樹々の緑さまご丁寧な回答ありがとうございます。私の胸の中にずっとあった 疑問が解き明かされてくるようで非常に喜んでいます。
私たちの世代にとって「新日和見主義」の代表者は、頭目とされた広谷俊二氏では なく、『嵐~』の末尾に文章を寄せていた川上徹氏なのです。彼は、情念に訴える文 章の書き手としては、相当なものだと思います。しかし彼には、「学生はいずれ社会 に出て、レーニンがいう『労働者インテリゲンツィア』を形成する社会集団である」 という確固とした認識が、当時決定的に欠けていたと思います。東大闘争のような、 長くても数年で終ってしまうような闘争と同じ感覚で、目前の「社会変革」を受けと めていたような感じがするのです。
樹々の緑さん、私は貴方の指摘はすべて当たっていると思います。しかしあの当時
の学生であった川上徹氏が革命全体の展望を持っていなかったとしても当然ではあり
ませんか。私なども革命全体の展望など何も判っていませんでした。ただ大学での闘
争を通じて多くの共産党員を確保し、その人達が労働者として社会
進出すれば、我々は必ず多数派を握れると思っていました。
事実公務員労働者、あるいは教職員組合は連日赤旗で共産党系の組合が多数を握っ
たと報道されていました。私も就職に際し、2市の地方公務員に受かりましたが、こ
ちらが組合の多数を握っていない方に就職しました。その後職場での党組織の確立の
ために奮闘しました。私が就職後、私を慕って多くの党員が就職してきました。一定
の陣地を確保し、青年部の役員選挙ではほぼ互角まで行きましたが、自治労系は当局
とも結びつき人事異動で調整を図り、多くの職場で1~2票の差で破れるという状況
でした。残念ながら後一歩と言うところで力関係が変えられず、当時の解放同盟の運
動の高揚もあり、行政職場では解放同盟に批判的な者は極端に差別される状況のなか、
また地区党の指導との軋轢の中後退しました。(大学闘争の停滞のなか新入職員の中
に党員もいなくなりました。)
ですから、「新日和見主義批判」は、(もともと無内容であったばかりか)どうに でも使える都合のよいマジックワードとして、「不満分子」を押さえつけるために、 さらに無内容な用いられ方をしていたのであり、ことの本質は、11大会を重要な転換 点として、「人民的議会主義」の圧倒的重視へと全党の活動方針がシフトした、とい うことではないでしょうか。何も「新日和見主義批判キャンペーン」の犠牲者たちこ そが「大衆運動の重要性」を見逃さなかった点で「正しかった」、ということになる わけではないと思っています。その「大衆運動」とは、せいぜいいま述べた程度のも のだったのですから…。
この点の解釈、私には100%同意はできませんが、大いに参考になります。(樹々 の緑さんが新日和見主義批判は正しかったと言われれば私は反発しますが)
過去のこだわりさんや人文学徒さんとの議論に関連して、私の中でも、運動の主た る担い手としての「市民」をどのように把握すべきか、よく分らないために、教えて いただきたいと思っているのです。現党中央は、本当に気安く「草の根の運動」と言 い過ぎて、中身はさっぱり実感できないからです。ただ、「市民社会が成長した結果、 旧来の労働者階級と資本家という『科学的分類』は過去のものとなった」というのは、 やはり違うだろうという感じです。大雑把に言って、社会主義社会の実現は、未だ労 働者階級の歴史的使命なのではないか、と考えている次第です。
樹々の緑さんは失礼ですが、現在の公務員労働者の現場をご存じではないのではと
思います。できれば私が人文学徒さんにあてたメールの中に公務員労働者の実体を書
いていますので読んで頂けますか。
逆に私は樹々の緑さんに教えて頂きたい事があります。ソ連をはじめとする社会主
義社会の崩壊をどう捉えておられますか。私は社会主義という理念は正しいが、現在
完全に敗北した以上、再度根本から考え直す必要があると思います。個々の国にこの
ような問題があったと言う次元の問題では無く、今日までの社会主義議論に根本的問
題を内包していると認識しています。
私は現実主義者であり、自分の見聞きした事から、自分の考えを構築します。私は
地方公務員として30数年勤め、この社会(公務員)は社会主義社会に非常に似てい
るなと思っています。
ソ連が崩壊前後に、このような話がありました。農村で収穫されたキャベツが、都
