司馬遼太郎さんについてはいろんな評価があっていいと思います。むしろ ああだこうだと批評することに意義があると思う。
司馬さんは故人であるが、国民に社会的影響を与えた功績では
司馬さんの歴史小説>>不破さんの「人民的議会主義」だろう
さて銀河さんの評価にもの申したい。
①>「坂の上の雲」は日露戦争における秋山兄弟という英雄崇拝、が鼻につくの でした。
秋山兄弟は軍隊では大佐や少尉くらいの中間管理職くらいの人であり、英雄崇 拝といっても金日成や毛沢東などのようなトップを誉めているのではないので、 それほど気になりませんでした。それよりむしろ、師団長の乃木大将や参謀長の 伊地知を無能と書いたり、別の本ですが貴族宰相の三条実美を無能とはっきり書 いてあるのには驚きました。
②>そしてこの戦争が日本を帝国主義国として押し出したそのことについての問 題意識が司馬になく、
私には、司馬さんの問題意識としてのメッセ-ジがはっきり伝わりました。つ まり日露戦争の評価がきちんとされていないということです。日露戦争では日本 は少なくとも陸上戦では勝っていないということ。ロシアは主力軍を温存させ戦 線を後退させただけだ。これがロシアの伝統的な戦法であり、ナポレオンもヒッ トラ-も戦線が伸びた所で反撃に会い敗退している。それなのに軍人は神のおか げで勝ったとか、まともに分析していない。
③>司馬遼太郎がナショナリズムに陥っていたような気がします。
ナショナリズムが地域や郷土を愛する心と解釈するならば、特に問題がありま せん。自国のことのみを考えて他国はどうでもいいと考え方なら司馬さんは違う でしょう。ロシアの指揮官(ステッテルだったかな)も本の中で誉めている。ち なみに不破さんの新綱領は記述が日本国として自虐的だと思う。旧綱領のほうが ナショナリズムがあった。
④>彼の歴史観には歴史における個人の役割を重視しすぎる嫌いがあると思いま す。農民一揆や商人などブルジョアジーが出てこないのです。
関与した人の代表として個人をクロ-ズアップしているのでしょう。全員を書 くことは不可能なので。商人では全財産を倒幕に使った人を書いてあったと思っ たが。
⑤>非常に上手に面白く読ませる作家ですが思想的にさほど評価できないなあと 思っています。
作家は思想化ではありません。たとえ思想があっても事実だけを述べていき明 確にいわないのが本筋ではないでしょうか。そうでないと読者は入り口でキャン セルしてしまう。映画でのユダヤ人迫害問題をあつかった「・・・のリスト」で もナチス批判は一言も述べず事実だけを延々と描いていく。しかし見終わった観 客は戦争の悲惨さのメッセ-ジを受けとったように。