以下の手紙は、私の「千坂史郎の時代通信2006」に寄せられた銀河さんに対して、掲示板上で書いた公開書簡の返信である。
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いつもご丁重なお言葉をいたみいります。
銀河さんのお気持ちは痛いほど伝わってきます。
大きな世の中のうねりは、渦巻き滔々と流れてゆきます。
流れる大河が、時にはあまりにも絶望的な時期があります。
銀河さんのように言行一致で誠実に闘っておられるかたほど、その絶望は深いとお察し致します。
きょう2月8日の毎日新聞朝刊で都留重人元一橋大学総長の死を知りました。
戦前に学生運動に参加して旧制一高を退学となり、アメリカにわたりハーバード大学で学びました。「リベラルな社会主義」を標榜して、近代経済学を基盤に広範な社会経済学をうちたてました。
「忘れられた思想家」で安藤昌益を発掘したE・H・ノーマンが、トルーマン・ドクトリンに基づくレッドパージで追われ、自死をとげるという悲劇がありました。そのことに都留さんの証言が疑われたこともありました。誠意を見失わず、なんと90歳を越えての生涯の取り組みでした。
私は、都留氏の逝去を知り、多くの人間の希望と良心とが営々とつなぎとめてきた「文化的財産」というバトンを次のランナーに受け渡すことが、私達戦後民主主義世代の任務と考えます。私たちが前の世代から受け止めたものをさらに次の世代に渡したい。それは不十分なものでしかないけれど、次の世代が確実に受け止めてくれるよう信じたい。継承するだけのきっちりとした努力は惜しむまいと思うのです。
決してくじけまい。
闘うひとびとほど困難な闘争によって多くを失い、つらい体験にうちのめされる。
それでも、継承してくれる明日の世代のしなやかさに、信頼を託したい。継承するに足るだけの厳しさは、若い世代に示したい。
これから、ますます「風雨は強くなっていくでしょう」(「風雨強かるべし」広津和郎著作)。その逆風を忍び耐えていくことが、われわれの最大の任務となるかと思われます。
銀河さんのご健康とご多幸とを祈念するしだいです。
千坂史郎拝
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以上です・・