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不破講演への疑念

2006/01/04 一粒の麦 50代 会社員

 ずーとこのサイトを拝見してきました。いろいろな方々 の意見を参考にして改憲反対の闘いの栄養にしてきました。し かし、自分の意見を正面から述べたことは今までにありません でしたが、改憲反対運動を地域で前進させてきたものとして、 とても気になる論調が出ているので、少し批判的な自分の意見 を述べさせてください。不破氏は「憲法9条改定論の三つの盲 点」と題した11.17講演(日本記者クラブ)を行っていま すが、そこには今までの共産党の憲法をめぐる路線的、思想的 な変質の集大成が表されているのではないかとおもいます。

 第一 憲法9条を歴史的、階級的背景抜きに不磨の大典のよ うに描き、労働者人民を武装解除する。戦後憲法は敗戦帝国主 義・日帝の武装解除という意味ではアメリカに強制されたが、 しかし、天皇制にしがみつくことでしか延命ができない日帝が 、高まる戦後革命の波の中でぎりぎりの譲歩のなかで天皇条項 と9条の平和主義の並立という矛盾の固まりをつくったものと してとらえられる。これはパリ不戦条約の批准でも似たような アクロバットをやっているが、日帝が「人民の名において」と いう第1条を勝手に天皇の名においてと読み替えて批准までし たのは、「自衛権」を認められたが故である。それ以後、事変 の名で侵略をしていった戦前と現在の「事態」と読み替えてみ れば現代の帝国主義がやろうとしていることは本質的になんら 変わらない。危機に陥った帝国主義が延命のためにはどんなア クロバットもやるのだということを暴露せずに、不破氏と共産 党は、あえて9条が真空地帯の中で生まれた清純無垢のそれ自 体として力を持つもののように描いてきた。

 第二 戦後の帝国主義による侵略戦争に対してアジア・アフ リカの人民がどれだけ苦難の末に民族解放闘争に勝利したかを 語ることをせずに、国連憲章を根拠にした世界平和を描こうと するインチキ。
 国連憲章の条文(51条)をよく見れば平和のルール=戦争の ルールであることがよくわかる。

 第三 パリ不戦条約(ケロッグ・ブリアン条約)以来、帝国 主義は世界戦争の結末が労働者の世界革命に直結することをお それて、世界戦争にならないように侵略と帝国主義支配を秩序 立てようとしたにすぎない。
 ここから「自衛権」なる概念が発展し、国連憲章51条では 集団的自衛権をも認めるようになって、戦後のアメリカの侵略 戦争を正当化している論理をつかずに、逆に帝国主義の土俵の 上に立って平和外交や平和のルールなどを言っている。帝国主 義の平和外交なるものは絶えず軍事と背中合わせであり、それ なしにはありえない。スポーツのルールのように対等の立場で の話し合いなどはあり得ない。

 第四 有事には自衛隊を活用するということを以前から主張 していたが、あらたに「海外で戦争をやれる自衛隊」論とも言 うべきものを展開している。帝国主義軍隊として自衛隊が他民 族を殺せる軍隊になるという意味の海外で戦争ができる軍隊と いうのではない。
 彼らが言うのはガイドラインは安保条約に基づいているがイ ラク特措法などは安保条約とは関連づけられてないから「自衛 」の看板をかかげての海外派兵でなく、アメリカの先制攻撃戦 略に連動する海外派兵へと性質が変わった。というものである 。
 一見侵略戦争反対で海外派兵反対を言っているかのようだが 、これは野坂参三以来共産党の一貫した「自衛戦争は否定しな い」論であるように思われる。「自衛」のためならオーケーと いうサインなのではないだろうか。
 彼らは北朝鮮がミサイルを撃ち込んできたらどうするんだ。 という帝国主義者の恫喝に答えるものをもっていない。一緒に なって有事には自衛隊を活用しよう。という。
 そもそも侵略戦争を侵略するぞと言って侵略する帝国主義は かつてなかった。民族の自衛をかかげて他民族を抑圧し、資源 を略取し、戦火で焼き尽くしたのだ。中国の脅威がなかったら とっくに北朝鮮に自衛のための戦争を自衛隊が仕掛けていても 不思議ではない。それほどに「拉致」発覚以来、排外主義は激 しくなっている。そのことに屈服している。

 第五 ブルジョアの軍隊である「国防軍」をそのまま温存し 、労働者人民の政権ができたら「人民軍」として一定の「民主 化」をしながら置き換えることができると考えている。とてつ もない幻想を人民に与えている。ブルジョア国家の最大最強の 暴力装置であり、最後の体制防護装置なのに、それをいったん 完全に粉砕・解体することなく人民軍などにはなり得ない。将 官が忠誠を誓うとたたき込まれてブルジョア国家のために身命 を賭して闘うのが国防軍だ。元々、国家とは資本主義国家のこ となのだ。
 以上、雑感ですが、こういう批判を持ちながらも現場でまじ めに戦っている共産党員たちとは統一戦線をともにしながら真 剣な議論をしながら、闘っていくというのが私たちのあるべき 姿かと思います。
 ちなみに不破講演はJCPサイトの講演要録を参考にしていま す。