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一般投稿欄

アリョーハさんへのお返事2

2006/06/19 スカンジナビアン

 途切れたので続きです。
 さて、前回私は、社会保障の財源問題と消費税の問題から、 社会保障が、 ・・基本的には資本家階級から労働者人民への 所得(利得)の再分配であって、それ以外ではありえない・・ ことを論証しました。
 これは私だけでなく一般に広く常識となっていることでもあ ります。
 日本国勢図絵でも、そうした記述があります。(P467)
・・02年の社会保障給付費は83兆5666億円(前年比2 ,7%増)国民1人あたり65万5800円(2,5%増)、 ・・となっている。なお、国民所得比は23,0%である。こ の比率は、社会保障による所得再分配の度合いを示すものだが 、西欧先進国と比べ格段に低い水準にある。・・・
 つまり、西欧は高率の消費税が導入されているものの、それ でも格段に所得の再分配の度合いが高いのです。
 そして、北欧は西欧先進国に比べてより再分配の度合いが高 いといえるでしょう。
 OECD Labour Fource Statictics 1979~1999 によれば、(オランダに奇跡、スエーデンの挑戦に学ぶ・の巻 末資料集より)
       各国の対国民所得比      高齢化率
  スエーデン1996 年  46,2%    17,5 %
  仏  95年        40,9     15, 1
  独  96年        37,7     16, 3
  英  95年        29,6     15, 7
  日本 1998       18,9     16, 2
   同  1996       17,4    15, 1
   同  2002       23,0    17, 3(2000年の実績)
                        ~19, 9(05年の推計)の中間

  米国 95年         18,4%   12,8
となっています。
 96年といえば、保守派のビルド政権から、94年9月に政権を 奪回して2年目ということになります。その後はあなたの主張 に反して、社会保障の給付費は1人あたりでみると、95年当時 の日本を100として、スエーデンは202、2000年の日本を 100として、スエーデンは260となっています。

 つまり、社民党が政権を奪回して以降は1人あたりの社会保 障給付費は再び伸びているということです。
 (この間スエーデンは高齢化はストップし、わずかに若返り があったにもかかわらず伸びています。高齢化率90年17,8 ~00年17,3))
 以上の国民所得比の国際比較はすなわち、所得の再分配率の 比較でもあるわけですが、さらに、そうした社会保障給付費の 財源の実際の内訳をみてみると、
 前回のお返事で示した表を再度、見直してください。
 データは2000年のものです。
 これらのデータを労働者本人負担分、資本家からの再分配分 、その他(消費税等)に分けて比較します。
 日本国勢図絵より
   日本 02年     事業主(資本側)負担   32 ,2%
                労働者本人負担      31,1%
                税から            30,3%
                そのほか           6,4%

   スエーデン 00年  事業主(資本側)     39 ,7%
              労働者本人負担      9 ,4%
              その他の税から        38,0%
              消費税から           8,6%
               そのほか           4,3%

   英国 00年    事業主負担         30 ,2%
              労働者負担分       2 1,4%
              その他の税から      3 6,7%
              消費税から          10,3%
              そのほか            1,3%

   独 00年      事業主負担        36 ,9%
              労働者負担        2 8,2%
              その他の税から      2 2,7%
              消費税から           9,8%
              そのほか            2,4%

   仏 00年      事業主負担        45 ,9%
              労働者負担        2 0,6%
              その他の税から     26 ,8%
              消費税から          3,8%
              そのほか           2,9%

