町村外務大臣の一連の発言が最近物議を醸し出しています。曰く、
・首相の靖国参拝、英霊に平和誓う当然の行為…町村外相(読売新聞)
・墜落現場視察した町村外相「操縦上手だった」(琉球新報)
後者の沖縄ヘリ事故をめぐる失言については今まで南雲さんが拙掲示板(アフガン板:下記参照)でも精力的に取り上げてくれており此処で改めて強調するまでもないのですが、前者の靖国参拝の件については私も少々言いたい事があります。読売新聞の当該記事によれば、町村外相は「首相も国のため命を落とされた方の慰霊をすることは当然だという考えだろうし、恒久平和、世界平和実現のために努力していくことを英霊に誓う行為そのものは当然だ。それぞれの国にはそれぞれの慰霊の仕方がある」と言ったらしいですが、安直に「国」とか「日本人」という言葉でひとくくりに捉えないで欲しいものです。これでは恰も「日本国民」は全て「靖国参拝」「A級戦犯合祀」に賛成しているみたいな捉え方ではないか。少なくとも私はそんなモノに賛意を表した覚えはないし、他にもそういう人は少なくない筈である。町村発言の中には「靖国参拝やA級戦犯合祀に賛成しない者は全て非国民だ」と言わんばかりの傲慢さが感じられます。
ただこれだけ見ると町村氏は、安倍幹事長・中山参与無き後の政府・与党の中で強硬派として自分ひとり気を吐いているかのような発言を最近している訳ですが、私はこれは一種の「ガス抜き」と見ています。今の日本政府は(これは米国も本質的にはそうだと思っていますが)私とは比べ物にならないくらい「打算的・実利的」「国益優先」です。東アジアから東南アジアにかけての地帯と東欧諸国は、今やグローバル資本主義の有望な世界市場です。ここでは米国・日本とも、市場を不安定化させるような事は基本的に望みません。中国・ベトナムでは共産党権力に食い込み、彼の権力とも持ちつ持たれつの関係で勢力拡大を図っています。小泉首相が北朝鮮との国交正常化に熱心なのも、其処に潜在的市場があるからです。他方で「Gotuku7」(先進国サミット参加)諸国はいずれも大なり小なり、中東・アフリカ・CIS諸国(所謂「不安定の弧」地帯)については市場としてではなく資源地帯として捉えています。ここでは米国は露骨な軍事介入を行っています。日本も「アメリカの「属国」でいる方が楽なので、全てを他国より優先してアメリカには逆らいません。」(アフガン板の某投稿者の書き込みより)。
町村外相の一連の発言は、前述の「打算的・実利的」「国益優先」の本質を覆い隠す為に、中国・アジアに対する排外主義を「適度に」煽っているのだけなのです。謂わば、世界市場をめぐる「実利」「国益」を損なわない範囲で「ガス抜き」を図っていると言えます。小泉内閣が、どんなに「イラク戦争の嘘」が白日の下に晒されても只ひたすら米国に追従し、それと同時に拉致問題の幕引きを図ってまで北朝鮮との国交正常化を急ぐのも、此れで全て説明が尽きます。
その中で、排外主義に煽られて気が付いたらイラクやソマリアその他に海外派兵させられ殺されるのは「我々」なのです。その裏で資本家は涼しい顔をしてどんどん海外進出を図り、北朝鮮・中国民衆の人権もアフガン・イラク・パレスチナ民衆の人権も省みられる事は無いのです。「利用」される事はあっても。「Gotuku7」諸国指導者が唱える「似非人権・民主化」の欺瞞を見破る目を養い、本当に民衆解放に結びつく「真の人権」「普遍的人権」運動を構築していく事が、今にもまして我々に求められているのではないでしょうか。「北朝鮮人権法案」についても、単純・機械的な肯定や否定ではなく、それを如何に「真の人権」に資するものに転化させていくかという事が問われていると思います。