昨今、靖国神社問題が外交だけでなく内政でもホットなテーマとなっています。
共産党は、首相の靖国神社参拝問題について、靖国神社の満州事変から太平洋戦争ま
での15年戦争賛美の立場、靖国神社の反米宣伝、米国内での靖国神社批判をとりあ
げ外交上の問題の本質をつくうえで、一定の貢献をしていまる。筆者はそのことを率
直に 肯定的に評価するものです。
ただし、今回のことは、共産党の近年の「右傾」化路線との間で矛盾が生じる可能
性があります。
まず、日本の保守勢力への接近傾向との矛盾です。共産党は、1999年の日の丸・君
が代は法制化されていないから強制すべきでないとして国旗国歌法制定に道をひらき
(議場では反対しましたが)、規約の全面改定をおこなった2000年の第22回大会で自
衛隊活用論(違憲合法論と同じ)を決めました。国会や地方議会では皇太后弔詞・皇
孫賀詞決議へ賛成しました。さらに、綱領改定をおこなった2004年の第23回大会では、
従来の主張を180度翻し、象徴天皇制は君主制ではないとして容認しました。つまり、
旧来の保守層にかなり歩み寄る路線を強めていました。ロシア、韓国、中国等と争わ
れるに土問題ではほぼ日本側の領有を主張する立場です。
靖国神社問題をもっとつきつめてゆくと、祀られている英霊・A級戦犯は誰のため
に戦った人々かという問題につきあたります。それは、天皇です。ですから、西郷隆
盛は西南戦争の賊軍とみなされ、祀られていません。共産党は、絶対主義天皇制と今
の象徴天皇制は違うと主張するかもしれません。しかし、天皇家自身は連続性を常に
誇示しているのが実態ではないでしょうか。
第二に、米国への従属という日本の現状の認識の後退につながる問題です。今日、
政策面で、国会の他の政党と共産党を大きく峻別できる点としては、もはや、米日安
保条約を認めるか廃棄の立場かしかありません。しかし、靖国神社が反米的という論
法は、戦後の米国による日本支配を容認する方向にも利用されかねません。もちろん、
現在の日本の支配層の2つの要素、旧保守層の流れをそのまま汲んでいること+対米
従属、の間の矛盾を衝く、という戦術として考えれば、一定の有効性もありうるでしょ
う。ただ、米国の思惑でこの問題が処理されてゆくことを支えることにならないか、
という懸念があります。
1998年の米日安保凍結の暫定内閣論(不破氏)、2003年の東京都知事選挙で石原氏
が横田基地返還を訴えたのに共産党候補は選挙公報で触れなかったこと、そして本年
の国連安保理常任理事国入りに「賛成だが条件がある」論ー対米従属化では安保理に
米国の副官が入ることになるはずー 、これらの一連の動きが、一層加速されてゆく
のは杞憂でしょう か?