8月20日、朝日新聞オピニオン欄に、古川勝久氏(社会技術研究開発センター研究員)のトンデモ論文が載った。
タイトルは テロの拡散「来襲」前提 日本も備えをーーである。
一部のみ引用するが、とても、朝日新聞の記事とは思えない。今の反動をヨイショし、治安国家体制を推し進めるとんでもないものである。私は、即、抗議のメールをしたが、なにか、底知れぬ戦慄を感じた。ここまできたかという感じである。
つくる会の歴史教科書問題、君が代・日の丸強制問題、に始まって、こと、英国テロに関しては、今、英国社会からその治安体制に疑問と非難が巻き起こってる最中である。
テロの起こる土壌も根源も、その意味する命の叫びさえも一顧だにしない冷酷人間の殺人鬼よろしいものの発言に、私は、満身の怒りを込めて、糾弾しなければならない。
先に国民保護法などといった戦争体制が出来上がり、じわじわと我々の手足を縛り始めた矢先、同じく戦争国家のテロ事件を契機に、まんまと更なる補強をするこうした輩の役割は断じて見過ごすわけにはいかない。
氏はいう。「日本のテロ対策では、法律とその施行計画を作れば、それでよしとしがちな風潮がある。しかし、関係省庁間の縦割りの問題、中央政府と地方自治体、政府と民間との協力体制など、まだ数多くの課題が山積している。計画が実際にうまく機能するかどうか、官民が協力して演習を通じて検証し、常に改善し続けることが重要だ。緊急事態基本法の早期成立も望まれよう。・・・テロ防止のための警察権行使に関する新たな法整備の検討も必要かもしれない」
かくて、日本は、過酷な戦争整備が、確実に、強固に完成していくのである。ほとんどの人間が、のほほんと、一国平和主義のゆで釜に浸っている間に。恐縮ながら、対抗論として、週刊金曜日(8月12・19日号)に掲載された私の主張を転載させていただく。
日本は戦争渦中
――自爆という過激なメッセージを聴け!!
戦後60年、世界はテロリズムの観がある。9・11からどれほどの「テロ」が頻発したことか。国家テロに抗する自爆攻撃という強硬手段。一つの命が他者を巻き込んで、確信的に自滅する。なぜか、核心のメッセージは、回を追うごとに隠蔽されていく。
9・11同時多発テロ事件を受けてのビンラーディンのあの、倫理的・合理的な主張は、物珍しさもあってか、全メディアが流した。国家側の下卑たブッシュ・メッセージも流された。先月起きた英国テロ、エジプトテロも「イラクで虐殺に加担する英米軍」に言及したものであったらしいが、メディアはほとんど無視した。
直後、地下鉄・ストックウェル駅では、非白人・英国籍の無実の青年を複数の警官が取り押さえ、頭に8発の銃をぶち込んだ。「容疑者」を即殺害する英国の治安体制は、ナチズムを彷彿とさせるものがあるが、弔問には一万人の英国民が訪れた。
ちなみに、先に自爆した4人の実行者の一人(30歳・男性)は、障害児教育に熱心な先生で、生徒や親の評判もよく、近く2人目の子どもが生まれる予定だったという。
英国で160万人といわれるイスラム教徒は「我々はテロを許さない」と、一線を画し喧伝することで、テロリスト嫌疑を回避するのが関の山。いずれも、爆弾の下にある「人間」への視点は皆無である。
翻って、日本国内では、恥ずかしいほどの垂れ流し報道が跋扈する。国民もまた、日本メディアに順応する。教育現場で、政治・経済界で、戦時の光景が展開する最中、「テロも戦争もイヤ」「戦争になったら、好きなバレーボールもできなくなる」から、「憲法を守って、戦争に反対する」という言説がまかり通っている。
イラクに派兵している日本は、戦争渦中ではないのか。平和憲法を持つ日本は、自衛隊という名の軍隊をイラク戦地に送っているのではないのか。 イラク・アフガン向けに、兵站支援であれ、イージス艦搭乗であれ、はたまた、無人機での情報収集であれ、押しも押されもせぬ、戦争(殺戮)業務ではないのか。
主に、被侵略地のアフガン人やイラク人ばかりが、日米英軍の犠牲になっているだけである。隙だらけの日本原発列島に、この60年間、外部から一度のテロも起こっていない事実を、胆に命じるべきである。このままいけば、間違いなく、次の戦地は日本である。
どうか、これ以上、ブッシュ・ブレア・小泉・石原の戦争策動に乗らないでもらいたい。目論まれている戦争教科書導入という狂気は、断固阻止してほしい。
日本の平和は、自爆者の主張する「イラクから自衛隊を撤退」すればいいだけである。
さらに、世界の平和は、国家テロを仕掛けなければいいだけのことである。その上で、「人間の異議申し立て」に耳を傾けることである。