11月29日最高裁は朝鮮人軍隊慰安婦、軍人・軍属訴訟判決で一・二審を引
き継ぎ棄却、原告敗訴判決を行った。
11月30日引き揚げ船浮島丸爆破事件補償裁判では一・二審判決判を覆しこれも
原告敗訴判決となった。
いずれも所謂、「国家無答責」「時効」そして「1965年日韓条約解決済み」と
いう立場の判決だった。
更に12月15日、東京高裁では中国人軍隊慰安婦訴訟についても控訴を棄却した。
これらは判決は被害事実そのものは殆ど認めながら「旧憲法下では国の個人への賠償
責任を認めていない」「現行憲法下の事ではないから認められない」「既に損害賠償
を求める事の出来る期間は過ぎている、時効が成立している」「1965年日韓条約
締結によって解決済み」などとして、原告たちの切々とした訴え、心の底からの叫び
を何もなかったかのように冷酷に切り捨てたのだ。
この論法では、戦前の歴史は司法の上からは完全に消し去られたことになってしま
う。
この国はもう大半が70歳半ばを越えた被害・ハルモニが「死に絶える」のを待っ
ことを決意したのだ。
勿論私の係わる戦後補償裁判で、我が気鋭の青年弁護士は「国際的に戦争被害の時
効を言うのはこの国だけだ」「国家無答責なんて理論を認めることは司法の死だ」と
まで言い切って、大奮闘してくれているがー。
11月末からこの国は「戦時体制下移行」を明確に打ち出してきている。
それは震えが来るような恐ろしいまでのスピードである、後日この間の政府権力の
異様なやり様は「暗黒の超反動期」として歴史に記憶されるに違いない。
自衛隊のイラク派兵延長、武器輸出三原則の緩和、最新軍事大国化と侵略軍隊化・
海外展開を指向する防衛大綱の見直し、制服自衛官が絡んだ改憲案の検討、教育基本
法改悪策動、明確化された国民保護法指針の発表、本国では失敗ばかりしているMD・
ミサイル防衛網協定の締結、そしてこれら戦後補償裁判の一括的な切捨て、そして横
田めぐみさんDNA鑑定をめぐっての「北朝鮮経済制裁論」の絶叫は、これらの総仕
上げ的な国民の排外主義誘導戦略以外の何ものでもない。
国連の食糧援助機関、赤十字などが訴える北朝鮮の飢餓危機を知り、アメリカや韓
国までが躊躇している「経済制裁」を、今こそとシャムに推し進める、力の根源と真
意はなんなのか、私たちは十分検証しておく必要がある。
しかし「立川自衛隊官舎ビラいれ弾圧」に対する地裁の表現の自由を優先した地裁
の無罪判決は、私たちに元気を与えてくれた。
「闘えば必ず勝てる」、「どんな反動にも心を合わせ団結すれば負けない」、「闘
うところにこそ人は集う」これらを忘れずに年末から年明けの激動期・激突期に立ち
向かいたいと思う。
不当判決を受けたといえ、各裁判で心と身体の痛みをこらうながらハルモニたちは
決して闘う事を忘れていない、60年以上前に受けた苦しみと煩の心を忘れず微笑み
さえ浮かべて、今も私たちを励ましてくれている。
闘いはまだまだ、これからなのだ。