石川県小松空港は自衛隊小松基地と民間航空機の併用空港である。民間機では
韓国仁川空港へ1時間半で到着するから、北朝鮮(共和国)攻撃なら1時間で到達する
日本海側の最前線出撃基地である。
ここでは労働組合、市民団体、共産党と社民党が協力して何ヶ月かに1回のペース
で1週間(月から金)の騒音調査が継続されている、騒音被害訴訟を引き継いだもの
である。
私もひょんなことから短時間だが騒音調査に参加させて頂いた、私は基地近くの高
台での調査と基地隣接・滑走路真下で観察したのだが、それは私の想像をはるかに超
えた凄まじいものだった。
自衛隊小松基地は隊員数およそ1300人、F15戦闘機38機、T44機を擁する
一大基地である、併用基地と言いながら滑走路を見るとその殆どは自衛隊機が占領し、
民間機はその間を縫うように使用しているだけだ。
民間機が発信すると2機のF15が手の届きそうな超低空で追走する、上空は90度
旋回を繰り返すF15が2機飛行し、おまけにペリコプターも飛んでいる。
この情景を見るとパイロットが「朝鮮有事には何時でも行きますよ」と言っている
ように思えてしまう。
かつてロシア機が日本海に出て来た時は、真夜中でもF15が何機もスクランブル発
進したそうだ、ともかく轟音が凄い、凄まじい、耳を劈くような轟音と金属音には圧
倒される、F15が来たら会話は全てストップ、何も聞こえない、F15の爆音は100ホ
ンを軽くオーバーする、民間機の70ホンとは大違いだ、その環境の中で基地に隣接
して、市民病院と子ども達の遊ぶ公園、体育館、陸上競技場、そして立派な老人ホー
ムもある。
観測のベテランに聞くと、この辺に済む夜勤の労働者は睡眠薬を飲み、お酒を飲み
干し、耳栓までして寝ようとするがF15が1機来れば忽ち眼が覚めて寝付けず、大
半の人が慢性の不眠症にかかっているそうだ、特に高齢者にはキツイそうだ。
私が「こんなところで赤ちゃん育つんですかね」と聞いたところ、「やっぱり慣れ
だね、犬でも爆音に反応しないもの」と笑っていた。
しかしこの被害は年齢を重ねる毎、何らかの症状をもたらすのではないかと思えて
ならない。
機体の下に大きな燃料タンクをぶら下げて発進するF15は、1回の飛行訓練でドラ
ム缶20本の燃料を消費すると言う、これは確かかどうか分からないが名神高速道路
を走るトラックの1日のガソリン消費量に匹敵すると言う、ガソリンの高騰が続く今、
爆撃機のパイロット養成に私たちの莫大な税金が上空にばら撒かれているのだ。
そしてもうひとつ驚いたこと、それは基地周辺はもとより市役所に近いところでも、
騒音が酷いところは防衛庁が民家を家ごと買取り、立ち退かせるのだと言う。
木が生えて草や花が咲いているところの大半は「国有地です、カンやゴミを投げ入
れないで下さい」との防衛施設庁の看板がる立てられている、有事になればこの膨大
な土地は忽ち武器貯蔵庫になり、訓練場所になる。
もとより市民病院や老人ホーム、そして体育館は米軍や自衛隊員の死者負傷者で溢
れることになる。
行政がそこまで見越して基地周辺にこんな施設を作ったとは思いたくもないが、上
空を攻撃用ジェット機が飛び交い、騒音垂れ流し、土地は国有地と言う深刻な現実を
見せられてしまうと、戦争がホンの身近に迫っていると感じざるを得ないのだ。
「継続は力」と言う、騒音調査はこれからも続けられる、しかしその参加人員は次
第に先細り状況にあるらしい、本当にこれだけでいいのか、このところの日本の政治
的の腐敗と私たちの無力を考えると、もっともっとやることがあるのではないか、と
の疑念が募ってならない。
沈黙してはならない、現状に甘んじていい訳がない、しかし何が出来るのかよく考
えて見たい。
ちなみにこの近くの小学校には「二宮金次郎」の銅像が「勤労報国」の文字ととも
に子ども達を見下ろしていた、「日の丸・君が代強制」どころではない、もう戦時が
開始されている。