 となっています。
 従って、やはり、日本の場合は、西欧・北欧諸国に比べて、 その財源の内訳で見ても、労働者本人負担率が最も高く、単に 、国民所得比の面からも、さらにその給付費の内訳の労働者側 負担率の面からも、所得の再分配機能が格段に低いことがわか ります。
 西欧諸国とスエーデンを比べると、労働者本人負担率が最も 低い、9,4%で、事業主負担率が39,7%であることから 、労働側と資本側の負担割合は1対4であることが分ります。
  これは 日本は  1対1
       英     2対3
       独    約1対1,3
       仏    約1対2,3
       ス     1対4
ということです。
 ではこうした社会保障のシステムが実際にどのように作用し ているのかをみてみましょう。
 ジニ係数というものがあります。ご存知でしょうが。
 これも常識ですが、社会保障による所得再分配前と後の数値 があります。ここでも、社会保障とは資本家階級から、労働者 人民への所得の再分配であることを当然の前提としています。
 通常は分配後の数値を用いるようです。
   05~06年版 世界国勢図絵P474より、
  スエーデン 00年    25,0
   日本   02年     32,2
   独  00年       28,3
   米  00年       40,8

 となっています。スエーデンは国勢図絵の表では1位です。
 つまり、スエーデンが最も公平性の高い社会なのです。
 私の地元の新聞報道のよれば30代~40代の所得格差はこの15 年間に最大30%拡大して、格差が広がったと報道しています 。
・・そして、04年は31,4だったが、これはOECD加盟国 の平均を上回り、北欧や、独 仏などを上回った・・としてい ます。
 以上、各種データによる論証を一段落させ、次にアリョーハ さんの主張を見てみましょう。
 アリョーハさん曰く
・・・一方、スエーデンの所得税は日本とほぼ同じで、課税最 高限度額が所得の50%です。ですから、ブルジョアから高い 税金を取り立てているというのは実情にあっていませんし、企 業の競争力を維持するために企業に税制上の優遇策を与えてい ますので、スエーデンの社会保障の”原資”はやはり、働く人 々から、消費税と所得税で取り立てているというのが正しい見 方ではないかと私は思います。・・・・
 失礼ながら、こうした見方は一般の社会統計上の常識に反し ます。私が提出した実際のデータを見ても明らかではないです か?
 歴史的に見ても、独なら、ビスマルクのアメとムチの政策で も、社会保障(といってもごく初歩的なもの。改良政策といっ たところか)はやはり”アメ”と認識されていたのですよ?
 19世紀英国の救貧制にしても、”貧”を”救”わねばならな い人々から原資を搾り取って、救貧制度を実施したというので しょうか?
 そんなことはないでしょう。
 私が前回既に指摘しましたが、社会保障とは異なる階級間の 所得(利得)の再分配であって、もちろん、資本家階級から、 労働者人民への所得の再分配なのです。それ以外ではありえま せん。
 アリョーハさんの主張ではスエーデンにおける社会保障とは 、同一階級内(つまり、労働者階級内)の互助共済制度のよう なものということになりますね。
 これは、たびたび失礼ながら、階級的視点を見失った、ある 意味では反動的な見解です。(連合氏も帝国主義ブルジョアが 認知したものに過ぎないというような極めて反動的な主張をし ていたが)
 こうした見方だと、まさに自民党の主張とそっくり同じでは ないですか?
・・企業側の持ち出しとか、高額所得者の負担に頼らず、消費 税の福祉目的税化により、社会保障をささえようではないか。 ほら、高福祉国家といわれる北欧は25%の消費税を導入して いるではないか。あれを見本にするんだよ。・・・
という真っ赤な嘘宣伝に・・まあそれはおおよそそのとおりだ ・・と相槌を打っている立場ですよ。
 25%もの消費税を導入したところで、スエーデンの租税・ 社会保障負担の全体に占める割合は98年のデータで、13,5 %に過ぎません。
 OECD Revenue Staticitics 65~99(既述 オランダ の・・より)そして、社会保障の財源に占める割合は8,6% に過ぎないのですよ。
 所詮、そんなもので支えられる程度の問題ではないのですよ 。
 さらに、労働側と資本側の負担率は1対4なのですよ。(先進 国中で最高レベル)
 こうしたデータからも、歴史的経過からも、やはり、社会保 障とは資本家階級から、労働者人民への所得の再分配以外では ありえないのですよ。
 しかし、あなたの主張には汲むべき部分もあります。
 そうです。なにも、そんな高率の消費税など不要なのです。
 法人税もどしどし取るべきでしょう。
 高額所得者への最高限度も75%くらいに高めれば良いので す。
 この辺は私も北欧の猿真似をすべし!とは考えていません。
 階級的な視点を貫いて、資本階級からどしどし徴税すればよ いのです。
 えっ?そんな高率の税金をかけたら資本が逃避するのではっ て?
 確かに資本の逃避には何らかの対策が必要でしょう。
 しかし、それでも資本家(や頭脳)の流出がこまるのでは、 、?
 そんな心配は私はしていません。
 どんなに大金持ちでも、大資本家でも、バイリンガルで、洋 画を英語のままに聞き取ってほぼ完全に理解できる人がどのく らいいるでしょうか?北欧諸国ではそんなのは上流社会では( 普通でも英語は非常によく通じると旅行案内書にはあります) あたりまえのことなのですよ。
 頭脳の流出なども同じことです。
 そうです。彼らは遊牧民族なのですよ、地球上を遊牧する、 そういう民族性なのです。

