ムーピンパパ様
この度は貴重なご指摘を頂きありがとうございます。
今回私がムーピンパパ様がご記述された内容は私の考えと基本的には大きな差異がないと思います。
それを前提に以下、ひとつひとつ私の考えを整理させて頂きます。
私の職業は医師です。これまで研修の関係もあり県連を二つ渡って参りました。院所は3箇所です。同一県内で二箇所の研修を行い、現在は別の県連に研修中の過程で移籍しある地方県連所属の院所に在籍しております。
以下、私の考えるところをいくつか整理し、問題解決が可能かを探ってみたいと思います。
《民医連という組織と私の関係について》
ムーピンパパ様が全日本民医連が発行する雑誌類をお読みになられているそうであることと、ご子息の方が民医連職員ということもあり、ムーミンパパ様は私が所属する組織においてかなりご理解して下さっていることと存じます。確かに、私は民医連という組織をあまり理解できていないかもしれません。
私自身の民医連との関係について述べたいと思います。
今の私は一人一人の患者様をどのようにすれば良心的に診療ができるか、一人の人間を診るという治療者の行動についてどうすれば「少なくともこの病院に来て悪くはなかったな。」という方法、即ち治療者患者関係の構築、診療・治療技術の向上が行えるかに関心を抱いている立場です。
その事に関心が強すぎるせいか、時折「偶然今いる場所が民医連だった。」ということなのかなと自己を解釈することがあります。つまり、私は組織への帰属意識がそれ程ないと思っています。
ところで、医療や福祉面でのサポートではカンファレンスが度々必要であり、それについては多職種間での意見を集約・統合するように意識しているつもりです。これが円滑にできることは労働時間が非常に長くなる点を除けば他の組織より長所を持つ点かもしれません。
《非党員者への待遇について》
「党員でなければ冷遇されているのか?」と、文面にありましたので敢えて触れさせていただきます。私は殆どの管理職が党員にあると申し上げました事は事実ですが、冷遇されているとは申し上げておりません。待遇については私自身関心があるので意見させて頂きます。
民医連の給与体系は他の民医連外組織との給与体系とは大きく異なります。単純に言えば医師の賃金が非常に安価である点です。しかし、度々問題になるのは経営面での人件費率が高い点と、医師不足問題です。
《私の考えと民医連方針との部分的な食い違い》
私個人の意見としては共産党の思想と民医連の思想が医療福祉面では反することがなく、全日本民医連は上意下達式に各県連に医療方針を提案してきます。(私の無理解故誤解があれば訂正してください。)
そして、上層部は共産党の地盤が強い地域程それを忠実に実行しようとします。(偏見であればやはりご指摘下さい。)
私は必ずしもこれまでの民医連が行ってきた方針について同一の考えをもつかという点ではそうでない部分があります。それは"差額ベッドはとらない"の問題です。
民医連が最も売り物にしている反面、それゆえ自己の経営環境を悪化させている側面もあります。
無産者医療者を自負される方々からは強く反発されるかもしれませんが、現在の日本社会で差額ベッドでも個室に入りたいと思う方は相当数おられます。重症度優先で差額なしに個室に入るという方法は賛成する面もありますが、現在の民医連の方針は貧困層中心の医療となることが前提に立つと思います。「差別なしの医療」が中所得者層敬遠に結びつく傾向があると私は思います。中所得者層の心を掴むこと、それは共産党の躍進にも繋がりそうに思いますが…。
確かに民医連は医局会で意見を言う権利を研修医も含めて保有しています。その面におきましても民主的であることは否定しません。しかし、それが現場の意見としては理にかなっていても全日本民医連の方針と食い違えば殆ど意見は通りません。単に私達非党員者が実力不足なだけかもしれませんが…。
《私が民医連各院所に危惧していること》
私が非常に危惧しているのは、真の意味で患者となる人々をうまく救済できていないかもしれないところです。研修指定病院でも以前と比べ確実に医療レベルは低下しています。ICU・CCUと呼んでもよさそうな重症ベッド病棟を廃止し、変わりに高齢者の福祉にばかり重点を置こうとする動きが複数の院所でみられるようになっております。
この事が若手非党員臨床医が幻滅し、多量に退職者を生む要因のひとつになっております。
ムーピンパパ様であれば、民医連内の医師不足問題が深刻であることはご存知かと思いますが、私の先輩や同僚等は上記に不満を示し相当数が退職していきました。臨床技術面では信頼たる方々だっただけに、個人的には非常に残念です。
ムーピンパパ様が民医連についてご信頼をお寄せくださっているのであれば、ある病気を患った場合民医連内院所を訪れてくださるかもしれませんよね。有難いことです。しかし、急性心筋梗塞・脳梗塞・急性腎不全・などの急性期疾患を扱う能力はここ10年でICU廃止と医師退職により大幅に減少しております。もし患者となった場合それでご満足でしょうか?
確かに高齢者が増加し、その福祉面に力を注ぐことは非常に大切です。私達は研修医の頃からその重要さを学習し、特に主治医が作成する介護保険意見書書類の作成には細心の注意を払い、適切な評価を受けられるよう診療録を洗いながらなんとか的確に所見を記し、審議会の評価者の目に届くよう最後の意見欄に記述する癖も身につきました。
開業医の先生方の中には意見欄に何も記述せず、不幸なことに患者様の要介護認定が本来のものとかけ離れたものとなっていることも実際目にしたことがあります。
しかし、学生達には甘い言葉や奇妙なオルグ(私は参加したことないので言う資格ないかもしれませんが、学生達は単なる無料旅行と思っている人もいます。)を行いながらとにかく医師確保を目指し、民医連医療の各論部分には深い話もないまま研修医を確保しただけでは民主的な非党員医学生の心をつかむことはできません。多くの若手(少なくとも30歳代まで)は急性期医療に関心がある事が多いのです。
これまでお世話になった民医連院所では時間外労働でも医師は超過手当てを要求しません。当直明けでも普通に働きます。(当直手当は頂けますが。)代休などありません。日曜日に働くと何週も休みがなかったりします。ある研修指定院所は一晩に救急車が10台近く来ることがあり、全く睡眠できないまま次の日の勤務を迎えるのです。もちろんそこでも医療過誤が起こると言い訳などできません。
低賃金・長時間労働・選挙前の異様なムード・事務方のお粗末な仕事ぶりに非党員医師達は疲れ果て、よりよい待遇があるところを探し民医連を去っていくのです。管理職についたところで、言いなり管理職になど誰もなりたくないでしょう。医師だけでなく、看護職では師長になると給与がさがります。夜勤をしないからですが、集団をまとめるのに時間外で夜遅くまで働いています。民主的であるが故に非役職者達が集団で師長を攻撃する場面もしばしばあります。非常にストレスのかかる現場です。
「管理職になれない。」のではなくて、「全日本民医連の言うことを聞くばかりの院所で管理職などなりたくない。」のが非党員達の本音かもしれません。(あるいは私一人の思い込み?)
現在の院所は私のような考えでもしっかり聞いてもらえる部分があり、大部分満足させてもらっております。共産党色が比較的薄いのが良かったかもしれません。
私の考えは皆様からは受け入れにくい面があるかもしれませんが、民医連の医師達が思っている部分の一部を表現したいと思い述べさせて頂きました。
ムーミンパパ様を始め皆様方のご批判があれば頂きたいと思います。