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ガセメールを笑えない日本の対北朝鮮外交

2006/03/03 アンクル・トム 60代以上 無職

 世界的に権威のあるイギリスの科学雑誌「ネーチャー」 (06年2月23日号)の論説によれば、横田めぐみさんの遺 骨をニセモノとした日本の鑑定結果が不確実なものであること は、今や、世界の科学界の常識のようだ。
 論説では、まず、次のようなエピソードを紹介している。こ の二月の金正日の誕生日には、日本の朝鮮総連でも祝賀パーテ ィーが開催されたが、そこでは、日本に対する祖国の外交的勝 利に乾杯したそうである。その勝利とは、遺骨のDNA鑑定に 関するものである。先ごろの二国間会談では、北朝鮮側は、D NA鑑定を議論するための研究者のジョイントミーティングを 提案したが、日本側は、初めの鑑定が正しいとの解釈に固執し て、これを拒否したという。これはしかし、日本側には道理は ない。これがどうやら、北朝鮮側の外交的勝利ということらし い。
 分かりやすく、最近話題のことに例えれば、一時の永田議員 や民主党のように、根拠も示さずに、メールが本物だと言い続 けるようなものである。この問題に関して言えば、多くの国民 は正しい判断を下したと思う。しかし、遺骨のDNA鑑定に関 しては、これと全く同じ構図であるにも拘わらず、多くの国民 は日本政府の立場を支持しているようだ。しかし、厳正な科学 的な立場に立って眺めれば、日本政府の対応は一時の永田議員 や民主党のそれと同じなのである。
 あの遺骨は汚染されていて、その汚染物のDNAを鑑定した 可能性が最も高いと思う。だから、北朝鮮の提案を受け入れて 、再鑑定したところで、鑑定不能との結論がでるだけで、政府 の立場に立ってみて、これまでの外交政策を根底から改める必 要が生じるとは思えない。一体何を恐れているのだろうか。「 ネーチャー」の論説は断じている。例え、鑑定結果の不確実性 を認めても、それは一時的に面子を失うのみで、明確にするこ とによって、日本の立場は長期的には強まるのだと。
 永田議員や民主党が深追いしたために、自民党と堀江被告と の関係など追求すべき問題がすっかりと影に隠れて、彼ら自身 が窮地に立ってしまった。「ネーチャー」の論説もそれと同じ ような指摘をしているのだ。科学的データの間違った解釈に基 づく主張は予期しない裏目の結果をもたらす。つまり面子を失 うのみでなく信頼さえも失うことになるというのだ。
 北朝鮮は経済的に困窮しているから、こちらの無理が通ると 日本政府は思っているのかも知れない。また、相手によって、 策を使い分けるのも外交かも知れない。しかし、BSE問題な どでも分かるように、科学的データも大きな外交の切り札であ ることは間違いない。その科学的データの間違った解釈を相手 に押し付けるような外交をしていると日本は思われているので ある。これは重大な問題ではないだろうか。
 日本の科学者の論文がもし「ネーチャー」に掲載されようも のなら、ほぼ、マスコミは飛びついて報道する。それだけ、雑 誌の権威を認めているのである。しかし、昨年の一月以来、遺 骨鑑定問題に関するこの雑誌に載った論説にはあまり触れない ようである。
 科学的社会主義を標榜する日本共産党も、遺骨鑑定の政府発 表を受けて、それまでの沈黙の対応から、急に能弁となり、経 済制裁容認まで言及しだした。政府の情報操作によって、丁度 、ガセメールを見せられた永田議員のように、日本中が思い込 みで興奮してしまったのは反省しなければならない。今後、歴 史認識の問題などに関して、近隣諸国と学問的な共同作業をす るという。しかし、科学的データの間違った解釈と世界的に権 威ある科学誌から指摘され、それを正せないようでは、歴史認 識などのデリケートな問題で実りある成果が上がるとは思えな い。