会に着くまでに腐ってしまう。その原因は労働者の権利が最優先され、早く運ぶとい
う考えが無いと。(私はこの話を聞いた時佐川急便をソ連に輸出すれば、改革ができ
ると思いました)中国はいま市場経済の導入で経済の活性化を図っています。これは
成功に見えますが社会主義とは全く無縁な存在に変質しています。
話がそれましたが、公務員がなぜ社会主義かと言いますと、まず賃金・昇格等にお
いて男女差別が無い。また学歴による賃金差別も一切無い。逆に高卒の方が賃金が高
い。(これは公務員独特の賃金体系であり、6短とか3短とかいうのあり、6短とは
6ヶ月で昇級する事をさします。高校卒で4年間に5回昇級する
と、大学を卒業しても高卒より1年分給料が低く、この差は一生変わりません。さら
に昇格は給料表の上から行きますので高卒が先に昇格します。)公務員の賃金は年齢
別賃金です。(年を取れば確実に賃金が上がる、昇格しなければ差が出ますが、管理
職には残業手当が無く、手取りでは「平社員」の方が多いという事
例はいくらでもあります。)
これは余談ですが、社会主義ソ連でも大卒の方が高卒より賃金が高いという記事を
読んだ事があります。これは労働力商品を生産する過程でそれだけ多くお金がかかっ
ているとの説明があったように記憶しています。
さらに公務員の最大の原則は「働いても働かなくても賃金が同じ」という原則です。
この原則が社会主義の原則か否か私は十分把握していませんが、この原則ほど労働者
をダメにする原則はありません。残念ながらこの原則を適応した場合、多くの労働者
は働かない方に流れて行きます。私は社会主義の理念は正しいが、残念ながら人間が
そこまで成長していないと見ています。ソ連の崩壊、中国の異常な発展がそのことを
物語っていると思います。
私は大学で社会主義の優位性について学びました。必ず社会主義が勝利すると。無
計画な資本主義に対して計画経済の社会主義は合理的であり、必ず勝利すると。また
「人民中国」や「朝鮮画報」とかの本を見せられ、中国や朝鮮が如何に楽園であるか
聞かされました。最近問題になっている北への帰国事業を共産党
が奨励したかあるいは朝日新聞が奨励したかの話も、確実に奨励したことを覚えてい
ます。(赤旗の記事は覚えていませんが、朝日新聞が北に帰国した人の生活を伝え、
ここは天国だとの記事を載せていたのを鮮明に覚えています)
なぜ社会主義が勝利するか、例えばワープロが新規発売しても半年で半額になって
しまう。また新機種を投入する。これが無駄だと指摘されていました。ところが社会
主義社会が崩壊し、蓋を開けて見ると東ドイツの車のボンネットがボール紙で作られ
ていると聞いた時、この計画経済の根本的弱点と、資本主義社会の「無駄の効用」を
知りました。
話がまたまたそれましたが、現在の公務員は、日本における労働者が資本の搾取の
中で痛めつけられているのに対して、資本主義の中の社会主義という特区に守られ、
その労働運動は「ギルド」的になっています。確かに組会方針は、地域住民の生活と
権利を守るとしていますが、これはお題目であり、すべては自分たちへの批判を交わ
すための道具にしかすぎません。
樹々の緑さん私は公務員はとんでもない知的退廃を招いており、その原因は社会主
義的環境に置かれているからだと思っています。「働いても働かなくても同じ」これ
ほど労働者を「ダメ」にする原則は無いと思っています。レーニンは確か「働かざる
もの食うべからず」と言ったと思いますが(これがどういう文脈で
言われたか掴んでいない)現在の私の考えは、中国の現状は誤りだが、さりとて経済
的刺激ナシでは、残念ながら人間は働かないと思っています。
以上述べた様に公務員労働者は、とんでもない知的退廃をしています。(その典型
が今の大阪市の実体です。勤務もしていない日に残業手当を付ける等)この労働者が
革命の前衛という議論はあまりにも現実から遊離しています。
共産党が議会を通じて多数を握るという方針をとる限り、獲得すべきは労働者とい
う側面より「地域」という側面を重視し、「市民」としての要求にもっと目を向ける
べきだと思っています。その際党中央から来たビラを各家庭に配っても何ら効果はあ
りません。地域の問題を捉えたビラを配るべきです。(これができ
ないのが現在の共産党の力量です。)
以上回答になったか否かは判りませんが、私が長年持っている疑問です。何処にも この意見を言うところが無く、初めての私の意見表明です。