さて、前回に続き、大樹氏の民主主義論への疑問です。 大樹氏は1月18日の投稿で、以下のように述べている。
1つには・・概ねだが殆ど何のルールも脈絡もなく<民主主義
は正しく、普遍的なもの>として評価されている。(私自身は
一定のルールと歴史的脈絡の中で民主主義を論じているのだが
)・・それはイラク戦争を始めたブッシュが大義名分の一つと
した<民主主義と自由>と同じで(同じ!)、何ら変わること
がない。私の地方では<味噌も糞も一緒>という少々下品なた
とえをよく使うがこれではブッシュが持ち出した只の口実に過
ぎない<民主化・民主主義>と、日本国憲法上規定されている
民主主義や(そのかなりの部分はスポイルされて未実施・未達
成のままだが)欧州先進国にみられる民主主義とをそれこそ・
・何のルールや脈絡もなく・・一緒くたにしてしまっている。
まさに・・味噌も糞も一緒・・の乱暴な議論だ。
民主主義に対するこういう・・何のルールや脈絡も無い・・
乱暴なきめつけが大樹氏にはどうも多すぎると思うのだが。再
度、市川正一の戦前の<共産党闘争小史>を論じた大樹氏の引
用を見てみよう。
・・、・・第三、共産党はブルジョアジーの規律、現在国家の
法律に服従するものではなくこれに敵対するものであり、ただ
国際的プロレタリアの規律(中略)にのみ服従し拘束されるも
のであること、すなわち共産党がブルジョアに対して非合法で
あるのは、全くプロレタリア階級本来の性質であり、自国のビ
ルジョアジーに反抗して万国の労働者が団結することは、いず
れの国のプロレタリアにとっても無条件の信条である。・・と
引用し、続けて・・
・・この党史は現在でも十分通用するものと思う、情勢はより
厳しい。・・と主張している。
(より厳しい!)ここでも何と戦前の軍国ファシズム体制と
現在の一定の民主化された(半民主主義だが)社会体制の区別
が全くなされていないどころか、現在の民主化された社会体制
のほうがより厳しい!
などという乱暴な結論までもが・・何のルールや脈絡もなく
・・突然もちだされている。(さりげなくだが)
さらに続けて、
・・しかし、かっては獄中においてさえ、このようにきっぱり
と基本路線を明確にできる共産党指導者が存在していたのであ
る。・・今の共産党指導部に・・<真のプロレタリアの党>と
はなんなのか聞いてみたいものだ。・・
と主張している。
つまり、プロレタリア階級本来の性質に基づけば、前衛党は
非合法活動をするのが当然であり、現在の民主主義の規律など
に従う必要など全く無いということになる。それが大樹氏の言
う・・きっぱりと明確な(前衛党の)基本路線・・なのだろう
。
そして現在の民主主義などはそもそもブルジョアの作った勝
手な規律でそれは戦前の軍国ファシズム体制よりむしろ厳しい
のだと言うことなのだから驚くべき主張だ。
それこそ・・何のルールも脈絡もない・・大樹氏の勝手な断
定に私には見えるが大樹氏はどう応えるのだろうか?一言で言
えば、これでは
マルクスやレーニンを唱える<左の>極反動ということにな
ろう。
2つには、普通選挙を論じて、以下のように述べている。
・・民主主義の代表例は<普通選挙権>だろう。<貧しい人も
お金持ちも同じ小さな1票>を投じることによって<主権者と
しての権利>を行使し、代議員に民主主義をゆだねる。・・し
かし、本当にそれが民主主義なのか、・・私はこの民主主義は
根本的に間違っていると思う。実際お金持ちと貧乏人の一票は
重さが違うし、ルールも同じとはなっていない・・私は民主主
義の社会とは、貧富の差が無くて、豊かでゆとり があり、平
等の権利を持ち、個々お互いが社会の主人公として、自由に批
判討論し、形成されていく社会のことだと思っている。・・・
と結んでいる。
ここで一つ指摘しておけば、一票の重さ、つまり価値の差は
実際には現在、以下のようになっている。
衆議院の例
徳島1区に対して、東京6区では格差2、18倍で現在最
大
参議院の例
島根県に対して、東京は格差5,06倍で最大
以下、対島根で、千葉4,87倍 大阪4,74倍 北海
道4,72倍 神奈川4,66倍 兵庫4,51倍 福岡4,
05 倍と続いている。
これを、都道府県別県民所得で比較すると
島根2541千円(以下同じ)
東京4365 1,72倍(対島根)大阪3303 1,
3倍
神奈川3262 1,28倍 千葉3205 1,26倍
北海道2865 1,12倍 兵庫2845 1,12倍
福岡2660 1,04倍
となっている。(大樹氏は金持ちの一票のほうがより重いと言
いたいのだろう。)
したがって、むしろ、貧しい地方農村地帯の方が一票の重さ
は重いといえる。所得でいえばもちろん、より低所得層なのだ
。したがって、大樹氏の主張は一票の重さについてはその逆に
なっている。(これは誰でも知っていることと思っていたのだ
が。)どうしてそうなるのかは、だから、所得によるのではな
く、別の次元の政治力学によるのだ。もちろん保守自民党勢力
に伝統的に有利な政治力学によるのだが、それに対して、都市
部でもニートやフリーターといった従来は最も自民党からも政
治そのものからも遠いと思われてきた、若者層を新たに支持層
として開拓しつつあるのが小泉政権の新しいところというわけ
だ。これにはマスコミ向けのパフォーマンスが大いに関わって
いる。ただし、選挙のルールが公正ではないのは大樹氏の言う
とおりだと思う。
因みに、他の先進諸国では一票の格差は以下のようになって
いる。
英国1,04倍 米国1,10倍 仏1,10倍 独1,1
5倍
これ以上の格差は法の下での平等の原則に著しく反するとい
うのが常識である。
1,2倍を超える国など無いのだ。いかに日本の民主主義が
保守反動勢力によって、換骨奪胎されたものであるかがわかる
。
それだからこそ、憲法に規定された民主主義を忠実に実施・
達成していく運動を展望すべきであると私は主張しているのだ
。(決して、・だから民主主義のルールや規律など無視して非
合法活動を実践すべき・などという大樹氏のような主張ではな
い)
また、大樹氏のいう貧富の差の無い社会での民主主義はつま
り、共産主義社会での民主主義と言うことになろうが、それは
未だ、マルクスの試論の域を出ないものだと思っている。(予
言と言ってもよいが)では、現在の社会での民主主義はどうか
?そこが問われているのだが、これまで論じてきたように、大
樹氏の民主主義論は、それは戦前の軍国ファシズムと大差ない
どころか、より厳しい社会体制であるとのことらしい。これで
は結局民主主義など、頭の中にしか(夢想する共産主義社会に
しか)存在しないということになろう。(つまり現実社会では
民主主義のほぼ全面否定だ)
いやはや、なんともはや、、私の早とちりならいいが、、大
樹さんの反論はどうだろうか。
追、
次回以降は民主主義論を社会主義論・革命論に絡めて、論じ
ます。
とってもとっても革命的な日本革命的共産主義者同盟全国委
員会じゃなかった(おっとこちらは中核派だった)、中央委員
会派の(つまり、旧第4インター)主張も併せて紹介します。