ご無沙汰しております。とおりすがりNです。今般の福知山線の事故について 『労働者の味方』である皆さんがどう考えているのか気になって覗いてみました。過 密ダイヤ、儲け主義のJR西日本、労働者も犠牲者等々、こういった主張は基本的に理 解できますし、私もそう考えております。
しかし、決定的に欠けているのは、労働者が犠牲者であったとしても制限速度70km のカーブに100Kmを超える速度で突っ込んでいった運転手の運転技量への疑問は無い のでしょうか。如何に日勤教育への恐怖があったとしても、この無謀な運転への言い 訳にはなっていないように思うのです。もちろん死者に鞭を打つような真似をするつ もりではありませんが、この点を多面的に解明しないと、この種の事故は今後も発生 するような気がします。ただし、こうした無謀運転については新しいタイプのATS-P が導入されていれば大事故になることは防げることは確かでしょう。そうした意味で は、新しい技術と投資によってこうした大事故は防げることになりますが、根本原因 を探る必要を無くしてしまうかもしれません。ま、技術の発展の光と影です。
しかし、スピード超過で私が一つ鮮明に思い出した件がありました。確か今年の2 月の中頃だったと思いますが、中央線(新宿・四谷間)に乗って運転席のすぐ後ろで前 を眺めておりました(私は電車が好きで空いていればいつも運転席の後ろで前を見て います)。ご存知だと思いますが、新宿方面から四谷駅に進入する前にトンネルがあ りまして、その前信濃町あたりからちょっと直線区間があってスピードが出ますが、 その日は普段よりちょっと早いなと思っていたら急に電車が減速してトンネルの入り 口付近で停止してしまったのです。運転手さんはまずいなという顔をしましたが、運 転席から離れて運転台右側に設置されている機器を操作して数分後に再スタートした のでした。たぶんATS-Pがスピード超過を感知して停止した後のリセット作業だった のではないかと思います(想像ですが・・事実は『中央線の電車が突然停止し、運転 手が機器を操作して数分後に再スタートしたことと、車掌が遅れが出たことのお詫び の放送をしていた』という点です)。
福知山線の事故を聞いて、あの時はATS-Pが働いたのかなと思い出したというわけ ですが、この憶測が正しければ、スピードの出しすぎという運転はJRの東西を問わず 現在では起こりがちなのではなかろうかと思います。マスコミは馬鹿の一つ覚えのよ うにオーバーランが何件起こったということと非番の職員が宴会を開いていたことし か報道していない調査の欠如が露呈してますね。
問題は、何故そういう運転をしてしまうのかということなんですが、原因の一つ はJR西日本の日勤教育のような締め付けが誘引となっていることは確かでしょう。し かし、それで全て説明が付くとも思えないのです、つまりJR東日本では日勤教育は無 いと聞いていますし。
若い方々は車の運転をする場合に、結構スピードの出しすぎということをやってし まうものです。若いということはそういうもののなのでは無いかと思います。そこで、 そういう若さを抑制して制限速度70kmのところは70kmで走ることの重要性を理解する のがプロの運転手というものなんじゃないかと思います。
電車でも車と同じような感覚で、スピードをついつい上げてしまうということなの でしょうか?制限速度を守るという問題が車の場合と電車の場合でまったく意味合い が異なるということに気が付いているのかどうか、この点をきちんと教えているのか どうか、その点が大変気になっています。ここをしっかり理解していれば、いかに日 勤教育が非人間的であったとしても、運転している自分はどっちを優先しなければな らないかが明確にわかるはずだと思うのです。
そして、今回の事故でマスコミもここの掲示板の論調も鬼の首を取ったように『JR 西日本の儲け体質』が悪いと言っています。それが無理なダイヤを組んで、運転手に 責任を押し付けていると・・・。
そのとおりでしょう。では責任を押し付けられた運転手=労働者は何をすべきなの でしょうか。如何に日勤教育が恐ろしくとも『出来ないことは出来ない』と堂々とし ていることがプロではないでしょうか。宝塚線では毎日1分から2分の遅れが恒常化し ていたということです。無理なダイヤであったことは明白でしょう。運転の現場で、 ダイヤどおりに運転するのが運転手の腕の見せ所だと胸を張るのもプロの技でしょう が、過密ダイヤを安全に運転できるはずが無いと、『遅れても堂々としている』のも またプロのプライドだろうと思います。それで日勤教育にまわされるのなら、日勤教 育の反省文の中で反省すべきは当局だとこれまた堂々と発言するのもプロのプロたる ところだろうと思います。
しかし、マスコミは鬼の首を取ったように非番の職員が宴会を開いていたことを追 求していますね。責任追及ネタとしてはうま味があるからでしょうね。自分たちが裁 判官にでもなったつもりなんでしょうが、あんた達は今まで何を報道してたんじゃと 問いたいですね。日勤教育などという非人間的な懲罰主義の体質を報道もせずに放置 してたのはあんた達だろと思いますね。その間自分たちは宴会でもしてたでしょうに・ ・・社会の不公正を放置して報道すらせずに宴会三昧(笑)。
公共輸送の安全性を真剣に確保しようと思ったら、事故を起こした当事者の責任は 問わない(仮に本人に責任があったとしても)、かわりにどんな些細な点も全部告白 するという取引が必須なのです。全てを明らかにして初めて原因を探ることが出来る のです。だから、些細な事実でも明らかになったことを捕らえてすぐに責任追及を始 めては駄目なんです。司法取引のようなもんですが、日本では、ともかく誰かに責任 を取らせなければ気がすまない体質なんでしょうね。労働者に責任があるのか、使用 者たるJRに責任があるのか、その点だけが興味の対象になってしまっている点が問題 の解決を難しくしているように思います。体質は右の方も左の方も同じです。
JRの日勤教育なるものも『オーバーラン』や『ちょっとしたダイヤの遅れ』のよう な失敗の時点で、教育に名を借りた懲罰ではなく、原因を真摯に調査する態度があれ ば、ダイヤに無理があるのかどうかなどについての客観的なデータを集めることが出 来たでしょうにね。JR西日本がホントに重要なことが何なのかを理解していればの話 ですが。