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「会社」の現実(結城さんへ)

2004/12/07 阿Q 50代 自営業

 冷静なご意見、有難うございます。

 先ず、誤解を無くすために、私自身のことを言います。私は昔公務員として技術的 な仕事をしていましたが、あれこれ様々な技術に関係して、どれひとつとしてまとも に身につかずに悩んでいました。また勤務ぶりも芳しくなく、子供が生まれた時に 「こんなオヤジじゃ子供がかわいそうだ」と(それだけじゃないけど)退職し、小さ な会社に入りました。そこである部門の責任者になりましたが、うまくまとめること が出来ず、一人で焦ってから回りしたあげくに退職して、自営となりました。

 そんな人間で、出世など始めから期待しなかったので、ねたみから「ゴマすり論」 を主張しているのではありません。昔グータラ公務員だった自分の反省と、会社で若 い連中を統率できなかった反省と、その会社からいくつかの大企業をのぞいた経験に 基づいて、建前や理屈とは程遠い現実を痛感したこと。また多くの人の真面目な仕事 が報われない不公正がまかり通っていること。そんなことから、自営業者には関係の 無い企業内の問題についてあれこれ余計な発言をしている次第です。

 結城さんは業績評価のいくつかの形態を上げています。もう20年近く企業の内部 をのぞくチャンスが無いので、現在の評価システムに関する私の知識は主にメディア を通じたものですが、それによると上司の主観的な評価による弊害が広がっているよ うな印象を受けます。

 成果主義が真っ先に導入された富士通が、その弊害の代表としてよく取り上げられ ます。実際、富士通がそれを始めた時から経済ニュースなどで注目してきましたが、 ひどいと思います。とても「能力に応じて」とは思えません。

 そもそも、NECの98シリーズに代わってIBM PC互換機が日本でも普及し、 そのコンポーネントをまずシンガポール、ついで台湾メーカーが生産して市場を支配 しつつあった動向、またDELのビジネスモデルの登場など、その後の見通しもろく にないまま、FMシリーズでしたか、格安(バグだらけ)パソコンを出してNECか らシェアを奪おうとした戦略は、全くお粗末だったと思います。

 これについても「後からなら何とでも言える」とケチを付けられそうですが、それ について詳しい話をすると混乱するので今はやめておきます。ここでは、富士通経営 陣の判断が実にお粗末なものであったと私が前から思っていたことだけ強調しておき ます。

 そのお粗末な富士通の社長が、業績が悪いのは「社員が働かないからだ」と発言し て物議をかもしました。自分の無能を棚に上げて、業績の悪化を経済環境のせいにす る経営者は多くいますが、社員の怠慢のせいにした社長は、ちょっとめずらしいので はないでしょうか?これにはあきれました。こんな人間の下で、「公正・客観的な社 員の評価」など、可能だと思いますか?

 「社長はアホだけど、幹部は優秀」なんてことは、絶対にありません。社長は幹部 のなれの果てです。アホな社長というのは、社長になることがサラリーマン人生すご ろくの上がりであり、社長になって何をするという目標は何も無い、社長になったら それで終わりという、そんなヒラメ幹部達の代表です。

 私はトヨタは大嫌いで、あそこの車を買う気は全くないし、トヨタの下請け仕事も ケンカしてやめました。でもトヨタはすごい会社です。名古屋の田舎企業から成り上 がっただけあって、名古屋人の保守的な体質と、その後獲得した国際性を組み合わせ て、他に無い強みを発揮しています。ああいう企業では、アホは社長になれません。 きらいだけど頭が下がります。

 そういう、全社に静かな緊張が保たれて、足踏みをしない企業と、上から下まで緩 みきって足踏みどころか後退する企業では、全く違います。何が違うか?まず経営者 のしゃべることが違う。

 労働者のことなど何も考えずに私腹を肥やしていた労働貴族と、社長になっただけ で満足で、経営者クラブでの社交に興じていた社長がだめにしていた当時の日産の社 長のしゃべったことと、今ゴーン氏がしゃべることを比較してください。

 ゴーン氏のスピーチは英語で聞くとその良さがわかります。まず、ダラダラするこ とが全く無い。短くて歯切れがよく、しかもリズムがあって耳に良く入ります。しか し日本のえらいさん達によくある、耳障りの良い無内容な美辞麗句を並べたおしゃべ りとは全く違います。自分達(日産の社員)の課題は何か、それを明確に打ち出しま す。

 そこにあるのは、現状の的確な分析と、それに対する自分の回答(会社の方針)、 そしてそれを分かり易く伝えるコミュニケーション能力です。すべて考え抜かれてい ます。かつての日産の経営者だけでなく、三菱、富士通など、会社を停滞させる経営 者には、そのどれ1つとして見られない資質です。(ただし、私はゴーン崇拝者では ありません。念のため)

 問題は、的確な経営方針を打ち出すどころか、現状を的確に把握することも出来ず、 自分の公的な発言が社員にどんな影響を及ぼすかも判断できない愚かな経営者の下に は、その後を狙う同類がウジャウジャいると言うこと。そういう人たちが、部下に対 して公正で客観的な評価を行うことは、無理だろうということです。

 結城さんや「エンジニア」さんがそういう企業にいなければ幸いです。しかし悪い 体質を持った企業で働く人にとっては、建前やルールなどとても素直に信じられない のではないかと思います。

 例によって余計な話に脱線して、肝心な話ができませんでした。それは、結城さん が言われた技術職と事務職の違いという問題で、私もそれが重要だと思っています。 それはまた後で。