風来坊様へ。
自衛隊の活用論についていくつかにわたり私の考え方を述べてみたいと思います。
まず第23回党大会における綱領改定についての中央委員会報告の第4章(民主主
義革命と民主連合政府)の一節において革命の任務について以下のごとく規定してい
ます。
「民主主義革命が達成すべき任務が資本主義の枠内での民主主義的改革であることを 明確にすること」
すなわち、当面の民主主義革命の任務があくまでも資本主義の枠内での民主的改革
であり、まず、この改革の実現のためには、国民多数を結集した統一戦線が国会にお
ける多数を占め、統一戦線の政府すなわち民主連合政府の樹立を勝ち取らねばなりま
せん。しかし、同時に民主連合政府樹立の後にあっては、統一戦線の政府が国の機構
全体を名実ともに掌握し、行政の機構全体をまったくリニューアルし、統一戦線政府
が国民的な諸政策の担い手となるためには長期間にわたる民主勢力の前進と国民のた
たかいを不可避なものとするはずであります。
そして、いわゆる米日支配層による反動的な支配の道具である現在の国家機構(自
衛隊を含めて)が、民主主義改革の最初の段階では、そのままのかたちで残り、それ
をそのままの形で民主連合政府は受け継がざるを得ない状況とならざるを得ないでしょ
う。
もちろん、私も風来坊様のおっしゃるとおり「労働者階級は、できあいの国家機構
をたんにその手ににぎり、それを自分自身の目的のために使うことはできない」(マ
ルクス)ということは承知しているつもりであり、官僚的、軍事的なできあいの国家
機構の破壊があらゆる人民革命の前提条件であることは科学的社会主義の革命論であ
り、そのイロハであることも承知しております。
この意味からも、できあいの軍事的国家機構である自衛隊の解体は民主主義革命の
避けて通れない課題であることは科学的社会主義の立場に立つかぎりは常識に属する
ことであることも認識しています。
しかし、自衛隊の解体という問題が民主主義的改革の初期の段階、すなわち民主勢
力が国会の安定的多数を占めるまでの紆余曲折に満ちた段階において解決できること
でありましょうか。リアリズムの立場から考えると、残念ながら私はとてもそうは思
えません。
今の国民世論においては自衛隊を解体すべきだという声は圧倒的少数に過ぎないこ
とは否定できない事実であります。そして、この国民世論と国民意識は民主連合政府
が樹立された後においても、急激に変わることを想定することは現実的でありません。
自衛隊必要論の立場に立つ世論は根強く残るでしょうし、軍事力を保持することを
必要悪と考える人々も多数存在するはずです。そして、このような状況の中で民主主
義的改革はスタートを余儀なくせざるを得ないのであります。
また、現実の状況において中国の国境侵犯事件がおこったり、北朝鮮のミサイル開
発と発射実験が繰り返されるなかで、不安を感ずる人々はたくさんいます。そして、
ある程度の軍事力は必要だと考える人が多いことは否定のできない現実であり、この
現実を所与の条件として、将来樹立されるであろう民主連合政府は受け継がざるを得
ないでしょう。
ここから国民の合意を踏まえての憲法9条の完全実施(自衛隊の解消)を長期的目
標としてめざしながらも、さしあたっては現実に存在する自衛隊の活用も国際情勢の
展開と進展次第では避けて通れない選択肢とならざるを得ないでしょう。
もっと踏み込んで言えば、すくなくても自衛隊の活用そのものでなくても、「自衛
隊活用論」は政策的選択肢として避けては通れないことと思います。それは自衛隊の
活用ということが現実となるようなことはあってはならないことであると思うからで
あります。
ところで、自衛隊の解体についてのヴィジョンと展望でありますが、今の段階でた
とえ概括的であってもその青写真を描くことは抽象的な可能性の枠の中の議論となっ
てしまわざるをえないと考えます。
今は自衛隊の解消をヴィジョンとして確認するだけで十分な段階であると私として
は考えます。
限られた時間の中でこの拙文を作らざるを得ませんでした。要領を得たご返事とお
答えになっているかわかりませんが、このように私は考えます。