 ”一所懸命”の我々日本人やアジア諸民族とはそこら辺が随 分違うのです。
 ちょっと余談になりましたが、他にも論点がいろいろありま すが、最後にアリョーハさんの、つぎの指摘について、
・・・つまり、現在のスエーデン経済の良好なパフォーマンス と、健全財政、高福祉というのは、景気回復過程にある世界経 済の反映であり、良好な世界経済が・・・財政の健全化・福祉 切り下げの緩慢化もしくは延期をもたらしているということで す。・・・
 もっともな主張です。部分的には賛同します。
 既述の<オランダの奇跡、スエーデンの挑戦に学ぶ>によれ ば、スエーデン政府当局の話では、およそ2%の経済成長モデ ルを基準としているということです。
 したがって、マイナス成長と言うような事態になれば、一定 の後退はありうるでしょう。
 ただ、こういうことも考えてください。
・・・では世界経済が良好であるからというなら、なぜ日本は 良好な経済をたもてないのか?なぜ、社会保障は後退につぐ後 退なのか?出生率が低すぎるから?なぜそんなに低いのか?・ ・・
・・・なぜ、世界経済が良好なのに米国は双子の赤字で苦しん でいるのか?なぜ将来への不安がつよいのか?・・・
 ここら辺に問題の鍵がありそうですよ。
 最後に一人当たりの社会保障給付費の95年と00年の日本とス エーデンの比較をドル表示ではなく日本円表示でしめしておき ます。
   日本の90年47兆2200億円 一人当たり38万2000円
    同  00年78兆1272億円  同    62万1970円
であり、10年で約1,62倍である。
 10年間の増加率を一定と仮定すると、その平方根は約、1, 27倍すなわち、5年間の伸びは1,27倍と仮定します。
 すると、95年の実額は48万5140円と推定されます。
 購買力平価での比較では、スエーデンの一人あたり給付額は95 年は日本を100として202、00年では日本を100として 、260となっています。
(既述のオラ・・より)
 これを実額で円表示すれば、
              95年          00年
    日本      48万5140円      62万197 0円
     指数         100            127
    スエーデン  97万9983円      161万7 122円
     指数         100           165
となっています。 スエーデンはこの間高齢化はストップし、 若干の若返りがみられるにも関わらず、95年から65%もの伸 びを示しています。日本は高齢化が急速に進んでいるのに27 %の伸びでスエーデンより低いのです。
 アリョーハさんの言う
 ・・・福祉切り下げの緩慢化もしくは延期をもたらしている ・・・
とはかけ離れたデータのように私には思えますが、、。
 したがって、アリョーハさんの主張にはかなりの部分は賛同 できません。でもこれは私の誤解が含まれているかもしれませ ん。(推定値が含まれていますから)
 できましたら、実際のデータをご存知でしたら、提出してく ださい。
 お願いします。