私は、共産党を含んだ平和を望む勢力の大同団結のために、いろいろな弱点や 過去の誤りについて、打撃的な非難はできるだけ控えようとして、多少遠慮がちになっ ていましたが、こと原水禁運動の分裂の問題だけは、毎年8月になる度に我慢ならな くなります。
この問題については、「現状分析と対抗戦略」討論欄の原 仙作 さん(8/08) が正しく指摘されているように、「分裂の原因は共産党にあったことは、もはや、歴 史が確定した事実に属する」のです。そうした誤りについての真摯な反省と謝罪が無 い限り、過去の問題ではなく、ただいま現在の問題です。そのことを原さんは「共産 党が大衆の中に残してきた活動の爪痕」と表現されましたが、まさにその通りだと思 います。
かって「原水協」で活動していた私の恩師は、ご自身被爆者でもあったのです が、中国の核実験成功の報せにワインで乾杯した時のことを、痛恨の想いで語って下 さいました。その重大な誤りに気付いた後は、「原水協」から離れ、「原水禁」の方 へ活動の軸を移され、今日に至っています。そうした人々を大勢知っていますが、逆 に「原水禁」から「原水協」へ移った人を、私は知りません。
先月、「第九条の会・日本事務局」代表であった物理学者勝守寛さんがお亡く なりになりました。「第九条の会」は、元B29パイロットのチャールズ・オーバービー 博士により、湾岸戦争後の91年に米国で設立されました。勝守さんの招きによって来 日した博士が広島の原爆資料館を訪れて衝撃を受けたのが動機だとされています。91 年には勝守さんが日本事務局を立ち上げて代表に就任されました。
92年にはオーバビー博士広島講演を機に「第九条の会ヒ ロシマ」も結成されました。この会のウェブサイトのリンク集には、「原水禁」 はあるのに「原水協」はありません。代表は、先の参院選広島選挙区で市民グループ の呼びかけに応じて無所属の護憲統一候補として立候補した広島修道大学の岡本三夫 教授です。社民党と新社会党はいち早く支持を表明しました。共産党もこの「統一戦 線」への参加を呼びかけられたものの、藤本聡志氏擁立を先に発表していたためか、 無視しました。藤本氏は党県常任委員・広島市原水協常任理事です。定員二名の選挙 結果は、柳田稔氏<民主> 509,875票当選、亀井郁夫氏 <自民>493,817票当選、 岡本三夫氏108,288票、 藤本聡志氏84,407票。これがヒロシマの現状ということ なのでしょう。
さて、去る6月10日には、そうそうたる顔ぶれの呼びかけ人によって「九条の 会」が設立されました。私も趣旨に賛同し、大いに期待を 寄せ、できることからと、細々とした活動を始めたところです。「九条の会」の設立 はマスコミにも大々的に取り上げられましたが、その際に、既にあった「第九条の会」 のことにはほとんど触れられていなかったことが、少しだけ気がかりです。共産党も 熱心に取り組んでいる様子で、喜ばしい限りですが、どうか、分裂を持ち込むことだ けはしないでほしいと祈るばかりです。そして、「九条の会」を軸に、原水禁運動の 統一へ向けた取り組が始まることを期待しています。そのためには、私たちがもっと もっと声をあげなければなりません。