えま
す。今日の共産党の主張も、同じように空回りを起こしているのではないかというこ
とです。
たとえば、実際に私が体験したことを書くと、有事法制などが問題になるときに、
あれは憲法違反であるという主張をして、日本が軍事力を持つことは危険だとか、戦
前への復古であるとかいう話をした法学者がいたのですが、それに対する大多数の学
生の反応は、じゃあ憲法を改正すればいいではないか、軍事力は多くの国がもってい
る、先生は日本以外の国はすべて危険というのか、というものでした。もちろん、安
易に武力行使すればよいという学生は多くはありませんが、日本に危険が迫る可能性
もあるのに、憲法を守るということから議論が出発するのはおかしい。それなら、何
のための憲法か?という反応がありました。また、学生の大半は、政府の解釈改憲の
結果、憲法を防衛目的で改正する必要はもはやなく、海外での集団的自衛権行使のた
めだけに改憲は必要であるということを理解できていないという彼らの知識の問題も
あります。ただ、いずれにせよ憲法違反だという結論だけを振りかざしても空回りす
る状況には変わりはありません。
実際、私も時として強く感じるのですが、今の40代・50代以上の世代には、「憲法
信仰」といっても良いほどの傾向があると考えています。そして、その人にとって
は、憲法を守る・改正してはならないというのは、盗みは犯罪だというのと同じくら
いに当たり前なのかもしれませんが、そういう当たり前の部分が今の学生には共有さ
れていないことに気づくべきだとと思います。
今の学生がそういう状況ですから、今の憲法を守るということの意義を説明する際
にも、様々な前提が必要です。ですから、私の場合は、?今の日本を攻撃する可能性
がある国はほとんどなく、相当に安全であり、自国を守るための軍隊の必要性はあま
りない。?懸念されている北朝鮮がミサイルを何発か打つ可能性が0%ではないにし
ても、ミサイルを撃墜する自衛力はそもそも不可能であるし、百歩譲ってそれが必要
であるとしても、陸上・海上などの自衛隊は必要ない。?むしろ、北朝鮮の攻撃は外
交によっていくらでも回避できる。?拉致問題やテロ問題は、軍事力によって未然に
防ぐことは出来ない。過去の拉致問題を未然に防げなかったのは、沿岸警備や入国管
理の問題であって、防衛の問題ではないなどを説明した上で、日本国憲法は軍事なし
で国を防衛しようとした人類史上画期的な試みであって、今の日本の周りに深刻な脅
威がない以上、この先進的取り組みを進めるべきである。必要のない自衛隊などもつ
から、海外に出せと言われる。この際、自衛隊は都道府県単位の災害救助隊に改組し
て、軍隊としての自衛隊は完全に廃止すべきだ、という風に話して、やっとある程度・
・・(文字化け)・・・。
しかし、今の共産党の有権者への働きかけは、私が今、「憲法信仰」と書いたのと
全く同じような気がします。たとえば、参議院選挙前に見たテレビでは、志位委員長
が自衛隊は要らないと発言したのはいいのですが、小泉が「それなら、日本が攻めら
れたとき、どうするんですか? 共産党の言っていることは全く非現実的だ」と言わ
れて、全く言い返すことが出来ていませんでした。たしかに、放送時間の制限などあっ
たでしょうが、一言「じゃあ、どこが攻撃してくるんですか? 45年自衛のために使
わなかった自衛隊なんか持っていても、結局海外で米軍のように一般の人々を殺戮す
るために使うしか出来ないんじゃないですか」くらい、言い返してほしかったと思い
ました。私は、そのテレビ番組を見たときに、志位委員長もまた、「憲法信仰」で、
同じ信仰を持つ人にしか説得力のない話しか確か出来ないのじゃないかと思いました。
だいたい、上記の小泉の議論なんて、誰でもできる単純な議論です。それに対して、
一言もないなんて、レベルが低すぎます。
それでは、「憲法信仰」のない人々にも憲法擁護の重要性を理解してもらうために
は、どうすればよいか、それは憲法は守って当たり前という態度から議論を始めず
に、憲法(とくに9条)がいかに画期的なものかを、理念だけではなくて、具体的に
語る必要があると思います。たとえば、上記に私が書いた?から?もそうですし、他
にもやり方があると思います。具体的な話ができないという点で思い出すのは、私が
以前、ある共産党の国会議員と話す機会があったとき、その議員が「平和憲法のもと
で非軍事でも国際社会に貢献することは出来る」と述べたので、「それは具体的に何
ですか」と問うたときのことです。結局、その議員は答えることが出来ませんでし
た。しかし、そういうのが、だめなんだと思いました。私としては、日本の難民受け
入れが非常に少ないので、その点の克服などを言ってくれることを期待したのです
が、そういう具体論は持ち合わせていないようでした。
最後に、憲法の重要性さえ理解できない馬鹿な学生は、わが党の支持者にも党員に
もなり得ない、わが党はもっと良質な学生を党に迎え入れればよいと考える方がいる
かもしれません。しかし、私の学生時代には、最初は右翼学生みたいだったのが話を
しているうちに気持ちが変わって入党してきた例をたくさん知っています。そういう
学生は、世間一般の誤った理解に感化されているだけで、根本的には政治に関心が旺
盛な学生です。いわゆる政治的無関心層ではありません。
それだけに、今回の参議院選挙で共産党が取った護憲戦術には、こうした具体論が
ほとんどなかった点が残念でした。前回も書きましたが、共産党が国民の目に見える
部分で政策に触れたのは、この憲法問題だけでした。同じ触れるなら、もっと改憲な
んか当たり前と思っている学生にもアピールするような“こなれた”ものにしてほし
かったと思います。その視点がない限り、今の学生の中での支持の広がりに展望はも
てないのではないかと思います。