アジア・アフリカ・ラテンアメリカ
いまこの世界を
どう見るか 不破哲三
久しぶりに図書館で表題の本を見つけたので読んでみることにした。
往年の不破さんからは、考えられないような平易な文章の書き方で全体的には、好
感が持てた。
特に日本の過去の侵略戦争の歴史、とくに司馬遼太郎の「坂の上の雲」に対する解
説など。なるほどとおもわされた。
しかし、全体の骨子は、現綱領にもとづいているので、無理のあるものだと思う。
大体不破さんと言う人は、過去の自分の言説には責任をとらない人のようで、後講 釈に終始している人だと思う。
これからの社会がどうなるのかという予測などは立てられない人であろうと思う。 彼は歴史家になるべき人で、政治家としては、失格の人だと思う。
特に私がひっかかるのは、資本主義を経ないで社会主義に進む道があるというくだ
りである。
その前段に資本主義が耐用年数がきているという主張があるので、そういう幸運な
後発的国はあるかもしれないが、それが中国、ベトナム、キューバでは、ちょっと頭
を傾げてしまう。
中国には、現在、日本の全国民の数を上回る超富裕層がいると聞いている。一方で、 農地を奪われて流民と化す貧民のいる社会でこれほど差別の多い国もまれではないか とおもえるのに。不破さんの目は何を見ているのかと思う。
資本主義憎し、の観念から、史的唯物論をねじ曲げているのではないかと思う。レー ニンが革命を起こしたことで、歴史は自然な流れを逆転させてしまったことを、日本 の侵略戦争を反省するのと同じくらいの重みで反省してほしいと思う。
レーニンは、封建制から、一飛びに社会主義に発展させたのではなく、志とは違っ
て、結果としては、奴隷制に歴史を逆転させたのだと思う。レーニンの末裔たる、北
朝鮮は21世紀の現在まぎれもなく奴隷制国家ではないだろうか。
レーニンの革命は、革命ではなくクーデターであったと思う。
その反省なくして、あたらしい社会主義は生まれないと思う。
レーニン好きの不破さんがいつそのことを口にするだろうか。
10年くらい前にテレビで口にしていたのを聞いたことがある。
だから本当は解っているのだろうが、人気とりに終始して体裁ばかり考えている人
だと思う。本音を口にして弱さを前面に出した方がよい結果が得られるのに。残念な
ことである。