韓国のパンギムン外交通商相は7日、扶桑社の中学歴史教科書の採択率が1%未満だったことについて「市民団体が日本の社会と連帯して、歪曲教科書の採択阻止のため努力した産物だ。健全な良識を持った市民社会が日本で確固とした勢力をなしていることを改めて示した」と述べた。
何かむずがゆい感じもなきにあらずだが、私たちの運動がこのように評価されたことを、喜んで確認してもいいかもしれない。
確認するまでもないが、私たちは保護者、教育労働者を中心とした現場の踏ん張りによって、つくる会側の「野望」をとりあえず粉砕阻止した、彼らの目標であった東京50%全国10%を遥かに下回る1%以下に抑えることが出来た。
確かにそれは勝利である、しかしより基本的に言えば、つくる会教科書の出現によって、他社の教科書の記述内容が、特に現近代史の部分で大幅に後退したことも十分すぎるくらい確認する必要があるし、更にまた彼らが発表した4年後の「地理教科書への進出」をより重い課題として、忘れずに確認し、その攻撃に備える必要がある。
韓国でも中国でも取り敢えずは、「つくる会」教科書の採択の阻止にほっとはしている、しかし戦争被害を受けた高齢者の人々には日本の教科書そのものに不信感を抱いていることは間違いがない。
私自身、韓国でそのことを随分と指摘された経験がある。
さて「つくる会」側の地理教科書への進出の意図はスケスケに、見え見えである、歴史認識や史実以上に領土問題はナショナリズムを掻き立てるからだ。
竹島(独島)、魚釣台(尖閣列島)、北方領土、沖ノ島、領土問題は捜せば幾らでも出てくる、小泉政権が総選挙に勝利しより戦前への回帰、戦争国家への転進が明確になればゾロゾロと出てくる。
つくる会や日本会議、安倍や中川にとって、「15年戦争・大東亜戦争は自衛のための戦争だった」、「朝鮮は植民地ではなくて日本だった」「東京裁判は勝者による敗者への裁判」なのだから、樺太南部や台湾、遼東半島、朝鮮南部、南洋の島々さえ、「日本の固有の領土」だったという意見すら出てくるだろう。
「つくる会」の地理教科書にはそれらが赤く網掛けで塗られるかもしれない、しかも領土問題は、ナショナリズムの原点故に、つくる会の歴史や公民の採択に反対した人々の一部も賛成に回る可能性がある、そして小泉反動政権ないしはその亜流政権下だ、今から余程備えておかないと、歴史・公民・地理3点セットでの採択と言うこともありうるのだ。
この前から書店で販売され始めた、極端な排外主義で若者向けのマンガ「嫌韓流」は、最初の一週間で20万冊を売ったと言う。
総選挙の結果次第では、更にこの傾向が強まるかも知れない、「努々油断召されるな」と言うことだろう。