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一般投稿欄

「学者もマスコミも理不尽です」のご意見に寄せて

2004/12/27 経済学者V 50代 大学教員

 12月12日付けの党員投稿の表題の記事内容について。私は日本共産党員ではありませんので、こちらに投稿します。
 主張の内容については同感です。しかし、税金や物価の国際比較をする場合、注意が必要です。このサイトはある程度冷静な議論が期待されていると推測しますので、敢えて一言。
 投稿者は為替レートを使って税や物価を比較していますが(政府も赤旗も含めたメディアもそうですが)、これは基本的に間違いです。「労働者の観点」から言えば、購買力平価(1ドル140~160円)、対米比較なら日米賃金均等レート(170円)を使わなければ、正確な比較になりません。言い換ええれば、為替レートを使うなら賃金、所得の方も為替レートで表現する必要があると言うことです。現在の円高レートで比較すれば、外国の労働者の所得は低く評価され、したがってより低い税率が適用されるように見えますし、課税最低限水準も低く示されます。これはみな、生活水準を反映しない変動市場の円高レートを使うことから導かれる形式上の帰結で、実態を反映するものではありません。
 高齢者がなじんできた1ドル360円の固定相場は、購買力平価を規準にしてつくられました。今日の変動相場(市場原理)は、購買力や生活水準とは関係なく、投機、思惑、政治的意図も含んだ金融取引が貿易取引の何十倍も多い「自由市場」でレートが成立しています。日本の労働者の賃金(所得)は今のレートで言えば、アメリカの労働者の1.6倍くらい。物価も同じくらい。つまり、為替レートで換算すれば高いのは物価だけでなく、賃金も高いのです。アメリカに行ったとき、物価が安いと感じるのは現地価格(現地の労働者が買う商品の価格)を外国人である我々が円高レートで換算するから安いのであり、現地の労働者から見れば、アメリカの物価は安い、ということにはまったくなりません。日本で賃金を受け取り、アメリカで暮らせば、安上がりと言うことにはなります。現地で、「アメリカは物価が安く良い」など言えば、労働者や失業者に反発されることは間違いありません。賃金も物価も1.6倍くらいですから、実質所得は日米同じくらいと言えます(細かいことは省略)。そこで、日本の労働者の時給2400円とアメリカの時給14ドルが同じ価値を持つと見れ・・・(文字化け)・・・
 ちなみに、中国政府は政策的に強烈な為替ダンピングをしており、購買力平価1元80円以上のところを13元程度にしています。これを規準にすると中国人労働者の賃金は日本の40分の1、名目上は飢餓とエイズに苦しむアフリカの労働者以下になります。実際そのレートを使って中国は雇用と所得の成長(日本や周辺諸国の停滞)を実現しています。現在の変動相場の世界とは斯くもめちゃくちゃです。