アグリッパ。
美術やデザイン、建築を志した人であれば、知らない人はい
ない名前です。
石膏デッサンでさんざん描いた像だからです。
マルクスが触れてるように、アグリッパというのは、ローマ
帝国の執政官の名で、「国家の手足が平民であるとしたら貴族
はそれの腹である」といったいった人でした。
マルクスやエンゲルスは、若干でありますが、ラファエロの
絵やトルヴァンセンの彫刻、パガニーニの音楽などについて触
れて言います。
マルクス主義と美術・芸術とはどのような関係にあるのかに
ついて、あまりくわしく論じている機会は少ないようです。
「マルクス・エンゲルス芸術論」書物では、芸術上のリアリ
ズムの立場をとっています。
しかし、リアリズムを提唱する人がすべてマルクス主義者で
はありません。
私が読んだこの件の著作には、ルカッチの『美と弁証法』、
フィッシャーの『芸術はなぜ必要か』、ベンヤミンの『複製技
術時代の芸術』などがありました。
日本美術会の美術運動は、永井潔さんと中野徹三さんらの論
争など日本のマルクス主義と美術について論じています。
そんな中、故・芝田進午氏は、共同研究の成果として『芸術
的労働の理論』という著作を残しております。
映画・音楽・演劇・デザイン・美術などの理論・体系・実証
などの研究は、貴重のものでしょう。
また、新建築家技術者集団が言及しているかもしれませんが
、私は確認しているわけではありません。
戦前の日本には、プロレタリア美術運動というマルクス主義
の影響を受けた運動がありました。
その中には、模写一辺倒のスターリンの像や毛沢東の像を掲
げた「社会主義リアリズム」や「唯物弁証法的創作方法」とい
う幼稚な国際的な運動もありました。
これらの影響は、日本でも戦争画やデモの群集などを描く幼稚
な運動として現れました。
音楽の分野では、戦後のうたごえ運動も、「社会主義リアリ
ズム」の影響の中で成立した幼稚なものでした。
一方、国際的な美術・デザイン運動としては評価の高いが、
マルクス主義の運動から追放されてしましたロシアアバンギャ
ルド=ロシア構成主義という運動もありました。
音楽の分野では、直接マルクス主義と関連がありわけではあ
りませんが、黒人解放運動とリンクしたジャズは、マルクス主
義らしい音楽でした。
また、トロツキストと悪罵されたジョン・レノンの音楽や生
き方も、マルクス主義者らしい音楽と言えるでしょう。
このように、キリスト教美術や仏教美術という概念が成立し ても、マルクス主義美術・芸術という概念が成立しないという ことが分かってきます。
最後に、みなさまへのメッセージを残します。
美術や芸術というものはけっして専門家だけのものではあり
ません。
こんにちの私たちのライフスタイルの中に深く浸透している
ものであります。
とりわけ、未来社会を提唱しているはずのマルクス主義者が
体感するライフスタイルが、後進的かつ退廃であったのでは、
マルクス主義は何の未来も見えないでしょう。