環境省は、今年の夏に向けて、「国立・国定公園内、チョウ類指定種の採取禁止政令案の準備を進めている。これは今までの特別保護地区内での規制に加え、特別地区内でも規制しようというものだ。
これに対し、日本昆虫協会の掲示板に新部さんより、以下のような投稿があった。
私も殆どの昆虫少年同様、採取から入った人間です。私の場合、それは本能と言っても過言ではありません。美しいモノに惹かれ、自然の仕組みを身を以って体験してきました。
今後、「採取はダメ」と注意され、不思議の森への入口を閉ざされてしまった子どもはどうなるのでしょう。(全員がムシ採りと思いませんが・・・・・)
自然に対する興味を失い、周囲の開発がドンドン行われても、物言わぬ無関心な大人になりはしないかと心配でたまりません。
そういう目で見るからそう見えるのでしょうけど、環境省サイドも、モノ言わぬ人間ばかりになれば、開発許可を出しやすいですよね。
各都道府県でも、国の指示・指導により、県立公園などの自然公園でも、同様の規制を掛けるようになると思われます。
栃木県の場合、全森林の39%が何らかの自然公園です。新潟県では37%。
規制が掛けられた場合、その運営は当然県が実施します。政令を作るのは国ですが、それを国民に守らせるのは県行政の仕事です。保護施策に要する費用は補助金として殆どでないでしょう。
現在、自然保護監視員は栃木の場合、全県下でたったの30名です。それではとてもカバーしきれませんから、PRして一般のハイカーにも協力を求めることになります。
「網を持って、虫捕りしている人を見かけたら通報してください」と。
PR不足の場合、親が子どもに網を持たせることは十分にあり得ます。そんなとき、一公務員である小生は、虫を捕る楽しさ、感動、興奮を知っている人間として、同じ人間の子どもからその感動を奪うようなことができるか?正直、小生には出来そうにありません。
昆虫の生息の特徴は、
第一に一回の産卵数が、極めて多い事(少ない昆虫でも数十、多い昆虫は数百以上)
第二に、卵から成虫(産卵)までの周期が極めて短い事
第三に、極めて移動性が高い事
以上の特徴から採取だけが原因で絶滅することはありえない。
よく絶滅の可能性があると話題になるギフチョウを例にとると、東京の場合かつての生息地は、八王子の御殿峠、高尾山周辺、町田の七国峠、相原トンネル。全て、1960年代後半から1970年代前半までに殆ど確認できなくなった。
逆に、ツマグロヒョウモン(食草はスミレ)は、近年東京でも確認されている。
ナガサキアゲハ(食草は柑橘類)は神奈川県でも確認されている。両者共、1990年以前は、東海地区が北限だった。
他の昆虫でも、ハマダラ蚊(マラリア蚊)が青山墓地、ヒトスジシマ蚊(天狗熱)が群馬県で確認されている。何れも亜熱帯に生息していた蚊で日本にはいなかった。
また、モンシロチョウ(食草はキャベツ)は、スジグロシロチョウ(食草は、菜の花系)に入れ替わり、キアゲハ(食草は、セリ)は殆ど見かけなくなった。他の大部分のアゲハ類食草は、柑橘類)は、都会でもよく見る。
これから言える事は、昆虫(上記の三点を満たさない生息域が限られた昆虫は除く)は基本的に採取位では、絶滅することは無い。環境の変化に起因する事は明らかだと思う。
それにも拘わらず、採取規制という方向をとるのは、真の原因の本質を隠蔽する悪質な政策と言うしか無い。それとも新部さんが言うように開発に無関心にさせる要素も含んでいると思う。
また、人員的に足りなくて、ハイカーなどに呼びかけた場合、監視社会になっていく要因の一つにもなるだろうし、親が持たせた網を他の人に注意された場合、子どもの気持ちは、どうなるのだろうか。
こんな規制は何一つ良い事は無い。
私が、泊まったことのある山梨県のペンションのオーナーが、長坂町のオオムラサキの規制に対して、雑木林(オオムラサキの成虫の餌の樹液の出る広葉樹を含む)を伐採して、榎(オオムラサキの幼虫の食草)を植えてどうするんだろうね、と言っていた。
環境破壊、無秩序な開発、これを規制しないで、採取規制をする、このような真の原因を隠蔽する法律は、百害あって、一利無しである。
この典型的な例が、石原東京都知事のやっている、県央道を高尾山に通して、環境破壊をして、高尾山の昆虫採取を禁止する。
こんな事をやっていて、環境が守れる訳が無いし、生物の保護が出来る訳が無い。
こんな法律や条例には断乎反対しよう。