法政大学の五十嵐仁教授の五十嵐仁5/21の転成仁語の「 意図されているのは「日本の防衛」ではないに以下のような文 章があります。
前略
自民党の「新憲法草案」によれば、憲法の「改正」によって 新たに導入される内容は4つあります。一つは、「自衛軍を保 持する」との規定であり、第二は、それが「我が国の平和と独 立並びに国及び国民の安全を確保する」ためであると明示する ことです。
政府はこれまでも、9条の規定にもかかわらず、個別的自衛 権は保持しており行使することができるとしてきました。この 二つは、「解釈改憲」によってすでに突破された壁であり、今 回の「改正」はそれを条文上も明示するためのものですから、 新たに付け加わったわけではありません。
まったく新しく付け加わるのは、第3の「国際社会の平和と 安全を確保するために国際的に協調して行なわれる活動」と第4 の「緊急事態における公の秩序を維持し、又は国民の生命若し くは自由を守るための活動」です。今回の憲法改正で狙われて いる新たな目標こそ、この海外派兵と治安出動の二つにほかな りません。
とりわけ重視されているのが、「国際社会の平和と安全を確 保するために国際的に協調して行なわれる活動」です。これは 普通に読めば当たり前のことのように見えますが、そうではあ りません。
何よりも、国連の縛りがかけられていません。「国連決議に 基づいて」とか「国連の下に」という文言がないのは、国連の 活動とは無関係に、アメリカ主導の「有志連合」や「多国籍軍 」のような形で行なわれる「活動」であっても、日本が参加す ることを意味しています。
そして、そのような「活動」が「武力の行使を伴う活動を含 む」ことは「憲法改正草案大綱」の注に書かれているとおりで す。つまり、ここで日本は、イラク戦争でのイギリス軍のよう に、アメリカと共に戦争すると宣言しているわけです。
このような「国際社会の平和と安全を確保するために国際的 に協調して行なわれる活動」という規定に対応するのが、教育 基本法「改正」案の「国際社会の平和と発展に寄与する態度を 養うこと」を「教育の目的」とする規定です。
つまり、アメリカ主導の戦争が「国際社会の平和と発展」を もたらすとされれば、それに「寄与する態度」を養うことが「 教育の目的」になります。ここで期待されているのは、進んで 「国際社会の平和と発展に寄与する」こと、つまり「そのため の」戦争に協力する「態度」です。
偽りによって始められた侵略戦争であるベトナム戦争やイラ ク戦争もまた、アメリカにとっては「国際社会の平和と発展」 を旗印にしたものであり、それを鵜呑みにした日本政府はこれ らの戦争を支持・支援し、イラクには自衛隊を派遣しました。
このようなアメリカに対する軍事協力をイギリス並みの水準 まで引き上げようというのが、憲法と教育基本法を「改正」す る真の目的にほかなりません。
教育基本法の「改正」案が明らかになったとき「愛国心とは 本来、自然に湧き出るもので、それは当然の心情だ」という弁 護論がありました。「だから、法に規定しても当然だ」という のです。
しかしこれは間違っています。強制されなくても自然に湧き 出る心情なら、なにも法律に規定して強制する必要なないはず でしょう。
法で無理強いすることが必要なのは「自然に湧き出る心情」 ではないからです。わざわざ教育基本法で規定して強制しよう とするのは、外から教え込まれ、植えつけられることによって しか培われない特別の「態度」が期待されているからです。
ここで期待されているのは、「我が国と郷土を愛する」のと 同様に「国際社会の平和と発展に寄与する」ために自らの命を 投げ出すような「態度」です。そのような「態度」が自然に生 まれるはずはなく、一種の「マインドコントロール」によって 教え込まなければならないということになるのでしょう。
今回の「改正」で必要とされているのは、「愛国心」だけで はありません。想定されているのは、「日本の防衛」ではない からです。
「他国の利益のために他国を殴る」戦争で命を落とすことも いとわないような兵士を養成することが本当の目的です。それ は、日本の若者をアメリカに差し出し、戦争の手伝いをさせよ うとする巨大に陰謀だというべきでしょう。
在日米軍基地の再編と日米間の軍事的一体化という現実の変 化を背景に、このような陰謀が画策されたいる点に注意しなけ ればなりません。動きは多様ですが、その目指す方向は一つで す。
それは、アメリカの戦争に日本を巻き込み、手下の同盟軍と して戦争を手伝わせることにあります。略
日本の若者を、アメリカの「公共事業」の犠牲にしてはなら ないでしょう。軍需産業など、「死の商人」の餌食にすること は許されません。
私も憲法「改正」を復古調の愛国心として捉えていましたが
、それよりもむしろアメリカの戦争に日本を巻き込み、手下の
同盟軍として戦争を手伝わせる方に重点があるのを認識してい
ませんでした。
この転成仁語によって「教育基本法改正」案、憲法改正草案
大綱」、「新憲法草案」は一体のものであるということを再認
識した次第です。